ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「本売る日々」 本屋さんが主人公の時代小説

2023-04-11 | 読書日記

チューリップが咲いています。

「本売る日々」(青山文平著 2023年3月 文藝春秋社刊)を読みました。

本屋さんが主人公の
日常の謎ミステリ時代小説です。

主人公の本屋は、専門書を扱う本屋。
表紙絵にあるように主人公が本を担いで回る先は
近在の寺、手習所、名主、医師
中でも裕福な名主たちはお得意様だ。

3つの短編のうち
ファンタジー要素のある「鬼に喰われた女(ひと)」が特にいい。

ある藩が取り潰しになり、仕える先を失った武士たちは
名主や商家の書役として雇われるようになっていた。
ある名主の家でも1人の元藩士の青年を雇い入れた。
若い武士は和歌の修行を積んでいた。
名主の家のひとり娘もまた和歌を学んでいた(流派は違うが)
やがて2人は夫婦になる約束をするが
若い武士は別の藩の家老の娘に見染められて
名主の娘を捨てて家老の家に婿入りしてしまう。

名主は若い武士の裏切りを知って病が悪化し、死んでしまう。
父親を失った娘は
なぜか若い武士の住む城下に移り住んだ。
その和歌の腕を慕って来る人々によって
いつの間にか歌塾の師匠として生計を立てるようになっていった。

不思議なのは娘がいっこうに歳をとらないことだ
……

やがて若い武士の息子は青年になり
娘の和歌に惚れ込んで歌塾に弟子入りする
……

場面かわって
主人公の本屋は
ある日峠道で迷って
霧の中でひとりの若い娘に出会う
……


清潔感のある時代小説って
なかなかあるものではありません。

コメント    この記事についてブログを書く
« 「ゴリラ裁判の日」 ゴリラ... | トップ | 「地図と拳」  »

コメントを投稿