砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

スッポンとの対話

2024-08-09 17:20:51 | 日記


体調を崩しておりました。
最初はエアコンのせいかな、夏風邪かなと思っていて。
身体がだるいし、微熱があるし…でも大事な会議があるから出勤しなきゃ…!と思って出勤したら、他の参加者も体調不良で早退していたし、私も念のため検査したらバリバリ陽性でした。
酷暑のなか早退するのも、それはそれでしんどかったです。



件の感染症にかかったのは1年ぶり2回目です。去年の夏になって、めちゃくちゃきつくて。
今回も最初の2日は高熱とだるさがあり、ずっと寝ていました。でも途中から元気になり、少し手の込んだ料理を作ったり念入りに掃除をしたり、Steamのセールで買っておいたバイオハザードRE2をやったりしました。

職場から「5日間は来ないでね」と言われたので、図らずも長めの連休を獲得してしまいまして。
3日目あたりから元気になったので、「この機会を逃す手はない」と思い、他の人にうつさないように気を付けつつめちゃくちゃ出かけました。


まず上野へ。
都美術館でキリコ展に行きました。それから不忍池のあたりをぐるっと回りました。キリコ展も良かったですが、同じ会場でやっていた「大地に耳をすます 気配と手触り」という展示がとても素敵でした。
なかでも、ふるさかはるかさんの作品がよかったです。木を伐って、幹を彫って版画をされている方で。

写真OKだったので会場を撮りました。
版画も素敵だったし、色使いが美しかった。10月9日までやっているようなので、興味のある方はぜひ。


あとは相模原へ。
水族館に行きました。嫁は普通に仕事だったので、2人では行かないような場所を探して。「相模原ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら」という、淡水魚ばかり展示しているニッチな水族館に行きました。こちらも楽しかったです。



相模原まで遠いし、駅周辺には夜のお店ばかりで他に何もないし、駅からバスで30分という絶望的な立地でしたが、水族館は開放的で明るく、とてもよい雰囲気でした。
体験型ワークショップとして、小さいアクアリウムを作ろう!というイベントがあったので、小さい子どもたちに交じって瓶にカラフルな砂を入れたり、黄色のリボンを結んだりしました。あとはスッポンとしばらく対話をしました。
スッポンもスッポンで大変とのこと。そうだよな、私だけ大変なわけないよな。


あとは伊香保に旅行に行きました。石段がしんどかったですが、宿がたいそう趣深く、とてもよい体験でした。
2日目には榛名湖まで行って、ロープウェーに乗ろうとしたら「運転中止」と書かれていました、悔しさのあまり地面に突っ伏しました。



あとは榛名湖にあった日帰り温泉の施設がよかったです。520円なのにこんな広いし露天もあるのかよ、と感動しました。
その施設で練習をしている吹奏楽部の学生たちもいました、合宿なのでしょうか。青春しとんねえ。


このようにして連休は過ぎていきました。
連休が過ぎ去ったあと、私の胸に去来したのは「働きたくない」という確固たる気持ちでした。
たぶん感染症の後遺症だと思います。

それにしても。
なぜ、こんなに働きたくないのでしょう。
低賃金で長時間拘束されているからでしょうか。
やりたくない業務に向き合わなければならないからでしょうか。
人間関係のあいだを揺蕩うことが疲れるからでしょうか。
自分がやっている業務に対して、「これが一体何になるんだろう」「本当に誰かの役に立っているのだろうか」という疑念が湧き上がってくるからでしょうか。
あるいは、身も心も資本主義に取り込まれてしまい、マルクスが言うように、世間から、労働から疎外(Entfremdung)されているからなのでしょうか。


美しい作品に触れているとき、夕方の不忍池を歩いているとき、スッポンと対話しているとき。
私は、私が世界との接触が失われていたように感じられました。
自分の人生とはまるで無関係に作品や景色、スッポンは存在していて。
自分がせっせと働いているなかでもそれらはたしかに存在し続けていて。
そういったことを、自分がすっかり忘れていたことに気づいたのです。
同時に「私はいったい、何をしていたんだろう」という気持ちにもなって。
せこせこ働くあまり、いろいろなことを取り落としていたのです。

とはいえ。
働きたくない思いは強いのですが、それでも働かなくてはならないわけで。
スッポンも働いているくらいですからね。

もちろん、「仕事を楽しもう!」「やりたいことを仕事に!」「好きなことで、生きていく」など宣うつもりはないです。そんなことを言っても、やっぱり仕事がしんどいときがあります。
100%ハッピーで楽しかったら、私のような仕事は生まれてこないわけですから。

それはそれとして。
私自身、世界との接触の仕方を、もう少し考えていかなきゃな、と思うわけです。
何かを美しく感じたり、丁寧に掃除をしたりするだけでなく、ちゃんと仕事に対して憎しみの炎を燃やすことも、しっかりと責任を持ってぼんやりすることも、立派な接触です。

気を抜くとすぐに世界と分離していってしまうので、ちゃんと休まなくてはならないですね。
ウオーあと100日くらい休みたい。


そう、だからこうしてブログを書いているんです。
いいですか、この文章は私が世界との接触について考えるためであって、決してサボりたくて書いているわけじゃないんですよ。