ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「ゴリラ裁判の日」 ゴリラだって原告になる

2023-04-07 | 読書日記

「ゴリラ裁判の日」(須藤古都離著 2023年3月 講談社刊)を読みました。

第64回メフィスト賞受賞作です。

ある日、4才の男の子が動物園のゴリラパークの柵を越え
転げ落ちるという事件が起こった。
雄ゴリラのオマリは近づいて子どもを引きずり
(子ゴリラに対する普通の扱い)
危険だと判断した園長は
オマリの射殺を命じた。
麻酔銃でなく実弾で。
オマリの妻であるローズは
このことに納得できず裁判をおこす。

ローズはカメルーンのジャングルで生まれたゴリラだ。
父は群のリーダーのエサウ
母ヨランダは近くのゴリラ研究所に時々遊びに行って
手話を身につけていた。
ヨランダはローズにも手話を教え、
ローズは母や研究所のチェルシーと手話で会話するようになった。

ある日群同士の抗争で父が死に
ローズは選択を迫られることになる。
別の群に加わるか
アメリカの動物園に行くか
動画を見てアメリカに憧れていたローズはアメリカに行くことを選ぶ。
ある技術者が
手話の手の動きを感知して音声に変換するグローブを作ったおかげで
ローズは音声言語を獲得する。
言語で思考し、言語でコミュニケーションを取るローズ。
動物園のゴリラの群の一員となり
リーダーのオマリの妻となったローズは
一方で人間の友達もでき
携帯電話を持って
好きな時に連絡が取り合えるようになる。

物語は裁判の場面からはじまる。
ローズはあっけなく負けてしまう。
物語の終末にもう一度裁判が行われる。
敏腕弁護士の助けを得て
ローズは勝てるのか。

というストーリーの中に織り込まれた
いくつもの要素。

死んだオマリに人権はあるのか?
ローズにに傷つく権利はあるのか?
(父エサウの死がここで生きてくる)
マイノリティ・ローズ
……

深くて面白い。
現代の井上ひさし
かな

 

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