ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「蝉かえる」 推理を語らない探偵

2023-03-16 | 読書日記

「蝉かえる」(櫻田智也著 2020年7月 東京創元社刊)を読みました。

ミステリです。
探偵が
自分の推理をとうとうと語る
というのがミステリの山場なのだが
この探偵は語らない。

探偵の名前はえり(魚へんに入)沢泉(せん)。
昆虫好きの青年えり沢は
惹句によれば「とぼけた切れ者」である。
えり沢は自分の推理を語るのではなく
推理にしたがって行動する

相手はそれを察して自分の行動を変える。
という流れ。

4つの短編は
どれも昆虫が絡む物語なので
タイトルも
   蝉かえる
   コマチグモ
   彼方の甲虫
   ホタル計画
   サブサハラの蝿
となっている。

「サブサハラの蝿」は
えり沢が
空港で学生時代の友人江口海(かい)に出会うところからはじまる。
江口は医師で「越境する医師たちに」に属して
アフリカで活動してきた。
江口の荷物にツェツェバエのサナギが入っていた。
(高校時代、授業中に居眠りすることを
ツェツェバエに刺されたと言っていたなぁ
ごめんなさい)
そのたった数分の出会いでえり沢は推理する。

どういう推理をしたかは明かされない。

えり沢は江口を訪ねる。
江口は閉院した自分の病院に
ひとりで住んでいた。
カビ臭い建物には
空調がはたらいて、適温に保たれていた。
江口は何をするつもりなのか……

謎解きと情感という混ざりにくいものを
違和感なく混ぜて
絶妙な味に仕上げています。

シリーズの2巻目だそうですが
(著者のデビュー2作目)
これで終わりにするのは
惜しい
と思います。

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
« 「一階革命」 一階が変われ... | トップ | 「ネット右翼になった父」 ... »

コメントを投稿