森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

日々の生物(ナマモノ) 第12回

2008年11月19日 | 日々の生物(ナマモノ)

植物編-1


Q:「森林浴は夜にすると体に悪いというのは本当ですか?」
A:「夜、森に行くのは、あまりおすすめしません」

 森林浴とは「樹木に精神的な癒しを求める行為で、近くの公園や林を散歩する程度から登山やキャンプ、植物園見学まで幅広く森林浴に含まれる」というもの。
「森林の空気は排気ガスなどが含まれる都市部の空気より体に優しい」「樹木の香りが心を落ち着かせ、リラックス効果をもたらす」という感じで効果が宣伝されています。後、いわゆる「森の香り」であるフィトンチッドという物質が体に良いとされています。
 ただ、「リラックスできる/ できない」というのは精神的な部分が大きいので、森でリラックスできる人もいれば、日本橋のゲームセンターが一番リラックスできる人もいますから、一概には効果を述べることができません(ゲーセンよりは森林にいるほうが、体には良いとは思いますが)。
 私は薄暗い自室が一番、リラックスできるんですけどね。

 で、授業でもやりますが、植物も呼吸をします。昼は光合成をしているので、酸素の放出が多いのですが、夜は酸素を吸って二酸化炭素を放出することしかしません。ですから、夜に森に行っても森林浴の効果である「綺麗な空気」とか「豊富な酸素」は期待できないわけです。
 聞いた話では、ペルーでは「夜は室内に植物を置かない」と学校で教えているそうです。おそらく植物は夜に呼吸しかしないので酸素不足になることを心配しているのでしょうが、植物の呼吸量は動物より遥かに小さいので、実際に酸素不足になることはないでしょう。


Q:「アジサイの花は生えている土の酸性度で色が変わるというのは本当ですか?」
A:「本当です。ただ、他にも条件があります」

 アジサイの花は「アントシアニン」という色素で色づいています。憶えていますか? アントシアニン。液胞の中に含まれる代表的な植物の色素です。
 このアントシアニン、酸性度(pH)によって色が変わるという特徴があります。アントシアニン水溶液は酸性なら赤色、アルカリ性なら青色です。リトマス試験紙の代わりにも使えるので、中学の時に授業で使ったことがある人もいるかも。この色の変化によって、アジサイは様々な花色を作り出します。
 実際のアジサイでは単純に酸性度で色が変わるわけではなく、土壌の酸性度以外にも「遺伝的な要因」や「アルミニウムイオンの濃度」が関わっているとされます。ただ、生えている土の酸性度が変化して、花色が変わることも十分あると思います。

 昔読んだイギリスの推理小説で「犯人がピストルをアジサイの下に埋めたら、その鉄分が溶け出して、アジサイが赤い花をつけるようになった」という話がありました。園芸好きのイギリス人らしい話です。