石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

世界は「よそ者」であふれている

2008-10-09 07:51:16 | 人物
ドイツの劇作家・ベルトルト・ブレヒトの「異化効果」という演劇理論がずっと以前から気になっていた。

きょう、これから立教大学に登校し、「メディア映像論・エロス」第三回授業に、そのブレヒトを語ろうと思う。

異化効果とは Alienation Effect と英語では書く。要するにエーリアン、「異邦人」「異星人」「よそ者」ということ。

実はエロスこそ、「よそもの」なのだ。日常にとって、常識にとって、社会にとって、権力にとって目障りな「異物」だ。

そこで、ブレヒトの考え方や生き方を深堀りして行くと、思わぬ風景が見えてくるから不思議だ。

彼の生涯は、常に「亡命者」だった。1933年、ナチスによる国会議事堂放火事件の翌日、彼は妻子と共にベルリンを逃れ、プラハ→ウィーン→チューリッヒ→デンマークに。

さらにストックホルム→ヘルシンキ。すべて旅行ではなく「移住」だ。ベルリンを出てから七年が過ぎた。

それから1941年、ソ連を横断してアメリカ西海岸へ。戦後のアメリカはマルクス主義者の彼に容赦なく、「非米活動委員会」に審問される。

結局、彼はアメリカにもいられず、パリ経由チューリッヒへ。そこでオーストリアの国籍を取得、49年にチェコを経て、ベルリンに辿り着き、そこで死ぬ。

彼の演劇理論が「エーリアン効果」というのは暗示的だ。よそ者の運命、異星人のまなざし、宇宙から地球を見る。何かスケール大きな視座(ディレクターズ・チェア)に彼を座らせたのではないか。

この「エーリアン」でエロスを語れる。同時に「人は皆エーリアン」、秋葉原事件など現代の「疎外状況」を読み解く重大なキーワードではないか。そう学生達にぶつけてみようと思う。