ティコ・ブラーエ


パパとママの視点から
子供と建築探訪
こどものおやつから考える体にやさしいレシピ

不自由さの中に

2010-03-04 | パパ
ユニクロとの協業でも話題のジル・サンダー。




彼女はミニマリズムを追求し、装飾を排除したデザインをコンセプトにしている。内面の豊かさや美しさがストレートに身体から伝わるには、身体を包み込む衣服が主張して騒ぎ立てないように扱う必要がある。衣服の要素を極限まで抑えたミニマルな表現とはそのための手段でもあり妥協をゆるさない精神性でもある。素材やカットのディテールは、装飾の排除を補完し身体性を豊かにしていく場となる。ちょっとした妥協がすべてをだいなしにしてしまう緊張感、それはモノの品格といっていいかもしれない。




そんな彼女だが、住んでいる家はというと様式風の装飾に覆われた、ミニマルとは対照的な古い屋敷なのだ。
彼女が言うには、ミニマルというものへの意識を研ぎ澄ますために、あえてモノにあふれた生活を自身に強いているのだそうだ。それは、ミニマルを当たり前として日常化しない、日々の探求といえる。
建築家に話を転じると、自邸を建てるのを避ける人がいるようだ。理由としては、以下のことが考えられる。
1.自身の設計スタイルが変化し、自邸としての精神性が揺らぐ恐怖。
2.自身の設計思想が対話なしに実現した、いわば虚構(建築家は常にいろいろな現実の状況を調整しながら自身の思想を建築化する戦いだと安藤忠雄は言っている。)の空間が日常化する。

ジル・サンダーはまさに2の考えに近いといえる。

不自由な状況のなかから対話を通して創造は生まれる。不自由さを受け止めることによって、モノの本質は意識され、そのとき初めてモノを自由に扱う方法は習得される。
数学という公理によって構成された不自由さを引き受けることによって、世界がひろがっていくように・・・。