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★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

XXXXXXXX遊星からの物体XXXXXXXX

2020-01-21 23:00:42 | 映画
『遊星からの物体X』オリジナル予告編


『遊星からの物体X』はすばらしい映画であった。原作は一九三十年代、初の映画化は五十一年だが、この映画を子どもの頃見てショックを受けたジョン・カーペンター監督の八十二年リメイク版がすごくて、仰天するシーンが連続する。ちぎれた人間の頭部から蜘蛛のような足が生えて歩くシーンはすばらしい。この頭部蜘蛛エイリアンがちょっぴり怯えて人目を避けてこそこそと歩いて行くシーンがユーモラスであり、ホラーというものが案外ユーモアと近接していることをわたくしに教えてくれたのである。そこにあるのはシュルレアリスムだと思う。考えてみると、なんとかの金曜日みたいな映画でも、だいたい若いカップルのベットシーンとかがある。ああ、これはユーモアではなかった。いや、ユーモアかもしれない。

『遊星からの物体Xファーストコンタクト』は、カーペンター版の前日譚である。これはひたすら怪物の恐ろしさで押してゆく感じの映画であった。(以下ネタバレ)だいたいカーペンター版のシーンをもじったような感じで進んでゆくのだが、その頭部蜘蛛エイリアンは、腕に触手がたくさん生えたかたちに変わっていて、それが人の口に貼り付くという、明らかに映画「エイリアン」の影響を受けたシーンになっていた。恐ろしい場面なのだが、ちょっと怖いというよりも不快な感じがした。あと、ラスボスエイリアンみたいなのを手榴弾で吹っ飛ばす場面がカーペンター版にもあるが、こっちにもある。しかし、それは、宇宙船の中での場面なのである。ここら辺の趣向は「Xファイル」みたいなテイストである。

巨大UFOを出しちゃおしまいよ……とわたくしは思った。つい、ウルトラマンなんかに出てくる「地球人を皆殺しにしてやる」とか甲高い声で会話している人型宇宙人の場面まで想像してしまったではないか。女性や黒人の扱いが重要な映画でもあって、いまどきの気の使いようであった。――要するに、観客をシュルレアリスムで感覚変革を図ろうとするよりも、観客に気を使っている映画といった方がよいと思った。

思い出さなければならないのは、カーペンター版が当時、罵詈雑言を浴びたということである。批判を恐れるようになったのも問題なのだ。


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