静内の街に戻り、国道235号を襟裳岬へ向かいました。
この時は、青い空に浮かぶ白い雲が今日の晴れを約束しているように思えました。
街外れで、静内川を渡りました。
車の旅ではめったに意識しない、新たな地平へと「川を渡る思い」が旅の記憶の中に積み重なります。
なにも無い国道に白線が伸びて、太陽の光が示す角度が日時計のように見えました。
いつもは意識しない太陽の動きを感じながら、ゆったり長閑な自転車旅を続けます。
ドライブではない、散歩でもない、自転車旅特有の時の移ろいの中で、絵のような空と海、風と雲のハーモニーを五感に刻み、全てのことから解放された、贅沢な感慨に包まれていました。
海岸線をなぞる道の遥か先に、風の岬が潮騒の中に揺れています。
光りを遮る雲の下で微睡む岬はあまりにも遠く、自転車をこぎ進める行為が、その場所に辿り着くこととは無縁のように思えました。
海に突き出た岩礁の周囲は、昆布の森のようです。
磯に接する海は、海底に広がる黒い森を映して蒼く、波の動きも嫋やかです。
玉石が光る浜には、昆布干し作業に勤しむ人達の姿があります。
振り返れば、数時間前に居たはずの大地が、雲の下に佇んでいました。
私は本当にあの場所から来たのでしょうか?
不思議な感覚を伴いながら、潮風に吹かれながら、自転車の旅を続けました。
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