メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『砂漠の町とサフラン酒』 小川未明/作 架空社

2022-06-15 16:03:20 | 
「小川未明まとめ」に追加します


2005年初版

山福朱美
1963年 北九州市若松区の印刷屋に生まれる
ルポや雑誌等のイラストを生業とし
2004年に木版画の制作を開始
木版画での出版は今回が初仕事



小川未明の何とも悲しい物語
ダイナミックでカラフルな版画が
毎ページに入っていて、どれも美しい
いろんな原色を使ってとても立体的目に見える

確か小学校の時に彫刻刀セットを買ってもらって
図工の授業でレリーフとか彫った記憶があるけれども
その後一度も木を彫ったことがないのは
とてももったいない気がしてきた

サフラン酒って本当にあるのだろうか?
恨みつらみの入った自分の血を一緒に入れるってとても恐ろしい話


【内容抜粋メモ】




昔美しい女がさらわれて
遠い砂漠の小さな町に売られ
サフラン酒を作る手伝いをさせられる






子供の頃や家族、故郷を思い出しても仕方がないから忘れようとつとめる
いつしか固い果物のように黙って
人に何か聞かれても知らぬというので
この女はつんぼではなかろうかと言われる

それほど年を取らないのに病気になり
どうせ家に帰れないんだから
死んでしまったほうが幸福であろうと思うが
胸の内は恨みでいっぱいでどうにかして晴らしたいと思う

女は小指を切って赤い血をサフラン酒の瓶の中に垂らす!
酒の色は一層美しく紅く色づく





女はそれからまもなく死んでしまい
異郷の地に葬られる

その年のサフラン酒はかつてないほど良い味で
美しい紅い酒となり
それを種子(たね)として地中深くにしまわれ
やがて魔力を持つ

砂漠の中の赤い町は不思議に富む
魔女の住む町と言われる







この町の女は不思議に美しい女ばかり
その理由は世界中からさらわれてきた
種族の違う女たちの子孫だから

山から砂金、ダイヤモンド、宝石類が出ると
いろんな国から若者が目指してやってくる







赤い町で美しい女が歌を歌いながら歩き
サフラン酒を飲むとたちまち疲れが治る

土を掘り、金を貯めて
故郷に帰り、安楽に送りたいと思うが

町を出る前にサフラン酒を1杯
また1杯と飲むうちに
すっかり頭の中が空になり
持ってきただけの金を使い果たしてしまう











砂漠で酔いが覚めて
何も持たずに故郷へは帰れないと
再び山へ戻るが金がたまって山を降りると
またサフラン酒を飲むため

ついに故郷に帰ることができず
やがて歳をとり
永久に故郷を見捨てなければならない







砂漠の彼方に赤い町が毒々しい花のように咲き誇っている








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映画『いわさきちひろ ~27歳の旅立ち~』(2012年)

2022-06-15 15:19:04 | 映画
映画『いわさきちひろ ~27歳の旅立ち~』(2012年)

「田中哲司さん出演作まとめ」カテゴリー内参照

もう観た気がしていたけれどもブログにないからまだだった?

ちひろの描いた子どもの絵は古今東西の心に響くな
水彩の使い方が好き

NHKぽい女性ナレーション 『歴史秘話ヒストリア』風

【内容抜粋メモ】

“もし私が死ぬまでこうして絵本をかきつづけていけたら
 それは本当に幸せなことです”








黒柳徹子 ちひろ美術館館長:
誰が見てもカワイイ
神さまに言われて描いたと思う





中原ひとみ 知人 女優:
もうちょっと長く生きてもっと作品を描いて欲しかった


命の象徴として子どもを描いた
自由な色使い、大胆な構図

さまざまな言語に訳された絵本


●いくつもの挫折

「27歳の自画像」




絵で生きる覚悟をした時に描いた
家や仕事を失い失意の中にいた

黒柳:
絵を観るとなにも悩みがないと思っていたが
あれだけのことがあったと思うとビックリ


●旅立ちの日
雪景色の中を走る電車 美しい山だな

画家になりたいという思いで
家出同然で疎開先から汽車に乗った
バツイチ、家、職もない状態からの再出発

1946年 終戦まもない東京
こんな生々しい写真が残っているのか
アメリカ兵が撮ったのかな

「顔をおおう自画像」
キャンバスは真っ白のままだな




池袋モンパルナス芸術村
若い芸術家が募っていた
淡谷のり子などがヌードモデルをしていた

丸木俊(!)のデッサン会に出入り
ちひろのヌード画もある/驚
貧しい画家の卵もモデルをした

三輪寛子:みんな裸になれば恥ずかしくない

友人 鳥越信:
絶対に通らなきゃならない
裸のデッサンをしないと、服を着た絵も表現できない


「原爆の図」



ベルナール・ビュフェと丸木位里・俊 ほか@アートシーン

社会的テーマに関心が集まっていた時代に居場所のなさを感じていたちひろ

三輪:私もちひろもチンプンカンプンだった

「デモ」
労働者の権利を訴える
甘すぎると批判の対象となる

もっと泥臭さがないとダメではと悩んだ

さまざまな画家の模写を大量に描く
ピカソの新古典主義

全部残ってるのもスゴイな!



●決意の日まで
1918年 3姉妹の長女として大切に育てられた
建築技師の父、教師の母 当時のキャリアウーマン






雑誌『コドモノクニ』
ちひろ:初めて見た時ドキドキした

14歳 洋画家・岡田三郎助の絵画教室に通い
デッサン、油絵の基礎を学ぶ

絵画教室の仲間:
優しい先生だが厳しい目で見ていた
基礎ができてるからどんな絵も描ける

女流画家の展覧会で入選
将来を嘱望される17歳
美術学校への進学を希望するも両親が猛反対して断念

夫 松本善明:
女子美を受けるのは許されない
夢みたいな話と相手にされなかった


見合い写真
母は見合いを強くすすめる





20歳 意に添わぬ相手と結婚

大連 旧満州 新婚の夫の勤め先
前日の写真は指輪を隠している
上辺だけの結婚生活

黒柳:夫は待ってくれていたが触られるのを嫌がった

2年後 夫が自宅で首をつって自死

知人・平山知子:
結婚写真が1枚もない
アルバムから夫の写真を全部取った
封印したいものだった

遺骨とともに帰国

1941年 太平洋戦争開戦
母は戦争協力にのめりこみ
満州に若い女性を送り込む

3年後、ちひろも満州へ
日本の若者は泥の家に住み開墾の日々
奴隷のように使役される中国人を見て心身を病む

平山:経験したことのない光景で心身症を患った

部隊長・森岡正は特別に帰国させてくれた

その後、満州の女性はほとんど死に、残留された




1945年 東京大空襲
自宅が全焼 絵も灰に

ちひろ:
火の海の中、家族とはぐれて空き地に逃げ
バケツで水をかぶった
焼野原になった我が家に戻り、互いの無事を確かめた

友人・早乙女勝元さん!

長野県松本に疎開! 敗戦

日記:久しく遠ざかっていたスケッチをした

両親は公職を追放され地位、収入を奪われ
慣れない開墾の日々

日記には「南無妙法蓮華経」がたくさん書かれている

菊池邦作 反戦活動家
拷問、侵略戦争について熱く語り、衝撃を受けたちひろ

日記:
戦争が終わって
なぜ戦争が起きるのかを学べた
戦争に反対して牢に入れられた人がいると知った

反戦ポスターを描きはじめる

平山:自分だけでなく人の喜びにつながると初めて感じたのでは?

1人東京に発つ
これは長野の盆地風景か




●運命の人
1年後 『人民しんぶん』で挿絵、記事を書いて暮らす
絵が甘いと批判される

神田の下宿

苦しい時、スケッチブックを持ち町の人々を描いた
たくましく生きる子どもたちの姿に感動する

スケッチされた三姉妹:
やりたいことができる世の中にきっとなる
そういう理想の夢を聞かせてくれた
やわらかく言うので難しい話じゃなかった


子どもたちのために描きたい
新聞社を辞めて独立を決意


初めての大きな仕事
『お母さんの話 アンデルセンの童話から 紙芝居』






松本善明 7歳年下 海の特攻隊にいた
反戦、平和運動をしていた
ちひろを尊敬し、応援した

「善明を描いたスケッチ」

日記:
こんなに人を愛したことはない
年齢は問題ない
彼がいなければ絵が描けない
だからこそ私に釣り合う人だ

善明からのラブレターを哲さんが読んでる!

ちひろ30歳 善明23歳
善明の両親の猛反対にあう

黒川万千代:あの時代バツイチの女は誰も問題にしなかった

善明さんは歳をとっても元気でロマンスグレーだな/驚

神田の六畳一間で2人だけで自室で式を挙げる
1000円の大金を全部花にして部屋に飾った
葡萄酒1本、グラスが2つ 四面楚歌の中の結婚式でした





この夜2人が交わした誓約書「わが愛の記録」
互いの立場を尊重すること
絵の道を諦めず生きることを誓った

長男・猛誕生





夫は弁護士を目指して勉強中
2人の夢を叶えるため絵筆で生計を立てる覚悟する

生後間もない息子を長野の両親に預ける

日記:
会おうと思っても電車で8時間
草の道を歩いて40分
それでもお金ができ次第会いに行く
かわいい猛の顔を見に行かないわけにいかない

スケッチブックに書いてる
絵だけじゃなく文を書くのも好きだったんだな

母乳が止まらないよう近所の子に飲ませていた
いつまでも少女みたいな顔立ち
真っ直ぐ見つめる澄んだ目に並々ならぬ決意が見える

夫は翌年、司法試験に合格しようやく息子と暮らす




●飛躍のとき
ちひろの背中にもたれるタケシくんの写真
タケシを描いた絵

タケシ:
そばを食べてると「ちょっと止まってください」って言われる
モデルは気分がいい 面白い


生活のために広告の絵も描いた
「ヒゲタの冷やし中華スープ」
「伊勢丹のクリスマス」

タケシを連れて仕事の売り込みにも出た

タケシ:父は労働争議などのお金にならない仕事しかしてなかった

日記:
私は稼ぎ働き過ぎ、自分の絵をダメにした
挿絵すら自信がない
化粧のしようもないガサガサの中年女




挿絵に目を留めた出版社から声がかかる

『こどものとも』表紙、裏表紙まで1人で描く

福音館書店 編集者・松居:
素人くささがかえって良かった
親しみがもてて評判が良かった

タケシをモデルとして絵本画家として認められる






日記:
私は無意識に息子の絵を描いていた
赤ちゃん、幼児、ランドセルを背負った子
私のことを知らない人にも子どもの成長が分かってしまった

もう水彩で完成してるんだな




●ちひろの世界
「花と子ども」
このにじみ具合が素晴らしい
ほとんど鉛筆の線がなく、絵具だけで描いた感じ

余白の美
カンタンな線だけで余白部分を活かした絵


毎年描いたアンデルセン

ちひろ:
神の力ではどうにもならないヒトの不幸を
リアルに描いているのが面白い


●画家の権利を求めて
武井武雄らみな絵の権利について語った

出版社によって勝手に真ん中で切られた絵
サインも下半分が切れている

当時、挿絵画家の地位は低く、著作権は認められず
乱暴に扱われ、原画も手元に戻らないことに抗議


ちひろ:
独立した1つの大切な芸術だから
ただの文の説明であってはならない


童心社 編集者 神戸:
権利がハッキリしない時代に強く主張されていた

タケシ:
原画を返還し、権利を認めてと言って
仕事がこなくなった

こういう意思の強さは母親に似たのでは?

1枚1枚に返還のスタンプを押した
夫らと闘い続けた これは本当に運命の出会いだな

出版社に著作権を認めさせる

岩崎書店 編集者 小西:
出版界を変えた 今では当たり前になった

童美連

ちひろ美術館・東京
1万点の原画が残されている
絵本画家、イラストレーターの地位、権利を守った

「ちひろ美術館」@上井草(1997.11.8)



●絵本の可能性にいどむ

1968年 伊豆に向かう
もっと自分らしい絵を追求するのが目的の合宿

画家・田島征三:
退廃美術、ちゃんと描けないのかと言われて孤立していた

至光社 編集者 武市:
そう見えちゃうんだからそれで押す以外ない


『あめのひのおるすばん』
さまざまな技法に挑戦した1冊
素人目にはちひろらしさは変わってないけどな
子どもが朗読してるのがカワイイ






アニメーション映画監督 高畑勲:
保育園の娘が持って返ってきた
輪郭線を捨ててるのにビックリした
不安な気持ちを見事にとらえている






にじみという水墨画を発展させたもの
水を紙にたっぷり塗り→絵具を落とす
→紙を動かしたり、ドライヤーで動かして流れる偶然の世界

それでこの風合いなのか!

物語→感じる絵本というジャンルを開いた 52歳



●戦火のなかの子どもたち
ベトナム戦争に世界が注目

日記:
戦争を知っている私はその恐ろしさにぞっとします
他人事ではないのです

池田:資料を用意して渡したが辛すぎてすぐは見られないみたいだった

さとうきび畑
ざわわ~ ざわわ~
あの日 鉄の雨に打たれ 父は死んでいった
夏の日差しの中で

アトリエのラジオから歌が流れてきた

「爆撃機」
淡いモノクロ

「風のようにかけていった少年」

「焼跡の姉弟」
戦争体験者にはこうした記憶があるのか

胃の痛みで何度も入院


日記:
今しなければ、みんないなくなっちゃうのではないか
1日も早く絵を描きあげないと
私のできる唯一のやり方だから

大学で反戦運動をしていたタケシに
一緒に絵本を作らないかと声をかける

50枚の原画から19枚を厳選
1枚1枚に丁寧に言葉を書き添える


最後の1枚は母と子の絵
善明:子どもはお母さんに抱かれているから恐怖を感じていないのがわかる

タケシ:母の絵にはちひろが入っているのは間違いない



『戦火のなかの子どもたち』
社会的テーマの絵本では驚異的なロングセラー





出版直後、がんで入院

最後に描いた絵は男の子

1974年 享年55

「まだ死ねない もっと絵が描きたい」と言い遺した



日記:
もって生まれた仕事は絵を描くこと
ささやかな絵本の絵描き

やさしい絵本を見て、大きくなっても覚えていて
絶望的になった時、絵本のやさしい世界を思い出して
心を慰めてくれたら生きがい


安曇野ちひろ美術館
読み聞かせするお父さん、お母さんたち

いわさきちひろ美術館+森の童話館@黒姫(1999.8.12)

「安曇野ちひろ美術館」家族でドライブ(1997.7.19)



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