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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

細菌たちの会話2 ~DNAがポイントの細菌~

2005-06-14 21:00:35 | 細菌たちの会話
わかりにくいところがあればコメントください。私も頭がこんがらがってくるような話なので巧く説明できる自信がありません。


細菌たちの会話、クオラムセンシング(QS)について本編第1回目です。
今日は会話のポイントがDNAである細菌に焦点をあててみます。

細菌が周囲の菌の存在を知り、その存在の量比が新たな活動や抑制を生みだす仕組みがQSです。
お互いの存在を知るツールは細菌の種類によって様々であり、その生命活動も様々です。
中でも、会話が重なった結果、最終的にDNAを受け取る能力が上がったり、受け取ったDNAそのものが更に内部で活動を生みだしたりする細菌を紹介します。

■肺炎双球菌                                  
肺炎双球菌というのは高校の生物でも出てくる有名な細菌で、形質転換、つまり、外部のDNAを取り込んで、自分が持っているDNAにすることができる細菌です。
この外部のDNAを取り込む性質がQSによって調節されています。

①肺炎双球菌の comC というDNA領域から、 ComC というペプチド(アミノ酸のつながったもの)が翻訳(つまりDNA情報がタンパク質に変換)されます。

ComC は少し消化され、更に小さなペプチドである CSP になります。

CSP は細菌の外へ出て、他の細菌の中に入り込みます。
 この CSP が肺炎双球菌の会話の言語ツールです。


==== comC ======== 形質転換遺伝子領域 ========= comX ==== 肺炎双球菌のDNA(位置は適当です)
   ↓
   ↓①翻訳
   ↓
 ComC(ペプチド) 
   ↓
   ↓②消化
   ↓
 CSP(小ペプチド)           細胞内
===↓=========================
   ↓③分泌                 細胞外
       CSP   
                          CSP   
 CSP           CSP   
            CSP           CSP   



CSP が他の細菌に認識されると、他の細菌は「あ、周りに仲間がいるんだなー」と(人間的に言えば)認識することになります。
 ここでポイントなのは、菌の数が増えれば、細胞外は総体的に CSP の濃度が高くなってくる点です。密度が高くなると言うとわかりやすいでしょうか。
 1つの菌だけポツンとあって、CSPを分泌していたって、そのCSPは他の菌に接触する機会は少ないわけです。

周囲に菌がたくさんいる
   ||イコール
CSP がたくさん存在するようになる
   ||イコール
CSP が菌に認識される頻度も上がる

というわけです
⑤この CSP は、 comX というDNA情報の転写を活性化する働きがあります。

⑥活性化されて出来た ComX は、 形質転換遺伝子領域 の転写を開始させる働きを持っています。
 (専門的に言えば、 ComX はRNAポリメラーゼと結合、形質転換遺伝子領域の開始部分を決定する役割。このように開始地点を決定する働きを持つものをシグマ因子といいます)


          ⑥形質転換開始信号
          ←←←←←←←←←←←←← ComX
         ↓              ↑
         ↓              ↑⑤転写
==== comC ======== 形質転換遺伝子領域 ========= comX ==== DNA
                        ↑
                        ↑④活性化
                       CSP 
                        ↑     細胞内
========================↑=========
                        ↑  細胞外
       CSP   
                          CSP   
 CSP           CSP   
            CSP           CSP   


従って、見た目には、「菌数が多いと形質転換の形質が見受けられる」ということになります。
その実際は、このような機構となっていたわけですね。

長くなりました・・・・・・・・疲れました。
何が疲れるって、ブログでこういう図式を色つきで書くのは面倒・・・・。
何を隠そうこの図を完成するまでに3日間かかってしまいました。
こんな調子で続きが書けるかなぁ・・・。(涙)

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細菌達の会話1 ~はじめに~

2005-06-10 22:33:38 | 細菌たちの会話

最近ちょっと専門的な記事がなかったので、そろそろ頑張ってみようと思います。
自分の勉強ためにやっているので、気合が入っていないと書けなかったりするんです。
あと興味の持てる題材とか、仕事の内容に関係のないものとか(守られていません(爆))。
このところ気合が入っていなかったので、ようやっと重い腰を少しづつあげていこうと思います。


細菌は、自分と、自分と同じ種類の菌が周りにどれだけいるか知ることが出来ます。
彼らは仲間内でコミュニケーションをとっているというわけです。
コミュニケーションを取っていて大分増えてきたなーと思うと、ドカンと一発毒素を生産しだしたりします。
コミュニケーションを取ろうとしてない仲間を共食いしちゃったりします。
なかなか過激な細菌達ですね。

このように、コミュニケーションの結果現れる機構を「クオラムセンシングQuorum-Sensing(QS)」と呼びます。
この言葉は臨床微生物学としては有名かもしれません。
もともと、ある一定の数になったときに現れるシステムの事をそう呼んでいました。

クオラムセンシングは、言い換えれば密度依存性の調節機構です。
この調節機構は、毒素を生産する時期を調節し、病原性を発揮する時期を調節し、胞子を形成する時期を調節したりしています。

密度はどうやってわかるのでしょうか。
細菌達は、それぞれに特異的(1細菌だけにしか通じない)な分子を出し、そしてそれを受け取る頻度によって、様々な機構を調節しています。
それは植物や動物の細胞でおきている、ホルモンの分泌や受容、外敵の進入を知らせる情報伝達物質の分泌と受容といったものと非常に似通ったものです。

次回からもう少し突っ込んで、このクオラムセンシングについて書いて行きたいと思います。


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