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ブログ・プチパラ

未来のゴースト達のために

ブログ始めて1年未満。KY(空気読めてない)的なテーマの混淆され具合をお楽しみください。

年末にフーコーと経済誌を一緒に読むⅡ

2009年12月30日 | 労働・福祉
フーコーの本を読むのは疲れたので、気になる民主党の雇用政策・成長戦略に関し、『週間東洋経済』(2010年新春合併特大号)と『週間ダイヤモンド』(2010年新年合併特大号)とを拾い読みしてみる。

八代尚宏氏のほうにやや分があり?

『ダイヤモンド』では、雇用政策に関し、八代尚宏氏と湯浅誠氏の主張が、見開きページで左右にある。
読んでいると、どちらも言っていることが正しいように見える。

しかし、湯浅誠氏は、セーフティネットがまだ整備されていないから、仕方なく派遣労働を禁止する、という言い方をされていて、それが「緊急避難的」なものだったら、外に方法はないのか、産業界に多大な影響を及ぼすような、恒久的な法律で禁止してしまうという方法でいいのか、という気がしてくる。

八代尚宏氏は、「意味のある政策は、派遣雇用の禁止ではなく、派遣条件や待遇を改善する派遣労働者保護の強化だ」と言っている。こっちの方向で何かできそうな気がする。

でも、菅直人氏は、『東洋経済』のインタビューで、湯浅誠氏の方向で法律を変えるんだ、と言い張っている。

「介護というのは需要がありながら担い手がいないから需要が満たされないわけで、この分野は逆に言うと、雇用イコール需要になる。」と菅氏は言っているのだが、この「雇用イコール需要」という言葉が、私には意味がよくわからなかった。私は不安になった。

大丈夫なのか。

菅直人氏だけで大丈夫なのか、大丈夫ではないだろう

『ダイヤモンド』の榊原英資氏インタビューでは、現政権に「経済全体を見て方向性を打ち出せる人がいない」ことが話題になっている。

菅直人氏が「国家戦略」を立てるトップにいるというトホホさ。

榊原英資氏は「国家戦略局にマクロ経済専門のスタッフが十分にいない。エコノミストを集めて、マクロ経済をモニターすべきです。」と言っている。

菅直人氏は、竹中平蔵氏とは違うんだぞ、ということを強調したいがために、エコノミストの知恵を借りることを拒んでいるようだ。

城繁幸氏の若々しさ-『完全自爆マニュアル』

以前、『東洋経済』誌上で、雇用政策に関し、湯浅誠氏と城繁幸氏との対談があって、その対談では、濱口桂一郎氏がブログで書いておられたように、湯浅誠氏のほうがまともに見えた。
EU労働法政策雑記帳「湯浅誠氏が示す保守と中庸の感覚」

今回の『ダイヤモンド』でも、くだんの城繁幸氏は、全部ぶっこわれちまえばいいんだ! クラッシュすれば国民も目が覚める、という見事な書きっぷりだった。
今の時代に希望はゼロだ。そして「救いは、雇用政策で民主党政権が完全に行き詰まること」と城氏は言う。
「『格差拡大は構造改革のせい!』を旗印に政権奪取した政党が盛大に自爆することで、国民の目も覚めるのではないか。」と政治の盛大なクラッシュを期待する。
「君側の奸を討つ!」とか「完全自殺マニュアル!」とか、「希望は、戦争!」みたいな、いかにも辛抱が足りない日本の若者的発言である。

鳩山由紀夫は徳川慶喜なのかもしれない

『東洋経済』で舛添要一氏は、私は派遣労働者の労働状況について民主党より厳しい見方をしているかもしれない、と述べている。
舛添要一氏は、製造業派遣にも登録型派遣にも反対の立場である。
「国民の生活の安定がないと社会は成り立たない。いつクビになるかわからず、半年先もわからないようでは、子どもなど育てられない。」と言う。

『東洋経済』で堺屋太一氏は、政権交代は、彼らが自称するような明治維新ではなく、鳩山政権はこのままいくと「最後の将軍」徳川慶喜になるかもしれない、と言っている。おもしろい。

そういえば、私の兄貴も、数日前、テレビを見ながら同じようなことを言っていたのを思い出した。「鳩山って、明治維新じゃなくて、徳川慶喜なんとちゃう?」と。

安倍、福田、麻生、鳩山、-考えて見れば、最近ずーっと世襲の人が続いている。
明治維新じゃなくて、鳩山政権は徳川慶喜。
今は、徳川幕藩体制の末期。
世襲は続くよどこまでも。
官僚体制。記者クラブ。権力のあり方は、あまり変わっていない。
ムダではないと思うけど。
おそらく徳川慶喜は、頑張っていると思う。


以下、『週間ダイヤモンド』(2010年新年合併特大号)より

八代尚宏氏

…派遣労働を禁止することには反対だ。
…規制によって、企業に正社員の雇用を強要できると考えるのはナンセンスである。かつて終身雇用や年功賃金などの日本的雇用慣行が醸成され、正社員雇用が一般的だったのは、雇用規制があったためではない。過去の高い経済成長期において、熟練労働者の希少性が高く、自社で囲い込む必要性があったからだ。
…より現実的で、意味のある政策は、派遣雇用の禁止ではなく、派遣条件や待遇を改善する派遣労働者保護の強化だ。二〇〇八年以降の派遣切りの問題は、契約期間中にもかかわらず、補償もなく切られたことにある。今後は、雇用保険の適用拡大と、派遣先が契約期間中に契約を解消することへの補償を義務付けるべきだ。
…欧州では、整理解雇の場合に金銭賠償が認められている。日本でも、正社員の解雇時の金銭賠償ルールを法律で定めれば、裁判に訴える資力のない中小企業の労働者には明らかに大きなメリットとなる。

湯浅誠氏

…派遣労働の規制に賛成だ。
…雇用の流動化ということについて、私は必ずしも反対ではない。しかし、実態として派遣切りがこれだけ社会問題化し、多くの貧困を生じさせ、それを解消する手立てもない以上、製造業派遣も禁止すべきとしてか言いようがない。
…派遣労働禁止を批判する論者の主張に、「製造業では派遣が禁止されても期間工や請負にシフトするだけ」というものがある。だが、期間工は有期契約ではあるものの直接雇用なので、労働者にとっては歓迎すべきシフトだ。
…セーフティネットが厚く、失業が怖くない社会であれば、雇用の流動化も派遣もいい。

榊原英資氏インタビュー

…(記者の質問)現政権には、経済全体を見て方向性を打ち出せる人がいないのではないですか。
…それは国家戦略局の菅直人さんの仕事でしょうが、担当分野が多いですからね。自民党時代は経済財政担当大臣がいましたが、その役目が菅さんの仕事の一つに入って、重要なポストとしてまだきちんと機能していない。
…政権交代してまだ四ヶ月しかたっていないので仕方ないともいえるが、国家戦略局にマクロ経済専門のスタッフが十分にいないことも事実。エコノミストを集めて、マクロ経済をモニターすべきです。

城繁幸氏

…正社員、非正社員共に、希望のない数年間が始まる。せめてもの救いは、雇用政策で民主党政権が完全に行き詰まることくらいだ。「格差拡大は構造改革のせい!」を旗印に政権奪取した政党が盛大に自爆することで、国民の目も覚めるのではないか。

以下、『週間東洋経済』(2010年新春合併特大号)より

菅直人氏インタビュー

…(土建国家のやり方でもなく小泉・竹中路線でもない)第3の道というのは、そのどちらでもない、雇用が生産を生む、需要を生む分野を徹底的に深耕していこうという考えのことだ。
…介護というのは需要がありながら担い手がいないから需要が満たされないわけで、この分野は逆に言うと、雇用イコール需要になる。
…村長を務めた湯浅誠氏にも政府に入ってもらい、今度は政府も積極的にかかわる形で、派遣村がなくても対応できる年末対策を急いでいる。
…いつでもクビを切れるうえ、住まいも失うような派遣労働は望ましくないとして、不安定な登録型派遣、製造業派遣は原則的に禁止するという法案を連立与党できちんと成立させる。

舛添要一氏インタビュー

…民主党の政策に関して言えば、まず母子加算の復活は今でも絶対反対だ。母子家庭でも歯を食い縛って生活保護をもらわないで働いている人よりも、優遇されるのはいかがなものか。私も母子家庭で苦労をよく知っているだけにそう思う。
…労働問題で言うと、労働者派遣法の改正が論議されているが、厚労相を務めていたときから一部の専門職を除き登録型派遣や製造業派遣は基本的におかしいと思っていた。
…もちろん国際競争を行う企業側の論理もわかるが、それでも国民の生活の安定がないと社会は成り立たない。いつクビになるかわからず、半年先もわからないようでは、子どもなど育てられない。恒産なくして恒心なし。やはりこういう制度が社会の不安定さを増していると思う。民主党よりも私のほうが厳しい見方をしているかもしれない。

堺屋太一氏インタビュー

…民主党は「最後の将軍」慶喜になるおそれがあります。官僚主導型の世の中で、政権担当者が替わっただけではないかと。
…徳川幕府の末期、二つの政変がありました。一つは紀州派の14代将軍家茂が死んで、一橋派の慶喜が15代将軍になり、税制や兵制などの大改革を行ったものです。
…しかし、この改革は成功しませんでした。徳川幕藩体制の根源は、武士の身分の者だけが公職に就く身分制度です。「最後の将軍」徳川慶喜は、それが変えられなかった。ところが、明治維新は版籍奉還で武士の身分を廃止しました。

関連記事:八代尚宏氏と湯浅誠氏―『EU労働法政策雑記帳』より 2010年01月07日
(→『EU雑記帳』で当エントリへの言及があり、湯浅氏・八代氏の対比の説明を頂きました。)
関連記事:You tubeで首相から失業者対策メッセージを-湯浅誠氏の提案 2009年12月24日
(→濱口桂一郎氏の意見を参考にしながら、湯浅誠氏は「サヨク」の人か、それとも現実にふわりと着地する「無翼の人」か、ということについて考えています。)