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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

ダイオキシンを細菌が分解

2005-03-27 12:55:01 | バイオレメディエーション



ダイオキシン汚染、複数微生物で浄化 三井造船開発 (朝日新聞) - goo ニュース

三井造船は、ダイオキシン類の汚染土壌を浄化する新システムを開発したと発表した。性質の違う複数の微生物を組み合わせることで、効率的で低コストのダイオキシン類分解が可能になったという。2~3年後の実用化を目指す。
 専用の処理容器の中に、ダイオキシン類から塩素を分離する微生物と低塩素化した後に分解する微生物を混ぜ、そこに汚染土壌を入れて無害処理する。実験では、土壌100キロの汚染度を70日で半分以下に下げた。比較的広範囲で低濃度の汚染土壌を数カ月~半年で処理するのに向いているという。
 単独の微生物を用いる従来の方法では分解できるダイオキシン類が限られたが、新システムでは「土壌中のすべてのダイオキシン類を無害化できる」としている。炉などによる加熱方式に比べてエネルギー消費量が少なく、1立方メートルあたり5万円以下と半分程度のコストになると試算している。
※三井造船のリリース記事はこちら

昨日の塩素処理が駄目だよ的な記事に関連して、今日はこんな記事を発見。
ダイオキシンと言うのは、まぁ言ってみればポリ塩化ジベンゾダイオキシンという色々な塩素化合物の総称なわけです。
発がん性という意味ではトリハロメタンと同じく毒性のある塩素化合物。

今回の三井造船さんの開発は、土壌中のダイオキシンを細菌が分解するシステム、土壌のバイオレメディエーションです。
これまで研究段階では様々なバイオレメディエーションが開発されてきていますが、もう少しで物になりそうというところで踏みとどまっているものが多い中、三井造船さんの頑張りはすごいですね。
10年ほど前から盛んになってきたバイオレメディエーション、ようやく広く世の中に普及する時が来ています。
これまで環境を汚してきた人間。
人間の力で環境を元に戻していく責任があります。
日本はもう少しこういう点を考えて、研究開発費の賛助、人材の確保・育成をしていくべきではないかな、と思います。
今のままでは研究開発は遅々としてしまいます。

日本はかつて工業大国として発展し、そのつけとして大気汚染、土壌汚染、海洋汚染、生態系の悪化を引き起こしてきました。
元に戻すための責任を背負うと言う意識が、日本に浸透してないのでは?と疑問です。

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黄金を産み出す生き物たち

2005-02-12 12:47:52 | バイオレメディエーション

結構昔の記事で申し訳ないですが、
植物から黄金をとる現代の錬金術 HotWired-2000年5月18日
錬金術を操る微生物 HotWired-2001年8月21日
二つとも黄金を産み出す生物として扱われている記事です。

 「植物~」のほうは、いわゆるファイトレメディエーション技術。植物を利用して環境を浄化する技術です。
 実際には、土壌中の金属を植物が取り込みやすい状態にして植物が成長する時に取り込んでもらい、その植物を刈り取って回収したり焼いたりすることで土壌を浄化します。
 また、そのような作業で金属を取り出す方法をファイトマイニングと呼んでいます。
 金の溶解性を高めることで植物に取り込まれるようになったという記事です。

 「~微生物」のほうは、いわゆるバイオレメディエーション技術。微生物を利用して環境を浄化する技術です。
 ここで使っている細菌は「極限環境微生物」と呼ばれているもの。極限環境微生物で有名なものとしては高温条件でも増殖が出来る硫黄酸化細菌がありますが、この細菌の発見から、高熱でもDNAを複製する酵素(ポリメラーゼ)が取り出され、そのおかげでPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)という遺伝子実験には欠かせない技術が確立されました。
 硫黄酸化細菌などの細菌は「独立栄養細菌」として分類されていて、有機物などからエネルギー源・炭素源を得る「従属栄養細菌」とは違い、そのエネルギー源を無機化合物の酸化エネルギーから得、炭素源を空気中の炭酸ガスから得る細菌です。
 今回金の酸化エネルギーを利用している細菌として紹介されたのはTrichlorobacter thiogenes
 (Abstractを探してみたので興味のある方はこちら

 さて、このように商業的に利用されそうな微生物資源は誰のものか、という記事。
バイオ企業に商業利用される『極限環境微生物』は誰のもの? HotWired-2004年6月25日
 その微生物がいた土地に住んでいる人のものなのでしょうか?
 それとも捜し当てた人のものなのでしょうか?

 学問として捕らえてみたらどうなのかなぁ。科学技術の進歩。
 今まで知られていなかった生物やその生物の仕組みが明らかにされていくという知見。それは「もの」として扱われるものではなく。知りたいと思う人には公平に与えられるべき情報。

 人間てのはどんなものにも所有欲が高いんだなーと思う瞬間。
 そうなると、植物を利用して金を集めた時の金は、その土地の人のものになるのでしょうか。
 色々な苦心の末、ようやく金が取り出せたら、「その金はうちの国の土にあったものだからうちの国の金だ」
 …納得行かないのは私だけ?


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石油を食べる細菌

2004-12-21 10:26:38 | バイオレメディエーション

石油を食べる細菌を利用して、海に流れた石油を浄化する技術が紹介されていました。
油流出事故汚染をバクテリアで浄化
(Hot Wired-2004.12.14)

細菌などの生物を利用して環境を浄化することを「バイオレメディエーション」と言いますが、5~6年前にブームして、その後は研究を続けられるところは続けているという技術です。
ちなみに、植物で環境を浄化する技術は「ファイトレメディエーション」です。
それにしても石油があれば増える細菌、全く凄いことをやってくれるものですね。

記事では、微生物が他の場所に移行する危惧を回避するための研究や、最適条件を模索する研究が行われていることが書かれているし、微生物が大量に増えた場合に海洋系の環境が逆に悪化してしまう危惧があることなどが書かれています。
この技術で問題になる点は、海洋という開放的な自然界に細菌をまく、という点です。
実際にシミュレーションをパソコン上で行った結果は、昔に比べたら格段にレベルが上がっているのでしょうが、人間の手がかかった生物を人間の手で意図的に増やしたり添加したりするのは、予想し得ない問題を生む可能性が大きいです。
私の前の職場では環境ホルモンだけあれば増える細菌がいましたが、培養を何代も重ねるとともに更にバージョンアップしていったので、細菌の進化の早さにかなり恐怖を感じました。そんな変異が自然界でおきてしまったらどうするのかと不安になります。

12月10日に紹介した「細菌が燃料を作り出す」という技術については、それを行う場所を閉鎖系にしてしまえば問題のない技術です。こういう技術研究は安心して応援できますが、今回の記事については、ぜひとも慎重に進めて欲しいものだなと思います。

かつての遺伝子組み替え技術のような、半開放系で遺伝子組み替え作物を栽培したら周囲にも変異が現れたというような先走り試験は避けて欲しいものです…。


細菌で車を走らせる研究が。

2004-12-10 20:50:19 | バイオレメディエーション


細菌で車を走らせる燃料を作るという研究があるらしいです。

微生物に燃料を作らせる――研究進むエネルギーのバイオ生産
(Hot Wired Japan/2004.10.4)

細菌が糖などの分解物を分解したときに出る水素を燃料にしてしまう研究。
分解できるものなら何でも利用できるらしいので、燃料がなくなったときには牛乳なんかを細菌君たちにプレゼントすればいいわけですね。きっと喜んで水素出してくれます。
すごくクリーン&エコロジー。

もう一つは、それよりも更に前になってしまうけど、
細菌が分解するときに作り出す電子を利用して、燃料電気にしてしまう研究。

発電と汚水浄化を同時に行なうバイオ燃料電池
(Hot Wired Japan/2004.10.4)

ここでは汚水を利用して、発電とともに汚水も浄化する方法が研究されてます。
データ的には実用化にはまだまだかかりそうな感じだけど、
汚水処理場が発電施設になる日がくるかもしれません。
そしたら原子力発電所なんて危なっかしいものも必要なくなりますね。


この研究の流れは、とてもいいと思うのです。
この世の中に途方も無いほどの数がある細菌。
それを何とか利用して役立てる。
今まで発見されていない菌の中にはすごい能力を持った菌が潜んでいるかも。
それか、すごい能力の菌に進化するかも。
単純だからこそ変異をしやすいというのはウィルスが典型ですけど、
細菌には良い面でも悪い面でも、可能性をたくさん秘めたものなんです。

こわーい。(笑)