ところで、中国人にとって中秋とは、
普段は遠方に住む家族が一同に会し、
ご馳走を食べる行事なのだそうです。
(日本だとお盆や正月のような?)
そして月を愛でるという。
・・・風流ねー。
ということで、
我々が行った中秋前は
皆さん、ご馳走の用意に余念のない時期でした。
街に住む人は市場に出かけ、
草原に住む人は家畜を絞めて
ご馳走を用意する。
私が目撃したのは、
そういう場面だったのだと思います。
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フフホトで、私と友人は、
「モンゴルの遊牧民の生活を体験してみようツアー」
的なものに申し込みました。
今、そういうツアーを検索してみると、
オシャレでラグジュアリーで
キラキラしたパオの写真が出てくるのですが、
我々の行ったツアーは、
そういう「パオ・リゾート・ゴージャス進化形」など
想像もできないような、
昔ながらの非常に素朴なパオを起点とする
食事+乗馬がセットになったツアーでした。
ツアー外車のバスで、
フフホト市内から草原へと向かいます。
草原…というか、基本、荒れ地に
草がちょろんと生えているって雰囲気だったような。
ただ茫漠と見渡す限り
荒れ地が広がっているような場所でしたが、
一応、ぽつりぽつりと人家があり、
「命綱」的に一本の電線が
道沿いにつながっていました。
そういう電柱の一つに、
一人のおじさんが、
羊をひっかけて解体していたんです。
辺りには、何もありません。
家からも、少し離れていたんじゃないかな。
ビュービュー風の吹く荒野で、
ただ、バケツと、大きなナイフだけを持って
一人黙々と作業をしているおじさん。
なんというか・・・人間の営みの原点、
といった光景でした。
そうだよね。
肉は肉屋で買う物なんかじゃない。
遊牧民なんだから、皆が寄り合って使うような
解体工場があるわけでもない。
自分で、その辺で、捌くよね。
あれが、中秋のご馳走になるんだな。
風、随分きついけど、
肉が砂利だらけになったりしないかな…
と思いながら見送ったのでした。
その後、到着したパオでは、
羊の肉が用意されていました。
…まさかあの羊ではないけれど、
ああやってサバかれた羊なんだな、
と、しみじみ思いながら食べました。
・・・と、この話を夫にすると、
「ここでも、ほんの20年くらい前は
青年会のヤツらが
海辺で山羊サバいて食ってたりしたよ。
いらない部分は海に落とすんだよ。
今は禁止されたんじゃないかなぁ」
と言っていました。
びっくり。
そうか。
そういう風景って、
ここでも、そんなに遠い話ではないんだな・・・
ちなみに、
モンゴル料理は、基本、素材の味+塩でした。
さっきそこでサバかれたばかりの
ものすごく新鮮な素材を使っていますから、
ただの塩焼きでも美味しいのです。
なんですが、そればかり続くとね…
沢山用意された皿の中には
中華料理も混ざっていました。
羊を塩で焼いただけの料理を食べた後、
複雑に味付けされた中華料理を食べると、
「ああ、とても贅沢な文化の味がする…」
という感想が脳裏をよぎりました。
やっぱり美味しいよね。
中華料理。