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魅力的な写真とそこからイメージした詩をお楽しみください。

A Legendary Ace Pitcher

2012-03-26 14:39:03 | Jun Hiraoka

 

 Photo by Jun Hiraoka 】 

 

 

     たいそう使われ チビた鉛筆が 考えていた

 

 

     鉛筆は 悲しかった

 


     仲間のボールペンは インクが終わった瞬間 使いきった喜びの中引退し

     シャーペンは いつの間にか 静かにフェードアウト

     万年筆は インクが出なくなって 大切そうにしまわれ

     ランドセルは 思い出の象徴として 記憶に残り

     成績表は 歴史になりもする

 

 

     自分は 使われるだけ身を減らし

     使いきられるドラマもなく

     惜しまれることもなく

     懐かしがられる歴史もなく

     消しゴムやシャーペンのように もう一度使われる可能性もなく ポイと 捨てられる

     ノートだって 使われて終わるが 終わった後でも内容には大切な意味があり 再利用なんてことも出来たりする

 

     つぎ足しつぎ足し使われる 焼き鳥のタレだって 数十年たてば有名になったりするのに

     自分は ただ 摩耗しきって 中途半端で 消えてゆくのか

 

 

 

 

     そんなとき 鉛筆の前に 軍用機が現れた

     軍用機は 戦いに勝利した立役者として 飾られていた

     彼もまた 考えていた

 

 

     自分は 見られるために 作られたのではない

     ただひたすら 荷物を運ぶだけに 作られた飛行機だ

     どうせ使われるなら どうやっても動かなくなるまで 使われたかった

     それが 燃費が悪いと引退させられ 英雄として ただ飾られている

 

     役目が 終わったら 静かに 消え去りたかった

     エンジンも外され 二度と 飛ぶことはないのに

     まだ飛行機と呼ばれる 自分は いったい何だろう

 

 

 

     ガワだけの元飛行機

     元人殺しの軍用機らしきもの

     自分は英雄じゃなく ただの鉄のクズだ

 

 

     ただの一本のチビた鉛筆と

     ただの元機械の飛行機

     その苦悩は まるで反対方向へと 発散されてはいたが

     悲しさ 空しさは 双子のようだった

 

 

 

     そんな鉛筆と軍用機に話しかける男がいた

 

     「オレは 満足しているよ」

 

     「アナタは?」

 

     「オレは これでも 元プロ野球の選手さ

      まあ相当のファンじゃなきゃ もう覚えているヒトなんて いないだろうがね」

 

     「忘れ去られたのに アナタは満足なの?」

 

     「ああ 中継ぎのピッチャーで 毎日毎日投げ続けて すぐ肩を壊して お払い箱さ」

 

     「じゃあ 不満だらけでしょ?」

 

     「いや そんなことないさ

      確かにもっとやりかったし お金だって稼ぎたかった でも」

 

     「でも??」

 

     「楽しかったんだ たまらなく

      子供の時からあんなに野球が好きで 誰もが憧れるプロになって 大舞台でプレイできて

      毎日があんなに楽しかったのに 終わって不満なんかあるもんか

      鉛筆だって 子供がキミを使って 一生懸命に字を書いたときは 嬉しかったろ?楽しかったろ?

      軍用機だって キミが飛ぶ姿を子供が眺め 大喜びしていたときは 自慢だったし楽しかったろ?

      それでいいじゃないか

      たっぷり楽しめたんだ 一生懸命やったんだ そして思い出があるんだ 最高じゃないか」

 

     「・・・・・・・・・」

 

     「必ず誰にも 納得出来ることが あるはずさ

      よく考えれば いい思い出だって あるはずさ

      だったら 悲しいこと 辛いことを思い出さずに そっちを思い出していこうぜ」

 

 

     男は 背を向けて ゆっくり歩き出した 

     そして 昔を 思い出すように 肩をグルグル廻し 

     ゆっくり振りかぶって  1球 見えないボールを 投げた

 

 

     彼は 思い出の中の エースだった

 

 

 

 

 

 

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