ジョルジュ・サンド George Sand

19世紀フランス女性作家 George Sandを巡って /日本ジョルジュ・サンド学会の研究活動/その他

サンド生誕二百年記念シンポの思い出 Le souvenir du colloque

2006年01月23日 | サンド生誕二百年
日仏音楽友の会のM.Franceさんには、G.Sand生誕二百年記念のcolloqueでお世話になりました。演奏の最中に折しも新潟大地震が起こり、会場の日仏会館もひどく揺れて、ホール入り口の天井近くまで届く巨大なガラス窓が大きく一面に波打っていたのを思い出します。招聘教授の先生方は初めての経験にひどく驚き、フランス人のほとんど全員が会場で総立ちとなりました。日本の北の方で起こった地震seismeなので心配ないこと、エレベーターは震度3で止まるようになっていることを説明しましたが、演奏会の後、soireeの開かれた6階まで行くのにエレベーターを使わないと言い張る方もいて、今度はこちらが驚く番でした。それだけではなく、彼らがその少し前に訪れた京都では、台風typhonに見舞われ、急遽、予定を変更して東京へと新幹線のとんぼ返りをするというアクシデントにも見舞われてしまいました。Il ne manque rien 何でもありね!と言いつつ、フランス式に事態を楽しもうという参加者の寛大な態度に救われつつ、東海直下型地震でなくてよかったと胸をなで下ろし、このときばかりは神に感謝したい気持ちでいっぱいになったことを思い出します。

ジョルジュ・サンド生誕二百年(3)Le colloque international

2006年01月08日 | サンド生誕二百年
「ジョルジュ・サンド生誕二百年フランス政府刊行資料集」より(3)

・ブラジルでは、2004年3月にジョルジュ・サンド・コンクールが創設され、優勝を勝ち取った一名の学生にフランス留学一ヶ月の賞が授与された。これはSciences-po(パリ政治学院)の四名の女子学生たちの発案によるもので、アリアンス・フランセーズ、在ブラジル・フランス大使館およびブラジル国際フランス語教授連合の協賛とエールフランスの賛助のもとに、フランス語とフランコフォニー週間祭の枠組みで実施されたコンクールである。

・アジアではとくに中国で、2004年8月に50の大学の文学研究者が集い、「フェミニズム」、「田園小説」、「サンドの散文」、「ボードレールとサンド」、「『アンディヤナ』を読む」をテーマとする国内学会が開かれた。

・日本が開催したジョルジュ・サンド国際シンポジウムについては、この仏政府刊行の『サンド生誕二百年ドキュメント集』は、大学人が主催した国際学会がダイナミックなサンド研究の推進と発展に大きく寄与したことを強調しつつ、日本の国際シンポジウムを、フランス、アメリカに次ぐ、中国より前の三番目に取り上げている。

以前から海外の国際学会に私費で参加しそのいくつかで発表してみたり(4回)、日本の二つの大きな国際学会のお手伝いをさせていただいて、これらの経験を土台にそれなりの準備をしていたつもりだったのに、いざとなると非力と時間不足がたたってうまくいかないことが多く、反省することばかり。自分にとってはとても成功したとはいえないシンポでした。大会終了後は、むしろ気分がひどく塞ぎ、鬱々とした日々を過ごしていたことを思い出します。が、このような形で公にお誉めいただくと、開催責任者としては少しは役に立ったことが心うれしく、とりわけ、貴重な時間を割いて邁進された実行副委員長を始めとするサンド研究の仲間の皆さんのご苦労を思うと、今は、よかった!という安堵感と感謝の気持ちでいっぱいです。

ジョルジュ・サンド生誕二百年(2)Le colloque international

2006年01月06日 | サンド生誕二百年
[ジョルジュ・サンド生誕二百年記念政府刊行資料集」より

・前ミッテラン大統領が創設したラ・ヴィレット科学都市にある道路が「ジョルジュ・サンド通り」と命名された。ジョルジュ・サンド通りは、「フランコフォニー広場」と呼ばれる広場に通じる道である。
・政府の男女平等監視局がパリ三区と連携し、ジェンダーの問題を取り上げる講演や展示会を開催する一方、ノアンとガルジレスでは、ECHESS(社会科学高等研究院)のF・ガスパールがアフガニスタン、イラク、パレスチナ、チャド、カンボジアの女性作家やフェミニズム運動家を集めて「世界の女性達」と題するコロックを組織し、現代女性が直面している問題とサンドのフェミニズム思想との関連について論議を交わした。
・メディアに関しては、フランス文化放送France Cultureが年間を通して十回のサンド特集番組を編成、ラジオ・クラシック、フランス・アンフォ、フランス・アンテルのほか、TV5、フランス2、フランス3などもサンドの特別番組を放映した。また、ル・モンド、ヌーベル・オプス、マガズィンヌ・リテレール、リールLireなど、新聞、文芸批評誌の紙媒体メディアもサンド特集を組んだ。(Magazine litte'aireの特集号には日本のサンド国際学会の招聘者の多くが健筆を揮っている)。

ジョルジュ・サンド生誕二百年(1)Le colloque international

2006年01月05日 | サンド生誕二百年
フランス政府は2003年3月6日、文化コミュニケーション省の通達を介し、2004年を国家の「ジョルジュ・サンド年」とすると発表した。この時以来、外務省、文化省、科学省、農林省、職業の平等とパリテ兼女性の権利省などの協力のもとにR.Prat文化担当官が中心となって、フランスのサンド年が強力に推進され、サンドに関する世界のあらゆる情報が文化コミュニケーション省に集約されることになった。政府のホームページに「サンド年」専用の巨大な凝ったURLが特設される一方、ロゴが作成され(作家の肖像の下に「平等」と記し、フランス国旗の赤、青、白のトリコロールでカラーを統一したもの)、サンドに関するあらゆる生誕記念事業にこのロゴを使用するよう関連機関に周知された。

政府の刊行資料(A4・全312頁)によれば、生誕記念に関連する催しは世界で824件を数えた。その内容は、シンポジウム・講演が227、展覧会163、演劇・コンサート348、映画34、このほか、旅行ツアー、サンドゆかりの地の文学散策、コンクールなど52、映画上映34であった。

【フランス国内】
・ツール、オルレアン、ディジョン、グルノーブル、ナント、トゥルーズ、カルカッソンヌ、ルルド、リヨン、シャルメット、サロン・ドゥ・プロヴァンスなど国内のあらゆる地方で、シンポジウム、講演会、展覧会、コンサート、演劇、記念植樹、サンドを偲ぶ集いや文学散策など様々な催しがおこなわれた。なかでもパリ市歴史図書館で開催された「ジョルジュ・サンド、その人生と作品」展は、10日間で2万人の集客数を誇った。

【海外諸国】
・海外でサンドの生誕を祝う各種の催しを実施した国の数は43カ国にのぼる。あたかもオリンピック参加国の国旗をみるような国々の名前は以下である。
ドイツ、オーストリア、アゼルバイジャン、ベルギー、ベラルーシ、ブラジル、ブルガリア、カメルーン、カナダ、中国、コンゴ(RDC)、韓国、コスタリカ、スコットランド、アラブ首長国連邦、スペイン、合衆国、ハンガリー、インド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、リトアニア、リビア、マラウイ、マリ、モロッコ、モーリシャス、ノルウエー、オランダ、ペルー、ポーランド、プエルトリコ、ポルトガル、カタール、ルーマニア、スロバキア、スウェーデン、スイス、トルコ、ヴェトナム、ザンビア。


G. サンド・ワークショップ L'Atelier de George Sand en 2005

2006年01月03日 | G.サンド研究
「日本ジョルジュ・サンド学会」は、2005年の十月、新潟大学で開催された「日本フランス語フランス文学会」秋季大会において、サンドのワークショップを開催しました。

三名のパネリストが各自のテーマに沿って、OHPを使い映像を交えた発表をおこないました。フロアからも、活発な発言や質問を頂き、充実したワークショップとなりました。以下は、司会の坂本さんが発表者のレジュメをもとにまとめてくださった内容ですが、これは、日本フランス語フランス文学会のHPにも掲載されています。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/sjllf/archives/taikai/2005a/2005a.html

 一番目の高岡さんのテーマは「サンドの創作活動:現実からフィクションへの道程」。サンド作品の創造過程の特徴の一つは、現実に取材した物事の中に問題を見つけ、それに対する解決を、美しい形、あるべきものと思われる形に作り上げて提示する、つまりイデアリザシオンにあるとし、その読み方としては、できあがった完成形としての理想を読む、あるいは単なる作者個人の夢として退けるというよりも、むしろフィクションの根底に存在するサンド特有のレアリスムと、それがずらされてイデアルに向かって行く過程に注目すべきであろうと言うのが高岡さんの主張であった。

 二番目の渡辺さんのテーマは「サンドにおける芸術」。渡辺さんはサンド小説に現れる芸術家のタイプを分類し、ある特定の分野におけるイエラルシーの問題と、異なる芸術間の移行について述べた。そのあと、サンドの創作過程におけるノアンのマリオネット劇場の重要性が指摘された。サンドは、より真実に近い人間心理に近づくため、単純化し典型化した登場人物を分類し、あたかもマリオネットの人形のようにそれを作品内に置いて自由に動かしていたのである。

 最後は西尾さんの「ジョルジュ・サンドと第三の性:横断と変容・流動と継承」。サンドはフロベールの言う「第三の性」ではないとする M.Reidの論に対し、西尾さんは初期作品群のヒロインたちの分析を通し、「第三の性」とは19世紀の男女役割分担意識では定義しえない、性差を超越し自由闊達に生きる作家像、継承されていく「自由な創造者」を象徴する言葉であり、そこにサンドの創作姿勢を見ることができるのではないかという「第三の性」肯定論を展開した。

写真はスリズィ城の内部にある書斎です。

 


明けましておめでとうございます Meilleurs voeux !

2006年01月03日 | G.サンド研究
  
MES MEILLEURS VOEUX A TOUTES ET A TOUS!

    明けましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。


年頭にあたり、サンドに関する新刊書および論文をご案内します。

*George Sand : Valentine, Re'edition de l'original d'Aline ALQIER aux Editions de l'Aurore, P.U.G.

*SAND-DELACROIX, correspondane, le rendez-vus manque', e'dition de Franc'oise ALEXANDRE, Les Editions de l'Amateur.

*Be'nita EISLER : <Les funerailles de Chopin> traduit par Me'lanie MAX, E'ditons Autrement

*Odile KLAKOVITCH : "George Sand et la censure ou la bonne dame du the'a'tre" in Bulletin de la socie'te' de l'Histoire de Paris et de l'Ille de France.

*Sand-Buloz, une rencontre savoyarde : Les cahiers de la F.A.C.I.M. no.4, E'ditions Comp'Act.

 
写真は、著名な作家、哲学者、芸術家、写真家、建築家、知識人の国際シンポジウムを開催することでよく知られる、Saint Maloにほど近いCerisy城の全景です。