★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

老眼鏡忘れた朝

2024-06-07 23:02:25 | 文学


……と……そのうちに或る突然な決心が私に襲いかかった。その決心に蹴飛ばされたように私は、素跣足のまま寝台を飛び降りた。宿直室を飛び出して、隣の室に通ずる、暗黒の廊下を突進した。
 ……するとその途中で何かしら真黒い、人間のようなものと真正面から衝突したように思うと、二つの身体がドターンと人造石の床の上にたおれた。そのままウームと気絶してしまった。
 巨大な深夜のビルディング全体が……アハ……アハ……アハ……と笑う声をハッキリと耳にしながら……。


――夢野久作「ビルディング」


朝。
大学へのバスから県庁が新興国のなにかのようにみえる。
大学に着いたら、老眼鏡わすれたことに気がつきました。