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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

大食漢の細菌2

2006-01-24 00:00:42 | 細菌は疎水性?
京都大学ニュースリリース「◆細菌の“口”の移植によるダイオキシン分解「スーパー細菌」の創成(研究成果の概要)」

先日お伝えした、大食漢のShingomonassp.スフィンゴモナスさんの詳細が京都大学のニュースリリースとして出ていました。
電子顕微鏡写真も載っていますが、これは傍目から見ると孔あいて死んでるみたいに見えます。
以前の記事では推測でしたが、導入したのもスフィンゴさんでした。

それにしてもスフィンゴモナス一族が環境ホルモンの分解能力が高い背景には、「その細菌表面が高疎水性(水となじみにくい性質)であるからだ」というのは知らなかったです。
なるほど納得。
疎水性ということは、疎水性物質とくっつきやすいです。くっついてきたものを栄養分として分解する(これを専門用語で「資化する」といいます)ことが出来れば、生き延びることもたやすくなります。

私が扱ってたスフィンゴさんは栄養リッチな培地の上だと、橙黄色のダレダレドロドロな蓋をして逆さに培養すると、翌日は蓋側にタラタラ流れちゃってるような、非常に流動性が高すぎて扱いにくい、しかしバイオレメディエーションに働いてもらうには大変優秀な方でした。


バイオフィルム

2005-08-01 20:36:04 | 細菌は疎水性?
波がありすぎですよね、更新頻度。困ったなぁ。
自分で困った言ってる暇あるなら、ちゃんと書けよ!って感じですよね。

タイトルの「バイオフィルム」ですが、本当なら緑膿菌のバイオフィルム形成時のクオラムセンシングについて書かなければいけないところ。
しかし、図を書くのがどーも面倒でですね。
すいません。
もっと優しい、バイオフィルムとは?というテーマでとりあえず。

バイオフィルムというのは、細菌が自ら出すネバネバした物質と、その中で一つの社会を作り出している菌達のことを総称して言います。

バイオフィルムの形成の始まりは、一つの菌が、水があるところでその容器の壁などに付くところから始まります。
水があるところで、更にその水が栄養が少ない水道水のようなものだったりすると、菌は壁にくっつきやすい細胞壁を作り出します。
くっつきやすい細胞壁というのは、具体的に言うと疎水性(水を弾く性質)です。
水を弾くから、物にくっつきやすくなるというべきか。

その戦略、実は理にかなっているのです。
栄養物質は総じて流れの緩やかなところに集まりやすい。
流れの緩やかなところ=壁に接しているところなのです。
壁にくっついていれば、栄養分は来てくれる確立が高いわけですね。

で。

結局壁には菌が集まって増えてきます。
そうすると菌達は、周りに菌が集まってきた事を、お互いに出している小さな分泌物質で知ることになります。
その小さな分泌物質の密度が高くなる=菌数が増えると、バイオフィルムを形成する多糖類(粘性の寒天みたいなもの)を分泌するスイッチが入ることになります。
(簡単なクオラムセンシング機構の一つ)

バイオフィルムは周りの菌を取り囲むようになり、バイオフィルムは厚みをもつようになります。
多糖類の物質は網目状になっているので、栄養物質は獲得されやすくなり、更にバイオフィルムの中で菌達は元気よく増えていくことになります。
しかし、ある一定の菌量になると、バイオフィルムの中の菌は一部が飛び出します。
あまりにも住民密度が高いものだから、また新たな地を求めに行くんですかね?

この辺の旅立つ仕組みと言うのはまだ明らかではなく、研究されている様子です。


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これを書きながら、TV「世界まる見え」を見てるんですけど。
カエル食べたり、イモムシ食べたり、でかい蛇が出てきたり。
異文化ってスゴイ
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微生物の撥水(疎水)性

2005-04-08 23:10:58 | 細菌は疎水性?
こんばんは、


今日は昨日書こうと思っていたテーマ、微生物の疎水性についてです。

疎水性というのは、平たく言えば水をはじく性質のこと。
微生物の中には、結構な疎水性を示すものが存在します。
経験的に言えば、カビは疎水性であることが多いです。
ある程度の水がないと育たないくせに生意気な、と私は感じます。(笑)

疎水性であることに意味はあるのでしょうか?

ここで酵母の例を。
酵母にも疎水性のものが存在します。
清酒を醸造する時に働いている、Saccharomyces cerevisiae
非常に有名な酵母です。
お酒の醸造過程では、泡が醸造液の表面に層のように蓄積するのですが、実はこの層、この酵母が作り出しています。
細胞壁が疎水性であるために、空気を回りに含んで「浮いている」のです。
これは疎水性でなければ出来ない技。
酵母は真菌ですから、成長しやすい好気環境を自らが浮くことによって作り出していると予想されます。
(注:親水性(水になじむ性質)のSaccharomyces cerevisiaeもいます)

細菌でも疎水性が見られることがあります。
精製水などのほとんど何もない環境に置かれた時、細菌は自分の細胞壁の構造を疎水性に変化させることがあります。
どうしてでしょう?
疎水性に変化することで、どこか(容器などの物体表面)にくっつきやすくなるのです。
物体表面にくっつくと何が有利なのか?
物体表面には有機物などが付着しやすいのです。
有機物が多く集まるであろう(あるいは多く集まっているだろう)場所に移動するために性質を変化させることを進化の過程で会得してきたと予想されます。


さて、カビの話に戻って、今度は微生物の視点ではなく人間の視点から。

疎水性のカビは農業従事者や衛生管理者にとって天敵であったりします。
水をはじくので、一旦生え出すと普通の水では洗い流すことが出来ないからです。
そして、植物自体も葉の表面は疎水性で水をはじくのです。
これでは、水で洗い流したり出来ないし、水に溶かした殺菌剤もカビに届きません。
アルカリ性の水や殺菌剤でしたらある程度有効です。
でも、工場の機器には使えますが、植物にはアルカリ性の殺菌剤は少しばかり強すぎるかもしれません。
そこで活躍するのが、界面活性剤を含む水。
界面活性剤は疎水性のものと水とを取り持つことができます。
界面活性剤によって水や、水に溶けた殺菌剤がカビと接触するようになります。
というわけで、界面活性剤にはそういう意味が。
殺菌剤の中には、有効成分が界面活性剤でなくなってしまう場合があるので、個人で混合して使う場合には注意が必要です。

食器用洗剤などに界面活性剤が含まれている時、容器に張り付いて水では洗い落とせない細菌をはがしやすくする作用もあるのです。

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