平成二十六年九月十九日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「首を絞め路面に叩きつけ殺戮、毒殺…猫大量殺戮」
を企画、取材、執筆しました。
今年4月以降、東京都大田区内の、京浜急行梅屋敷駅の商店街や民家が軒を連ねる蒲田2丁目と大森西6丁目の半径約400mの範囲内で、猫が計45匹も殺戮されるのをご存じだろうか。
猫の殺され方は、児童公園などに餌用のプラスチックカップに魚のフレークが置いてあり、そのなかに密かに有害な化学物質「エチレングリコール」などが入れてあり、それを猫が食べて口から泡を吹いて死んでいる、という手口だった。「エチレングリコールはエンジンの不凍液や一部の保冷剤などに使われる。甘みがあり、大量に体内に入ると腹痛や吐き気、腎障害を引き起こすという。無色無臭で緑などに着色して販売されている。環境省の評価書によると、猫が食べた場合、致死量は体重1キロ当たり1.6~2グラムとされる」。(8月22日付毎日新聞より)
そうした中、けさの各紙は「猫たたきつけた疑い 男逮捕 東京・大田 連続死、関与認める」(朝日新聞)、「猫の首絞めた男逮捕 愛護法違反容疑 死骸45匹、関与認める」(産経新聞)、「『ストレス』猫45匹殺す?」(毎日新聞)といった見出しの記事を報じている。
それよると、昨日18日3時20分頃、大田区蒲田の路上で自転車を押して歩いていた33歳の同区蒲田在住の会社員・久保木信也容疑者を、警察官が発見し、職務質問したところ、自転車の前かごに、ビニール袋に入った4匹の猫の死骸があったのを見つけた。久保木容疑者は、死骸のうち一匹は、同区大森西の駐車場で首を絞めて路地にたたきつけたところ間もなく死んだ、と供述し、残り三匹は農薬入りの餌を与えて殺した、と言い、自転車のかごに入れていたのは「首輪があり、飼い猫なら騒ぎになると思って死骸を回収していた」と述べているという。
久保木容疑者は、一連の大田区内の猫45匹殺戮についても関与を認め、「4月から(自転車の)不凍液やインターネットで購入した農薬を餌に混ぜた」「ストレスと、(住民が)野良猫に餌をやっていて居着いていることへの憤慨から、猫を殺した」と供述しているという。
なんとも痛ましい事件である。世の中には「猫がいるから家庭不和を回避できている」「殺伐とした人間社会のなかで猫に癒されて頑張れる」という人は多い。なにしろ月刊誌「ねこのきもち」14年9月号(ベネッセコーポレーション刊)によると、人が猫に触れると“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌量が増え、幸せな気持ちになると同時に、自律神経の副交感神経が刺激されて活性化し、心が落ち着きリラックスできるという。さらに、猫に触れることで、脳内の血液循環が活発になり、酸素を運ぶヘモグロビンの量が増え、精神が安定し、やる気がアップしたり前向きになる効果があるという。さらに猫ののどから響く「ゴロゴロ音」も人を癒す力があるのだという。そんな猫を虐殺した容疑者は罪深い。
なお、8月26日付朝日新聞夕刊によれば、殺戮事件の起きたエリアでは、野良猫が多く、猫の糞尿被害が多発し、餌をやる人に反発している人間もいたという。
環境省は10年から、「地域住民が協力して野良猫を『地域猫』として管理する活動の支援」をしており、「住民の理解が得られる場所にトイレを設け、定期的に掃除する」「不妊・去勢手術を実施する」といった助言をしており、大田区は去勢手術の助成金としてメス8,480円、オス4,240円(※手術の相場はメスが3万円前後、オスが2万円前後)を出して「地域猫」の活動を支援していたが、「これまでに区に活動の届け出は3件で、事件があった地区では届けられていなかった」という。野良猫が増える原因は、捨て猫という人間の無責任さと共に、去勢手術をしないで猫が増えるに任せる地域の無責任さもあるといえよう。野良猫が野放図に増えすぎると、殺処分で猫が大量虐殺されたり、大田区で起きたような猟奇事件がまたどこかで起きかねない。もっと地域で責任を持つ必要があるのではないか。(佐々木奎一)