ジョルジュ・サンド George Sand

19世紀フランス女性作家 George Sandを巡って /日本ジョルジュ・サンド学会の研究活動/その他

スリズィCERISY LA SALLE国際学会・3

2006年05月08日 | G.サンド研究
小説のジャンルに関しては、サンドの最高傑作のひとつに挙げられる『コンスエロConsuelo 』を連載小説の側面から捉え、サンドの概念に従えば、作家は「風が奏でる年老いたハープ」のような楽器にすぎず、作家は「一種の通過」であり「主体の不在と自己の忘却を運命づけられている」と分析する、サンド文学における、作家を含む広義な意味での芸術家の役割論を紹介した発表が印象に残った。

一方では、童話に関する発表も比較的多く、プロップWladimir Proppの方法論やベッテルハイムBruno Bettelheimの形態精神分析学を、「集合的記憶から個人の記憶への移行」や相互補完的でもある「二つの記憶の干渉」といったサンドの童話にみられる創作技法に結びつけ、これをサンドの「エクリチュールの戦略」であると論じる発表や『祖母のコント』にみられる、童話の発話を支える母性的なミューズとしての「声」の触媒の役割に注目した発表などがあった。

社会と作家との関わりという視点から、サンドは社会の変革を目指しこれを小説化しようとしたが、ドイツの理想主義哲学者シェリングやシュレーゲルの影響を受け、フランス社会に必要な「多神教とキリスト教とを混淆した新たな神話」を構築しようとしたとする発表、文学創造に大きな影響を及ぼした産業革命の時代に書かれた『フランス一周の修行仲間』について、伝統と創作の狭間にある作家の社会的位置と創作技法を論じた考察など多彩であった。

すべての発表について紹介することはできないが、このほか、ケルト文化の伝統に詳かであった民俗学者ともいえるサンドの知られざる一面やミッシェル・レヴィMichel Levy 出版社のサンド全集の刊行に際し、『人間喜劇Comedie humaine』とは異なる合理的な全集の出版を企図したサンドを照射した発表、音楽をテーマとした「ジョルジュ・サンドと音楽の想像界」「モーツアルトとベートーベンの間で-ジョルジュ・サンドの小説における文体」、書簡、旅、呼称の問題を主題とした発表など、「エクリチュール」という中心的テーマに収斂される、実に多種多様な個別テーマが扱われていたことを付け加えておこう。

            Copyright@Sohie 2005




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