幸運なことに、グラスゴー植物園の裏手に路上駐車が可能な場所を見つけたので、安心して車を停めて、三脚を肩に、ザックを担いで植物園へと向かいました。
入場は無料です。
煉瓦作りの正門が北大植物園を思い出させます。
雨が降っていて、光量不足なので、フィルムカメラの花の撮影は期待できません。
早々に温室へ入りました。
イギリスに来てまで、熱帯植物の写真を撮っても、あまり意味がないので、ザックリと見て帰ろうと考えました。
結構大きな温室です。
食虫植物やベゴニアなどを集めた部屋があります。
各々の部屋に展示された植物は、特に珍しいものではなく、私の目を引くようなものはなかったのですが、
スコットランドの荒野を見てきた目に、この温室の植物の多様性は、とてつもなく刺激的でした。
イギリス人がこれ程までに、各都市に植物園を設け、世界中から多種多様な植物を収集した思いを、実感を伴って理解することができたのです。
私は水と空の青一色に彩られた海や、雪景色などの白一色の風景に魅力を感じますので、色相のないヒースやムーアの景色を大いに楽しむことができました。
しかし、荒涼たるスコットランドの曠野を走り続けたその後で、こうして豊穣な熱帯の植物の前に立つと、曠野に住む人々にとって、このような多彩な植物達がどれ程魅力的に見えるかを、理屈ではなくて、感覚として理解することができたのです。
田を耕して稲を育てる民が水墨画を描き、草原に羊を追う民が色彩豊かな油絵を描くことは・・・ などと考えたくなります。
いずれにしても、山河や気候などの生活環境が、人々の考え方や嗜好に大きく影響を及ぼすことに間違いはなさそうです。
更に、温室に掲示してあったパネルに、
この絵は何を描いた絵でしょうか?という問いかけがありました。
隣のパネルには、
「あなたはこの絵の主題が猿だと思いますか?
植物はどうです? この絵から植物をなくせば砂漠となり、動物も住めなくなります。
動物には植物が必要で、この絵から植物を取り去ることはできません。」
と解説されていました。
更には、作物の品種改良の解説、等等
幾つものパネルが掲示されていました。
イギリス人が大航海時代から、何を考えて、世界中から植物を集めてきたのかを理路整然と理解することができました。
温室に展示されていた熱帯植物は、今では日本の植物園の温室でも普通に見られる類のものです。
しかし、植物を収集、育成することは、「好きだから」だけで、やっている訳ではないことも十分に理解することができました。
グラスゴー植物園で私は、イギリス人の植物好きに共感を覚え、世界中に出て行って、植物を集めてきたイギリス人の哲学を見せてもらうことができました。
そもそも、寛ぎや、植物鑑賞の機能だけではない植物園(Botanical garden)の概念はイギリスが発祥ではなかったでしょうか。
グラスゴー植物園も、私にとって本当に収穫の多い訪問となりました。
はるばるやって来た甲斐がありました。
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