京楽の1回権利モノ「ピンボール」(1993年登場)
打ち手の「ツボ」をピンポイントで突いた、平成初期・新要件権利物の名機。
大当り確率は1/235と、決して悪くない。但し、スタートチャッカーはスルー式で戻しゼロなので、玉減りの速さはアレパチ並み。アツくなって現金で追いかけたりすると、あっという間に財布の中身を吸い取られる事も…。
盤面中央の3ケタドットデジタルは、左⇒右⇒中の順に停止。ここにゾロ目を出す事が、権利獲得の最初にして最大の条件だ。3と7の場合は前後賞もOKで、「343」「323」「767」「707」でも当りとなる。
各デジタルには0~7の数字(8種類)しかなく、リーチ確率はそこそこ高い。リーチ時、中デジタルは「プゥーン」という派手な効果音と共に、最大で8コマ進む。この「当りそうで当らないリーチ」が、妙に後を引いた。3と7のリーチが来た時には、期待感も倍増したものだ。
デジタルが揃うと、天下の電チューが5.6秒or5カウントまで開放する。電チューに入賞した玉は、真下のピンボール式ヤクモノに入り、左右のフリッパーでポンポンと弾かれる。
最終的に、ヤクモノ内のVゾーンに玉が収まれば権利発生となる。一応ワンクッションタイプではあるが、ヤクモノに3個以上入賞すれば、V入賞はほぼ確実。実質的には、デジタルさえ揃えばOKであった。それだけに、たまのパンクには唖然とさせられた。
その後は、右打ちで権利消化。アタッカーは10カウントで最大16ラウンド継続し、約2300個の出玉を獲得できる。
本機最大のヤマ場は、何といっても大当たり終了後にある。権利終了後、最初のデジタル回転で中デジタルに奇数が出ると、次回までの確率変動に突入。確変突入時は、デジタル上部のランプが全点灯する。確変中はデジタル確率が1/23.5にアップ。
確変突入率50%の「丁半博打」で、しかも勝負は一瞬で決まる。この大当り後1回転目に、本機のアツさが集約されていた。確変の連チャンで、ドル箱を5段、10段と重ねる爆発力も備えていた。
さて、ピンボールといえば、朝一の「モーニング」が美味しかった。
といっても、電源投入後に高確率(天国)モードに行くのではなく、店側が客寄せの為にモーニングを仕込んでいたのだ。
仕込みモーニングには、(1)予め確変状態にしておく(2)権利終了直後の状態にしておく、という2つのパターンがあった。
前者の「確変仕込み」は非常に太っ腹なサービスで、主に新台入替時などに良く見られた。勿論、通常のモーニングとして仕込む店もあった。確変台はデジタル上のランプが点灯しており、外からも丸分かりである。当然、台取り合戦は熾烈を極めた。
一方、後者の「権利終了後状態」の仕込みは、通常のモーニングとして、多くのホールで行われていた。お座り1回転目で中デジタルに奇数が出れば、見事確変ゲットである。仕込み方は簡単で、ヤクモノのV穴に玉を2個入れるだけ。ただ、ランプは通常時と変わらない為、外からの判別は難しい。
権利終了状態を仕込んでも、朝一出目「767」は崩れない。その為、全台が朝一出目のホールも多く、モーニング判別を一層困難にしていた。ただ、ランプの点滅周期が異なる台を見抜く事で、モーニング台を推測する小技もあった。
いずれのモーニングも、客からすれば実にオイシイサービスである。当然、朝一の台取り合戦は激しいものがあった。時間を追うごとにモーニング台の数は減ったが、それでも100円玉を手に、カニ歩きで片っ端から1回転ずつ回すのが、朝のピンボールの「恒例行事」になっていた。
技術介入要素としては、大当り中にデジタルを回し、権利終了直後に中出目に奇数を出す「確変突入率2倍アップ打法」が存在した。
これは、デジタル回転時間の周期(約9秒)と回転体の周期(約9.6秒)が近い事を利用し、デジタルの停止タイミングを巧く調整して、権利終了直後に中出目に奇数を出すというもの。
(攻略手順)
(1)権利消化中、15ラウンド目は通常打ち(左打ち)に切り替え、回転体に玉を乗せずに消化。
(2)15ラウンドと16ラウンドの間も通常打ち、回転体が7時の位置でデジタルが回り始めるように、タイミングを計って打ち出しを調整。
(3)(2)のタイミングでデジタルが回ったら、最低メモリーが1つ以上点灯するまで、打ち出しを続ける。
(4)メモリー点灯に成功したら、すかさず右打ちに切り替える。タイミング良く回転体に玉が乗れば、16ラウンド目のアタッカー開放直後に、デジタルが回転を始める。
(5)再び通常打ちに戻し、アタッカーに9個入賞した時点で打ち出しを停止。
(6)すると、旨い具合に、デジタルが停止する直前のタイミングが訪れる。ここで、中デジタルが高速→スローになる瞬間の出目を見極める。
(7)読み取った出目が奇数なら、素早く10個目の玉をアタッカーに入れる。すると、即・権利終了状態となり、直後に中デジタルが奇数で停止して、確変に突入する(但し、リーチがかかっていた場合は、この限りでない)。
(8)逆に、読み取った中出目が偶数だった場合は、デジタルが停止した後に10個目の玉を入れる。そして、権利終了後1回転目のチャンスにリトライすれば良い。読み取った中デジが奇数でも偶数でも確変獲得のチャンスがある為、「2倍アップ打法」と名づけられた。
※デジタルがスローになる(判別可能になる)瞬間の中出目が奇数なら奇数が、偶数なら偶数が停止するという法則を利用したもの。リーチが掛ると、この法則は崩れる。
上記の方法を実際のホールで成功させる事は、それ程簡単ではなかった。通常打ちでも回転体に玉が乗ってしまう事はあるし、そもそもデジタルの回りが悪ければ、保留ランプの点灯も容易ではない。運や釘調整に頼る部分が、あまりにも大きかったのだ。
また、停止直前の中出目をパッと見極め、瞬時に打ち出しを再開するという手順も、高い技量が必要とされる。まぁ、条件はシビアだが、特に失敗時のリスクもなく、トライする価値は十分にあった。
保留連チャン機に対する当局の目が光る中、「合法連チャン機」としてホールで絶大な人気を誇った名機・ピンボール。最後は「社会的不適合機」の不名誉なレッテルを張られたが、これからも90年代パチンカーの記憶に、深く残り続けるだろう。