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塩素~環境汚染と安全性

2005-03-26 17:53:15 | サイエンストピック
「汚水の塩素消毒」に懸念――発ガン性や生態系への悪影響 (HOTWIRED) - goo ニュース

<前略>
最近、汚水問題でとりわけ議論の的となっているのが、汚水処理の最終段階、すなわち塩素消毒だ。塩素消毒は以前のように当たり前の汚水処理方法とは言えなくなっている。
 塩素消毒は各種の病原菌を死滅させるため、汚水処理場の排水口の近辺で泳いだり釣りをしたりしても、コレラ、大腸菌感染症、レジオネラ症などの病気にかかることはない。米環境保護局(EPA)によると、塩素消毒は現在も広範囲で実施されており、塩素は全米1万6000ヵ所の汚水処理場で今なお最も広く使われている消毒剤だという。
 しかし、有害な細菌を殺す塩素の毒性は、他の生物にも影響を及ぼす。汚水処理場は規定に従い、処理した汚水を排出する前に塩素を取り除いているとEPAは述べているが、実際には100%安全というわけではない。排水には消毒副生成物(DBP)――消毒剤と水中の有機物が反応して発生する化合物――が含まれており、これらの物質には発ガン性があると考えられているのだ。
<後略>


さて・・・・。
塩素というのは細菌や裸の細胞にはとてもきついものなのです。
塩素は酸性条件で塩素気体となり、中性で次亜塩素酸、アルカリ性で次亜塩素酸イオンとなりますが、このうち次亜塩素酸は次亜塩素酸イオンの80倍以上の殺菌力があります。
次亜塩素酸は細胞壁を酸化して壊し、生体内活動酵素を酸化し、活動を停止させます。
魚が塩素に弱いのは、身体を覆っている粘膜系が次亜塩素酸によって酸化されてしまうからだといわれています。

塩素処理によって発がん性物質が発生することはかなり昔から知られていた事実でした。
しかしながら、塩素消毒という殺菌方法、汚水処理だけではなく、色々なところで広範囲に使われていることをこのニュースでは意図的に除外してるのか、それとも本当に忘れているのか。

汚水処理によって放流される水が、直接海洋に影響するのは確かでしょう。
その処理方法に塩素以外のものを使うということは大切かもしれない。
しかし、その汚水処理の前に行われてきた様々な塩素処理のことについては触れていません。

1.塩素処理というのは、水道水を衛生的に私たちのところまで供給するための方法でもある
2.塩素系殺菌料のうち、次亜塩素酸ナトリウム、高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)は「食品添加物」という地位を確立しており、そのおかげで広く工業的に使用されている
3.2の理由から、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌は、「漂白剤」などとして家庭でも気軽に行われている

ここで大量に使用された塩素で、指摘されている発がん性物質も少なからず発生しているはずなのです。
食品などの有機体と塩素が触れた場合に、必ず。
塩素で殺菌する方法は食品業界で盛んに行われており、機器の殺菌から原材料の殺菌まで幅広く使用されています。
私たちに加工食品を安全に届けるためになくてはならない方法でもあります。

このニュースを主張している人が「水や加工食品が細菌などの微生物で汚染されているのは許せないから、きちんと殺菌しておいてもらわないと困る!」と言っていたら笑えます。
例えば、「こういうところでは使わざるを得ないから、せめて汚水処理だけは違う方法にしましょう」という言い方だったらわかりますし、賛同します。

なんというか、「塩素消毒よくない!」の一方向のニュースの取り上げ方は、あんまりいただけないなと感じました。

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