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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

桐野夏生著「東京島」

2008-09-18 | 桐野夏生
最初に世界一周のヨットの旅に出た中年夫婦が嵐に遭遇して難破し無人島にたどり着く。やがて時を経て男30人が流れ着いた太平洋の涯の無人島に、女は清子ひとりだけ。やがて夫は病で亡くなり新しい夫を決める籤引きが。
いつまで待っても、助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か?いつか脱出できるのか?。
人間が外部との関係が遮断された場に集団で閉じ込められた場合、一体何が起こりえるだろうか?
大胆な設定で熟年女性作家らしい視点で
展開される人間の本能・食欲と性欲と感情を剥き出しにした、生にすがりつく人間たちの極限状態のサバイバル。
たった一人だけの身勝手な中年女、島の中での清子は、女という種族を自分が代表している錯覚をもつようになる。
銀行マンの夫に従順な妻を演じてきた清子の長年自分のなかにあった野性が無人島で生活を続けることで爆発したのだ。
他の男たちがしぶしぶコミュニティを作る一方で、「あたしは必ず、脱出してみせる。自分だけは生きたい、脱出したい」という強い気持ちを持ち続ける清子。
危険な状況に追い込まれれば平気で嘘をつくし、生き抜くためには権力を持っている人間に媚を売るのも平気。
まるで今の日本の問題点を凝縮したようなトウキョウ島
唯一希望は数年に一度ドラム缶を無人島に捨てに来る船に助けてもらうこと・・・(ドラム缶の中味は何?不法投棄という産廃問題もからみ)
以前読んだロビンソンクルソーや漂流記や映画の「キャストアウエイ」でもない
著者ならではの自由な発想で展開される面白い物語です。

2008年5月新潮社

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桐野夏生著「柔らかな頬 」

2008-09-04 | 桐野夏生
主婦のカスミは不倫相手の石川と別荘の納戸で抱き合いながら
「このまま二人で居られるなら子供など居なくなってもいい」とさえ思った。
4年前北海道支笏湖畔別荘から、東京から両親と遊びに来ていた5歳の保育園児
「有香」が散歩に出たまま帰らないで行方不明になった事件のあと、
母親の森脇カスミは死期が迫った元警察官の協力で娘探しを続ける。
事件以後自分の家族、不倫相手の家族、別荘の管理者等
すっかり4年間で変わってしまった自分の周り。
愛と家族を巡るミステリー小説。
2000 年 講談社刊


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桐野夏生著「 リアルワールド」

2008-09-04 | 桐野夏生
どうしたのか、駅で自分の自転車と携帯を無くして家に帰ると、高3の
山中十四子の隣家の同い年の高校生の息子が母親を殺して家出したとか、
大変な騒ぎに。
大人になりきれない高校生がこころの葛藤や屈折した思いから起した
行動が意外な展開に。
物語の後半犯人逃亡幇助や警察へのタレコミが巻き起こした現実の結果に
関わった各人が思う自責の任と現実世界に
事件の闇の真実に迫るミステリー小説です。
2003 年 集英社 刊



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桐野夏生著「ジオラマ 」

2008-08-22 | 桐野夏生
辞書によると「ジオラマ」とは展示物とその周辺環境・背景を立体的に表現する方法とある。
自分なりに普通の人生を歩んでいたはずの人達、その平凡な日々に潜む闇を
描き、日常の断片が少しずつ異常な方向にずれていく恐怖を描いた
短編集9編。・・・何かがちがう、ずれていく感覚。現実感がある恐怖のミステリー。
短いので読みやすいです。
1998年 新潮社刊  新潮文庫

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桐野夏生著「アイム ソーリー、ママ 」 

2008-06-04 | 桐野夏生
殺人・放火・泥棒・逃亡…と悪事の数々を繰り返す
ダークヒロイン・アイ子をめぐる物語。人はどこまで邪悪になれるのか。
児童福祉施設の元保育士美佐江が、自宅アパートで25歳年下の夫と共に焼死した。
事件の背景に盗み、殺人、逃亡を繰り返す女、アイ子の姿が・・・、
そして更なる事件が引き起る・・・。
中年から初老にかけての複数の女性の、一人称で語られる裏街道人生。
人生にまつわる小ずるい部分、汚い部分がこれでもかこれでもかと
描かれている。
性格破綻のヒロインに振り回されてあっけなく終わる小説ですが
・・・著者が柴田錬三郎賞受賞後書いた第1作となった作品

2004年 集英社刊
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桐野夏生著「メタボラ」

2008-01-29 | 桐野夏生
新聞朝刊連載小説
沖縄の深い森の中で何かから逃げ出して来た記憶喪失の男が主人公の物語。
そしてもう一人、全寮制の訓練施設を逃げ出して来た宮古島生まれの17歳の昭光。
二人の視点から語られるそれどれの出会いとその後の生活。
主人公が何も思い出せない無の所から物語が始まり、徐々に記憶を取り戻していく。
徐々に、過去の自分がどんな人間かが明らかになっていく。
主人公は記憶を取り戻すまでにいろいろ経験をして、
過去の自分を取り戻そうと必死に生きていく様子のサバイバル生活と
心理描写は緻密だ。
そんな中でやがて自分の記憶が甦るが、それは過去の自分への
失望でしかなかった。
なぜ、本州の人間が沖縄に流れ着いたのか・・・
過去の主人公の人生が、家庭崩壊から泥沼にはまっていく様子が
とてもリアルで今の日本なら「さもありなん」と諦めの納得と
恐怖感を感じました。
沖縄の基地問題、家庭内暴力、集団自殺、低賃金の外国人労働者、
ニート、ワーキングプア、派遣社員の現状など
現代の日本が抱える様々な問題に焦点を当て、
594ページの厚さ感じさせないグイグイ読者を引きこむ著者の力量はさすが
但し、ラストの終り方に納得できなし、作者自身が漠然とした
答えすら見出せずに終り方のシーンに希望は見出せなかった。
女性の登場人物たちの生に対する逞しさに比べ登場する男達が
精彩がない。
(物質交代・新陳代謝=メタボリズム???)メタボラの意味も最後まで不明でした。

2007年5月朝日新聞社刊 2100円
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