olatissimo

この島で生まれた息子はなんと中学生。ほぼ育児日記です。

中国旅行(7) 下宿先は北京の胡同

2020-06-04 | 旅行

弟の彼女(中国人)は、地方出身で、
当時、北京で一人暮らしをしていたのですが、
その下宿先が伝統的な胡同(フートン)
の中にありました。

こういう、観光地となっている
小ぎれいな胡同ではなく、
もっと本気の、生活感しかない胡同です。

(私の写真は残っていないので、
参考のため、
こちらのサイトをリンクしておきます)

外国人には珍しかろうということで、
彼女は自分の部屋に
私たちを案内してくれました。

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その辺りの建物は
全てレンガとコンクリート
(もしかしたら漆喰??)で出来ているようでした。
街のイメージはとにかく灰色
小綺麗な胡同に見られる
窓枠や扉の彩色などはほとんど無く、
圧倒的に灰色でした。

私たちは、同じような建物が建ち並ぶ
狭い路地をくねくねと歩いた先の
一軒に案内されました。

四合院という造りだそうです。
道沿いは背の高い壁、
中央に門があり、
入ると敷地の真ん中に石畳の中庭、
正面が母屋、両脇にも細長い建物。

彼女の下宿先は庶民の家なので
それほど広くはなく、建物も粗末ですが、
基本の造りは同じです。

母屋に大家さんが住み、
両脇の細長い建物は
各々3,4個の部屋に区切られ
間貸ししていました。


さて、到着してまず目に入ったのが
門の脇(門の外。道沿い)にある
粗末な水道と小屋です。

写真が無いので説明しづらいのですが、
地面に四角く枠を作ってあるだけの
屋外水道(バケツ用みたいな)と
学校の掃除用具入れ(トイレ個室サイズ)
を想像していただければ。

彼女の説明によると、
それは共用の水場で、
洗顔や洗濯等は
全てその水道する、とのこと。

洗濯にはタライと洗濯板を使う
ということでした。
彼女は洗濯機を使ったことが無いそうです。
「洗濯機で生ぬるくかき回すだけで
汚れが落ちるなんて、信じられない。
洗濯機は信用できません
と首をふっていました(笑)

隣の掃除用具入れは、トイレ。
シャワーもあったっけ…?(記憶があやふや)
なんだか申し訳なくて、
中を覗くことはしませんでした。

・・・ここ、冬はものすごく寒いよね。
どうしているの?
と訊くと、
「冬は、水をタライに入れて部屋に持ってゆき、
お湯を足します。
洗濯は我慢してここでやります。」

そういえば、時代劇では、
洗顔や入浴は、タライにお湯を入れて
部屋に持ってきていたな。
そういう感じなのかな。

それにしても、
現代を生きる彼女が
そんな生活をしているとは。
想像もしませんでした。

日本語が上手で、
駐在の商社マンなどに
中国語を教える仕事をしている彼女は、
日本の事情にも精通していて、
話していて何の違和感もありません。
普通の友達のような感覚だったので、
私は、彼女の生活環境も
自分たちと同じようなものだと
思い込んでいたのです。

想像もしなかった、住環境の違い。

ホテルの水の出が悪くて
シャンプーが出来ないだけで
「どうしよう?!」と慌てていた
自分が恥ずかしくなりました。


先に進みます。


門を入ると、石敷の中庭があります。
四合院の説明を見ると、
「中庭は樹木で覆われている」
というようなことが書いてあったのですが、
そこには樹木はありませんでした。
(鉢が2,3、あったかな??)

中央には、古井戸がありました。
今は使われていないとのこと。
門の外に水道がひかれる前は、
この井戸が活躍していたのでしょう。


中庭の両サイドにある細長い建物は、
運動場の隅に作られている
部活毎に区切られた用具入れ
といった趣です。
どっしりとした安定感はあるのですが、
とにかく殺風景。

一棟が3、4部屋に分けられています。
小部屋のそれぞれに独立したドアがあり、
直接庭に出られるようになっています。
彼女の部屋は、その一室でした。


彼女の部屋に入ると、
広さは6畳くらいでしょうか。
床も壁も天井もコンクリート
(たぶん。もしかしたら、壁は漆喰??)、
収納も装飾もなし。
そこに、ベッドが一つと荷物が少々。
部屋の中も殺風景のひとことです。

窓は小さな明かり取りが、
高い位置に一つあるだけ。
これは、胡同の建物の特徴らしいです。
プライバシーの確保、防犯、防寒の
意味があるのかな。
(それを知らなければ
独房を想像してしまう雰囲気…)

ともあれ、
正直、とても20代女性が住む部屋には
見えませんでした。

ああ、ここ、きっと昔は使用人の部屋として
使われていたんだろうな、
と思わずにはいられない、
どうにも虐げられた雰囲気。

言葉を失った私たちの心の内を察したのか、
彼女は、
「少し不便ですが、とても安いんです。
だからいい物件ですよ。」
と笑ってくれました。

しばらくして
最初の衝撃を超えた私たちは、
気を取り直して
自国の木造の学生ボロアパート
比較し始めました。

トイレ共用、風呂無し、
歩くたびに床が抜けそうで、
建物全体が軋み、
音は筒抜け、
プライバシーのかけらもなく、
畳はダニの巣窟で、
ゴキブリと共存して、
隙間風入り放題…

親の世代には普通にあったよね。
そういう学生用ボロアパート。
いや、今でもあるところにはあるよ!

あれと比べたら、
ここは随分マシじゃない?

壁が厚くてしっかりしているだけに
プライバシーは確保されているし、
物音、気にならないし、
床は軋まないし、
冷気の入りもマシだろうし、
4畳半よりずっと広いし、
部屋で縄跳びができる天井の高さだし、
ダニもゴキブリもいなさそうだし、
なんたって、ベッドが置けるし!

・・・そう考えると、
この部屋がかなり上等に思えてくるね。
いや、良い部屋だよ!

と、友人と二人、納得したのでした。


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この建物があった胡同は、
北京オリンピックの再開発により
無くなったそうです。
せめて写真が残っていたら良かったのにな。


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