空手バカなオヤジの日常

新潟の空手道場「空手道新武会」で稽古に励む、空手バカオヤジの徒然記

闘病記 ~その2~

2018-08-29 10:48:58 | 日記・エッセイ・コラム
 7月18日、いよいよ手術当日です。不安な気持ちはもちろんありましたが、もう覚悟は決まっていたのか、自分で思っていた以上に落ち着いていられました。昼前、子供たち3人皆来てくれました。

手術着に着替えて。もう「まな板の上のコイ」です。

 午後、手術着に着替え、徒歩で手術室に向かいます。全身麻酔で手術を受けるのは始めてでしたが、麻酔が効いてくるとすぐに意識を失い、看護師さんの「終わりましたよ。」という声で気がつきました。時間の感覚はなく、あっという間に終わった感じでしたが、実際は5時間ほどの時間が過ぎていました。手術は無事成功しました。

手術直後。まだ意識が朦朧としています。

 ボーっとした状態で、手術室からリカバリー室に移動します。その際、猛烈な寒さに襲われ、ガタガタ震えだしました。「寒い」という言葉を発したのを覚えています。電気毛布をかけてもらい、しばらくすると寒さは治まりました。その間、次女が私の手を握って励ましてくれていました。

次女がずっと手を握っていてくれました。

 私の様子が落ち着いたのを見計らい、子供たちは帰って行きました。それから、長い長い夜が始まりました。徐々に麻酔が切れて、意識がはっきりしてくると、鼻から入っているチューブの影響で、鼻の奥に鼻水が溜まっているような不快な感覚がずっと続きます。加えて、1時間おきに看護師さんが検温と血圧測定を行います。さらに、血栓予防の加圧ポンプを足の裏につけられ、一定の間隔で足の裏を圧迫されます。もう、とても眠れたものではありません。本当につらい一夜でした。

 長い夜が終わり、翌朝、鼻のチューブが抜かれ、また、加圧ポンプも外されて、やっと少し楽になりました。しばらくして、リカバリー室から病室に移動します。手術直後ということで個室に入りました。あらためて見てみると、心電図、点滴、尿管、痛み止めの硬膜外チューブ、ドレーンと、いろんなものが身体にくっついていました。

 この日、手足は冷たいのに身体は熱くてびっしょり汗をかいたりと不安定な体調で、精神的にも滅入ってまったく気力がわかず、言いようのない不安感に襲われました。お腹を開いて、胃を全部取ってしまうという大手術を受けた直後なのですから、当然といえば当然なのかもしれません。

 この日、酸素吸入が始まったのですが、吸入器を付けた際、看護師さんが不慣れなのか、酸素ではなく、水が出てきて、それを吸い込んでむせてしまいました。むせるとどうしてもお腹に力が入ってしまい、手術の傷口に激痛が走ります。いきなりひどい目にあってしまいました。看護師さんに文句の一つも言いたかったのですが、むせるは痛いはで声も出ません。「看護師さん、しっかり頼むよ!」と、心の中で叫んでいました。

 結局この日、個室で1人で過ごすことが不安で、長女に病室に泊まってもらいました。夜は点滴で眠剤を投与してもらったおかげか、よく眠ることが出来ました。
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闘病記 ~その1~

2018-08-19 22:02:25 | 日記・エッセイ・コラム
 6月20日、胃がんの告知を受けました。

 4月に出血性胃潰瘍で入院し、退院後、経過観察で受けた内視鏡検査で、胃の組織を調べたところ見つかったのです。しかも、胃がんの中では質のよくないスキルス胃がんというヤツでした。

 事前に病院から、「検査結果を聞きに来るときは、家族の方を同伴してください。」という連絡を受けていたので、ある程度覚悟はしていたものの、いざ「胃がん」と告げられた時には、目の前が真っ暗になりました。

 担当医の先生は、「胃潰瘍のおかげで早く見つかった。あなたは運がいい。」とおっしゃり、私の「治りますか。」という問いにも、「大丈夫だと思う。」と答えてくださいました。但し、「胃は全摘することになると思います。」とも告げられてしまいました…

 その日のうちに、造影剤を使ったCT検査、血液検査、心電図検査等を行い、帰宅しましたが、精神的な動揺はかなりのものでした。生まれて初めて「死」というものをはっきりと意識しました。

 長男は、私と一緒に担当医の先生から直接聞きましたが、長女と次女、そして母に伝えないわけにはいきません。とても辛かったですが、正直に伝えました。皆、気丈にふるまってくれました。長女から、「絶対大丈夫だから、一緒に治そう!!」というラインが来た時には、涙が止まりませんでした。

 告知を受けた日の夜も、稽古指導はあったのですが、正直心ここにあらずといった感じで、生徒達には申し訳ない稽古になってしまいました。一般部の道場生や保護者の方からは、「先生、顔色悪いですが、大丈夫ですか?」と心配される始末でした。

 2日後にバリウム検査、そのまた4日後に大腸内視鏡検査と、矢継ぎ早に検査を受けました。

 7月2日、そういった検査の結果下された診断は、「転移は認められず。ステージ1」というものでした。しかしこれは、あくまで検査結果に基づいたもので、実際に手術をしてお腹の中を見てみなければわからないとも言われてしまいました…

 7月6日、外科の先生に紹介され、「7月16日入院、18日手術」と決まりました。やはり、胃を全摘することになってしまいました…

 入院前日の7月15日は、「空手道新武会 2018組手競技錬成大会」が予定されていました。胃がんの告知を受けたことは、新武会の師範代以上の皆さんには伝えていましたが、私のことを心配して、「錬成大会は中止にしたほうが良いのでは」と言ってくださる方もいらっしゃいました。が、私の病気はあくまで「私」であり、小なりとも新武会という団体の行事である錬成大会は「公」です。私的なことで、公的な行事に穴を空ける訳には行きません。結局、錬成大会は実施することになりました。正直、錬成大会の準備に追われることで、精神的な不安から少し逃れることが出来ました。

 告知を受けてから入院するまでの1カ月弱の間、様々な心の葛藤がありました。心に浮かんでくるのは、ネガティブなことばかりで、なかなか気持ちを前向きに持っていくことが出来ませんでした。自分の心の弱さを痛感しました。

 ただ、この1ヵ月弱の間も、ほぼ毎日、道場に出て稽古指導を行っていたのですが、告知を受けた当初こそ稽古に集中出来ませんでしたが、日を追うごとに、稽古の間は病気のことを忘れ、稽古に集中出来るようになっていきました。「空手をやっていて良かった。」あらためて、心からそう思いました。そして、最終的に思ったことは、「なるようになる。」「大丈夫、何とかなる。」ということでした。

 錬成大会を無事に終わらせ、予定どおり16日午前中に入院しました。午前中に担当医の先生から手術の説明があり、夕方には看護師さんから明日以降のスケジュールの説明がありました。明日から絶食ということで、この日の夕食が、胃袋に入れる最後の食事になりました。

 翌17日、手術に備え、剃毛、採血、歯科検診、肺活量検査等を受け、午後シャワーを浴び、その後点滴が始まりました。いよいよ明日手術です…
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