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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

鞭毛モーター(細菌)とエネルギー生産システム(細胞)の関連性(2)

2005-04-04 20:33:17 | 細菌鞭毛機構と細胞の機構-共通点

前回の続きです。
前回は、
○鞭毛の運動
 ・細菌・・・イオンの流れで動く水車のような回転モーター
 ・精子・・・ATPからエネルギーをもらって動く

○回転する機構の種類
 1.イオンの流れを利用(制御はまだ不明)
 2.ATP合成酵素(次回説明)
というところで終了しました。

さて、今回のテーマ、ATP合成酵素ですが、ATP合成酵素も回転システムを持っている、というところがブログのタイトル「関連性」につながってきます。

鞭毛の構造をおさらいしておきます。
  ┌─┬─鞭毛
  │┌┴─
  ││フック部
 ─┼┼─
 ─┼┼─イオンの流れで動く回転体(モーター)
  細胞内部


下図がATP合成酵素の構造です。


  □|□ ATP合成・分解部  
 ──|──  
 ─┼|┼─イオンの流れで動く回転体(モーター)
  細胞内部

「|」は縦に並んでいますが、1つの長い棒だと思ってください。

鞭毛の回転モーターに似ていませんか?
「|」を鞭毛のフック部と置き換えていただくとわかりやすいと思います。
細胞膜の回転体(モーター)がH+によって動く時に、「|」の部分が同時に回転し、回転によって生まれたエネルギーを「□」部分がATPの合成するエネルギーに変換しているのです。
実は逆向きにH+が流れる時には、「□」部分はATPを分解していて、その分解で生じたエネルギーは、「|」を回転させて、回転モーターがATP合成時とは逆向きに動いて、H+の流れが逆向きになっていることもわかっています。
この「|」部分は1秒間に17回転し、50個のATPを合成しています。1秒間に17回転!すごい速さですね。

鞭毛の回転システムと、私たち生物においてエネルギーの架け橋であるATPの合成システムとは、こんなにも似通っていたものなのです。
細菌で運動のために使われていた回転エネルギーは、私たちの細胞中では細胞の隅々にエネルギーを届ける物質を作り出すために使われているのです。
なかなか興味深いですね。

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鞭毛モーター(細菌)とエネルギー生産システム(細胞)の関連性(1)

2005-04-03 20:32:13 | 細菌鞭毛機構と細胞の機構-共通点

今回は、久しぶりにニュースではなく、生物の仕組みの面白さについて。
長くなりそうなので2回に分けます。

鞭毛というのは、一種の細菌や精子などの運動器官です。
運動の仕組みは、ネジの足のように立体らせん型にうねっている鞭毛が、頭との接触部分でくるくると自由に回転することで生まれる推進力です。
スクリューのような、と言えばわかりやすいでしょうか。

←←←運動の方向
(細菌本体)~~~~鞭毛
      ↑  →→→鞭毛が回転することでこちら側に蹴っている状態
    この付け根の部分が自由に回転している

わかりにくい図でスミマセン。しかもずれてたりしたら申し訳ないです。
この付け根の部分と言うのは、

  ┌─┬─鞭毛
  │┌┴─
  ││フック部
 ─┼┼─
 ─┼┼─モーター部
  細胞内部

というように、鞭毛がモーター部にはまっている状態で、360度グルグルと回転しているわけです。
このモーター部分というのは、たんぱく質で出来ているのですが、イオンが細胞の外から内に移動する流れを利用して動いています。
いわばモーター部は水車のようにイオンで動かされていて、その回転が鞭毛に繋がっているわけです。
このモーター部、イオンで動かされているのは知られているのですが、その動きがどのように回転に変換されているかはまだ明らかではありません。
イオンも、H+イオン(プロトンとも言う)による移動で運動するものと、海洋にいる細菌では、Na+イオンを利用していることが知られています。
海の塩濃度が高い環境条件に巧く適応してきたことが伺えます。

さて、細菌の鞭毛運動の仕組みはイオンの流動ですが、精子の鞭毛運動はイオンの流動ではありません。
ATPのエネルギーを利用した回転運動となります。
ATPのエネルギーを利用した回転運動?なんのこっちゃ、ですね。
ATP(アデノシン三リン酸)は分解されて、ADP(アデノシン二リン酸)となるときに大きなエネルギーを放出するもので、呼吸で良く知られているミトコンドリアはこの反応系を利用して、細胞が活動するのに必要なエネルギーを産み出しています。
ミトコンドリアにはATPを合成する酵素があるわけです。
精子の鞭毛運動は、そのATPから産まれるエネルギーが動力となっています。

このADPをATPに変換する酵素(ATP合成酵素)ですが、これ自体も、実は回転モーターなのです。
次回はこのATP合成酵素について述べたいと思います。

私が混乱しそうになるので、今日のまとめをしておきます。(笑)

○鞭毛の運動
 ・細菌・・・イオンの流れで動く水車のような回転モーター
 ・精子・・・ATPからエネルギーをもらって動く

○回転する機構の種類
 1.イオンの流れを利用(制御はまだ不明)
 2.ATP合成酵素(次回説明)

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