鑿壁偸光 漢字検定一級抔

since 2006.6.11(漢検1級受験日) by 白魚一寸

大纛は、「だいとう」でも「たいとう」でもいい

2008年06月25日 | 20-1(第46回)

(20.6.27 SIMO様、鼈甲様のコメントに基づき修正)


(一)11大纛に扈従して本営に赴いた

 2ちゃんの仮解答では、「だいとう」ですが、SIMO様から、「広辞苑」には、「たいとう」とあると教えて貰いました。手許の辞書で調べますと、

だいとう(6) 「四字熟語」(高牙大纛)、「旺文社漢和辞典」(S39)、「字統」(旧版)、「字通」、「全訳漢辞海」(初版)、「捷径」

たいとう(7) 「大漢和」、「大字典」(旧版)、「日国」、「漢語林」(初版)、「大辞林」、「大言海」、「広辞苑」

 略、拮抗していますので、どちらでもいいのでしょう。唯不思議なことに、「たいとう」でも「だいとう」でもどちらでもいいと書いてある辞書は一つもありませんでした。

 余談ですが、「大纛に扈従」で検索すると、蘆花「不如帰」の用例がでてきます。少しだけ引用しますと、

同十三日大纛(だいとう)に扈従して広島大本営におもむき、翌月さらに大山大将山路中将と前後して遼東に向かいぬ。 われらが次を逐うてその運命をたどり来たれる敵も、味方も、かの消魂も、この怨恨も、しばし征清戦争の大渦に巻き込まれつ。
 明治二十七年九月十六日午後五時、わが連合艦隊は戦闘準備を整えて大同江口(だいどうこうこう)を発し、西北に向かいて進みぬ。

 蘆花は、「だいとう」とルビを振っています。不如帰は、当時のベストセラーですから、百年前は、大纛は普通に使用されていたのでしょう。



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15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まさに頡頏してますね。 (SIMO)
2008-06-26 22:33:48
>不思議なことに、「たいとう」でも「だいとう」でもどちらでもいいと書いてある辞書は一つもありませんでした。

 これ、面白いですね。おそらくしっかりした根拠が共にあるということなのですね。
 他の辞書もいろいろ調べたくなりますね。

 それにしても、たいそうたくさんの辞典をお持ちで(^^;;;
 広辞苑を入れて数えると、5対7で『たいとう』の勝ちですが。
 どこかで読んだような気がしていたのは四字熟語辞典だったのですね。協会の発行する書籍にあるとなると、『だいとう』も捨てがたいですねぇ。

 標準解答には両方書いてあるということになりそうですね。
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旗色悪いかも。 (SIMO)
2008-06-26 22:45:32
 そういえば、と思い出して『合格捷径』を見てみましたら、『ダイトウ』とだけ読みが振っていました。

 協会の本では2対0でダイトウの楽勝ですね。
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Unknown (鼈甲)
2008-06-27 19:02:33
はじめまして、鼈甲という者です。

漢検を受けてきたんですが、先ほど標準解答が届きまして。
標準解答は「たいとう/だいとう」でした。
やはり、どちらでも良かったんでしょう。


(あと私事なんですが、
僕は(九)8「舐犢」の犢の"四"を"置-直"と書いてたんですが、
あとで気になって調べたら、"四"でないと駄目なようで。
漢字源では売の旧字「賣」なら"置-直"なんですが、
犢の旁は「𧶠」という別の字なんですね。)
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大逵や大旆が読めればいいのかな (白魚一寸)
2008-06-27 22:35:31
>しっかりした根拠が共にあるということなのですね。

そうかなあ。適当なのではないのかなあ。大をダイと読むかタイと読むかは、複数音読みのある漢字の中でもものすごく難しいと思っています。新刊書店で、小学生用の辞書なども色々見るのですが、この読み分けについて、説明された辞書を見たことがありません。

「漢語林」や「新字源」には現代中国音が載っており、これによると、大は、dai, tai, daと三つの音があるようです。結局中国でどう読んでいたのかがポイントのように思います。

ダイは呉音、タイは漢音ですので、仏教語はダイと読むようです。唯、大きいという意味のときは、ダイなのかタイなのか、どちらでもいいのかよくわかりません。

>それにしても、たいそうたくさんの辞典をお持ちで(^^;;;

まだありますよ。「新字源」「現代漢語例解辞典」「新明解漢和辞典」には、大纛の読みは載っていませんでした。殆ど古本なのが自慢です。

ところで、行器ですが、本屋で、「新潮日本語漢字辞典」を見ましたが、載っていませんでした。この辞書、熟字訓が沢山載っていると喧伝されたのですが、私の見るところ、「辞典」の方が沢山載っていると思います。過去問以外では、新潮の辞典に載っていないのを出してくるという推論は如何でしょう。
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適当な根拠を (SIMO)
2008-06-28 00:37:33
>>しっかりした根拠が共にあるということなのですね。

>そうかなあ。適当なのではないのかなあ。大をダイと読むかタイと読むかは、複数音読みのある漢字の中でもものすごく難しいと思っています。

 御意!

 根拠と言っても、他の辞典に載っていたから、とかいうのも結構ありそうですから。
 行器についてはその内ブログに書こうと思います。もう一度見直ししても、やっぱり出ない候補の方に入れるだろうなぁ。

ところで、鼈甲さん。
>あとで気になって調べたら、"四"でないと駄目なようで。
>犢の旁は「𧶠」という別の字

 これは、どこに書いてあったことでしょうか?
 私は縦横のみの四でも良いと思っていましたが。
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犢の旁。 (鼈甲)
2008-06-28 09:16:04
SIMOさん
>犢の旁は「𧶠」という別の字
>これは、どこに書いてあったことでしょうか?

学研「漢字源」の犢(p1001)の解字欄に書いてありました。(ここでは𧶠の異体字がある)
また𧶠(イク)(p1507)を見ると、参考欄に「賣(売の旧字体)は、別字。」とあります。
あと犢(トク)なら𧶠(イク)のほうが賣(バイ)より近いですし…
讀、贖、瀆などの構成要素になるとも書いてあるので、他の字もそうだと思います。

(必携を見ると「牛+賣」は許容字体にないですが、
SIMOさんの仰る通り許容されるのかも知れません。
あくまでも個人的な調査ですので。)

記事に関係ない話題になってしまいました。
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若い方はどんどん憶わるだろうなあ (白魚一寸)
2008-06-28 20:54:25
鼈甲様 初めまして。拙ブログにようこそ。

>漢検を受けてきたんですが、先ほど標準解答が届きまして。

標準解答は「たいとう/だいとう」でした。
早速情報提供ありがとう。表題を変更致しました。

>犢の旁
>記事に関係ない話題

1級に関係する話題ですから、どうぞお続け下さいませ。

貴ブログは、超1級の内容ですね。益々後充実を。
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トクとバイとイク (SIMO)
2008-06-28 22:20:44
鼈甲さん。お若いんですね。
 私も少し調べました。

 涜と書かせるくせに、売(の旧字)と「瀆ーさんずい」は出が違うのですね。知りませんでした。
 でも、似てるから一緒みたいにしてると。
 篆書で見ると全然別物なのが良くわかります。
 縦横線の四でも良いかどうかは、今質問中です。少々お待ちください。


 今日少し時間があったので近所の図書館に行って、『だい』か『たい』かを調べてみました。
 確かに漢和辞典では拮抗してましたが、国語辞典系では『たい』しか見つかりませんでした。(岩波:広辞苑、三省堂:大辞林、小学館:大辞泉、新潮:国語辞典、冨山房:大言海、学研:国語大辞典、小学館:日本国語大辞典)6社7辞典全てたいとうです。
 最後の小学館には実は蘆花の引用があって、そのルビは『ダイタウ』なのですが、表題字の読みは『タイトウ』と念が入っています。
 ま、単なる偶然かもしれませんが、何か意味があるのかもしれません。
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「大字典」頌 (白魚一寸)
2008-06-29 10:23:24
>確かに漢和辞典では拮抗してましたが、国語辞典系では『たい』しか見つかりませんでした。(岩波:広辞苑、三省堂:大辞林、小学館:大辞泉、新潮:国語辞典、冨山房:大言海、学研:国語大辞典、小学館:日本国語大辞典)6社7辞典全てたいとうです。

国語辞典と漢和辞典で異なるというのは面白いですね。
これも邪推ですが、国語辞典の場合は、「言海」の影響力が大きいような気がします。漢和辞典は、今は、「大漢和」が持て囃されますが、「大漢和」は戦後の出版ですから、戦前は、定番辞書がなく、読みも色々で、弟子学者がそれを引き継いでいるだけかもわかりません。

私は、戦前刊行された辞書では、「大字典」を使っています。百目鬼恭三郎の「読書人読むべし」で奨められていたものです。

「大字典」の大正6年跋で、栄田猛猪は、

「・・偶漢和辞書の変遷を討究するに及び、数多き字書各特色を有すと雖、国語辞書との聯絡に至りては猶未だ十分ならざるを思ひ、殊に和名抄・字鏡集・倭玉篇乃至節用集の如き、徳川時代以前に於ける我国の字書と、康煕字典を基とせる、明治以後の新漢和字書との間に、截然溝渠ありて、字音の変遷、訓義の用法共に精密ならざるは、漢字を国字として取扱ふべき所以にあらざるを憾み、自ら揣らず、妄りに字典編纂の志を起し、爾来造次も漢字の研究を怠らざりき。・・・」(原文旧字体)

と言います。

「大字典」が戦前の定番とは言えないでしょうが、こういう堂々たる文章を読んでいると、「大字典」のたいとう が正しいと言いたくなりますね。(^_^)
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いかにも問題に出そうな堂々たる文章です。 (SIMO)
2008-06-29 21:38:40
>「大字典」の大正6年跋で、栄田猛猪は、

 この文章は、このまま文章題に使えそうですね。
 最近問題文から問題を作るパターンにちょっと嵌りかけてまして、こういう文章を見ると問題を作りたくなります。(^^;;

 国語辞典の結託の理由は、仰せの通りと思います。
 こんなのどっちだって良いと思いますが、過去の問題で『大*』を検索してみたら、たいでもだいでも可というのは今まで出ていないのかもしれないのですね。
 本当に、どのようにして『どちら』が決まるのか知りたくなってきました。(辞書じゃなくて、元々の方ね)
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