森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

日々の生物(ナマモノ) 第15回

2008年11月22日 | 日々の生物(ナマモノ)

植物編-4


◆オーキシンと除草剤とベトナム戦争の話

 オーキシンは植物を成長させるホルモンですが、過剰な濃度になると逆に成長を抑制します。これを利用して、オーキシンは除草剤として用いられています。
 代表的なのが「2,4-D」(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)と呼ばれる人工のオーキシン」です。これはイネ科の植物には効果がなく、双子葉植物の雑草に効果があるので、水田の除草に用いられます。家でコメを作っている人は聞いてみて下さい。必ずあります。
 この除草剤が大問題になったことがあります。それが1960-75年のベトナム戦争です。当時、ベトナムの森林に隠れた敵に手を焼いていたアメリカ軍は除草剤を用いて草木を枯らす作戦に出ました。この時に使われた除草剤の1つが「2,4-D」です(実際は複数の除草剤を混ぜ合わせたものが撒布されました)。
 この作戦はベトナムの人々に大きな健康被害を与えました。おまけに昔の除草剤は微量ながらダイオキシンを発生させたので、その悪影響が大問題になりました。
 その被害者の一人が結合双生児として生まれた「ベトちゃん・ドクちゃん」……本名グエン・ベトさんとグエン・ドクさんです。体がつながったまま生まれたお二人の姿は世界中に衝撃を与えましたし、皆さんも知っていると思います。私も「戦争被害」と言えば、お二人の姿を最初に思い浮かべます。
 ちなみにお二人は1988年に分離手術を受けています。ベトさんのほうは未だに寝たきりだそうです(※)が、ドクさんは昨年に結婚、先日(2/24 07)講演のために来日もされました。


◆今年(※)のサクラは北から咲く?

 毎年、サクラの開花時期の予測が出されています。今年は異常な暖冬ですので、記録的に早い時期に開花すると考えられています。その予測の中に気になる一文がありました。
「今年の桜開花前線は、場所によっては南下することも考えられます」
 サクラ前線が南下……なんか日本人にとっては真夏にクリスマスをするような違和感がありますね。ですが、これには訳があります。
 授業でもやりますが、サクラは「寒い時期→ 暖かい時期」の温度変化で花をつける中性植物です。寒い時期を経験した後で、平均気温が10度を超えると開花します。逆に言えば寒い時期がなければ花がつきません。どうも今年は暖冬過ぎて、必要な寒さを満たしていない地域があるようなのです。ですから、逆に寒い期間をしっかりと経験している北の地域のほうが暖かくなれば先に咲くこともある……ようです。
 今年は異常気象ですが、沖縄では冬に北から来た寒波が南下していくので、毎年、北からサクラが開花していくそうです(ちなみに沖縄県名護の開花の平年値は1月2日…本州では真冬です)。
 沖縄ではサクラ前線が南下するのは普通の出来事なのです。


※どちらもこのプリントを作成した当時の話です。
 尚、2007年10月6日、ベトさんは26歳の若さでお亡くなりになられました。


◆植物怪獣の作り方 第二回「オードリーⅡ」

 映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」に出てくる世界一有名な植物怪獣が「オードリーⅡ」。話の筋は「片思いの相手に告白できない気弱な青年が、部屋にあった植物に話しかけたり、生き血を飲ませたりすると何故か巨大化。恋敵とか邪魔者をバクバク食べるようになった」というもの。
 片思いの相手がオードリーさんなので、その代わりということで「オードリーⅡ」です。とりあえず、植物に話しかけると効果的、の実例のような話ですな。
 どう見てもB級ホラー映画以外の何ものでもない話ですが、これが何故世界一有名なのかと言いますと、後でミュージカルになったからです。これが何故か世界的に大ヒット。日本語版も作られました。
 ちなみに一番最近の日本公演では主人公が山本耕史、ヒロインが上原多香子、オードリーⅡ(の声)が和田アキ子という豪華メンバーでした。
 ちなみにオードリーⅡは「宇宙から来た謎の植物」だそうです。