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このごろ読んだ面白い本

「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」 本屋大賞翻訳小説部門 第1位

2024-04-10 | 読書日記

「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」(ボルム著 2023年9月 集英社)が
本屋大賞 翻訳小説部門第1位になりました!

モモタロウ・ストーリーになっている。

勤めを辞めて書店を始めたヨンジュの前に
現れる人たち。
ブック・カフェとして営業するためにバリスタを募集すると
ミンジュンという青年が。
常連になったヒジュは店で読書会を開くようになり
ヨンジュの呼びかけで講演をした作家のスンウは
ヨンジュが依頼を受けて書いた原稿を見てくれるようになる。
イベントが増えて多忙になったら
サンスという読書好きの青年がバイトに立候補し
客たちに本を薦める役をしてくれるようになる……

「和音が美しく聴こえるためには
その前に不協和音がないといけない。
今生きているこの瞬間が
和音なのか、不協和音なのか……」
という今を登場人物たちは生きている。

ヨンジュは書店を開いた経緯をスンウにこう言う。
「アリストテレスの「幸福」は
最後の瞬間の幸福のために
長い人生を人質にとられているのと同じだと思いました。
だから、わたしは幸福ではなくて
「幸福感」を求めて生きようって、考えを変えたんです」

小説家のスンウは店に来ていた高校生の質問に答えて言う。
「気持ちがすっきりするのだけが良いことじゃない。
複雑なら複雑なまま
モヤモヤするならモヤモヤしたまま
その状態に耐えながら考え続けないといけないときもある」
(おやおやネガティブ・ケイパビリティではありませんか)

バリスタのミンジュンは思う。
「過去のミンジュンが現在のミンジュンを受け入れ
現在のミンジュンが過去のミンジュンを受け入れた気がした」

「互いの距離感を保てる人同士の友情とゆるやかな連帯」
を描きたいと思ったという著者
雰囲気を
「かもめ食堂」や「リトルフォレスト」のようにしたかったとも言う。

人と人の距離感がいいです。


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