1991年(平成3年)に登場した、西陣の新要件・一般電役「メタルドーム」
旧要件から新要件に移行したての当時、ポスト一発台として
大量出玉が望める様々な新要件権利物(或いは一般電役)が
出たが、本機もその一環といえる。但し、4000発程度出るのが
普通だった他の権利物と違って、出玉は2000~3000発越えと
少なめかつ幅もあり、出玉スペック的には「ポスト一発台」と
いうよりも、むしろ旧要件デジパチに近かった。それでも、
天下の役物に玉を飛び込ませて回転体のセーフ穴に入れるとか、
権利発生後に電チューが連動して出玉を増やす流れだったりと、
かつての一発台を彷彿とさせる部分も少なからずあった。
大当り獲得後の出玉増加システムがやや独特で、仕組みを
知らないで打つと、無駄玉が増えて出玉減りがちだった本機。
同時期、三共「メドレーI」の大当り連動システムの難解さが
目についたが、そこまでやっかいではないにせよ、とっつき
づらい面は多々あって、残念ながら人気機種に至らなかった。
回転体、デジタル、電チューの三者を組み合わせた個性的な
ゲーム性は、西陣ならではの柔軟な発想といえたのだが…。
現在、ネット上で本機を紹介するマニアックなサイトが複数存在。
実機を紹介して下さる貴重なページもある為、あえて当ブログが
首を突っ込む必要などないかもしれない。ただ、出玉の増加方法
など詳細なスペックについて、ネット情報がやや不足の感もある。
そこで、今更感タップリではあるが、本機の電チューの連動性や
止め打ちの有効性などについて、基本スペックを織り交ぜながら、
少々振り返ってみたい。
(西陣「メタルドーム」についての考察)
★賞球:オール15
★ゲーム性紹介
本機の「肝」は、A(天下左右入賞口)、B(回転盤)→C(デジタル内臓電チュー1)
→D(デジタル内臓電チュー2)⇒E(デジタル内臓電チュー3)の5点である。便宜上、
Cの電チューを「電チューC」、電チューC内臓のデジタルを「デジタルC」と記す。
D、Eについても同じである。
(大当り発生まで)
(1)天下左右の入賞口から、センター役物の上段Aに入賞させる。
Aのセンサーを通過した瞬間、効果音が鳴る特徴アリ。
(2)Aから入った玉は、上段の左右スロープを伝って、下段で
待ち構える水平回転盤Bにアプローチする。
(3)回転盤は時計回りに常時回転。周期は3.6秒。ハネモノ
「マッハシュート」の回転盤を、こじんまりとさせた感じだ。
(4)この回転盤は3穴あり、赤く縁どられた1穴がセーフ穴。
他の2穴はハズレ。セーフ穴入賞率は、クセ次第だが概ね1/3。
(5)セーフ穴に入ると、盤面左上の電チューCに内蔵された
デジタルC(1ケタ)が変動。即ち、セーフ穴は大当り穴では
なく、単なるデジタル始動用チャッカーに過ぎない。
(6)デジタルCは「0~9」の10通りで、3か7が出れば
大当り。デジタル確率は、表示上も内部も「2/10=1/5」。
意図的な連チャン性はなし。
つまり、天下入賞口に飛び込ませて、回転盤の赤いセーフ穴に
入賞させて、さらに盤面左のデジタルが当れば権利発生という、
スリークッション式の電役である。回転盤の振り分けもデジタル
当選率もそこそこ高い分、天下役物への入賞率がやや辛かった。
(デジタル当選後)
※少々複雑なので、画像を適宜参照
(説明用画像を再掲)
(1)デジタルCが当ると、その約2秒後に電チューCが5.9秒開放。
5個以上入賞させる(それ以下は出玉減)。保留ランプが4つあり、
必ず5個以上入れて保留全灯させる。
(2)電チューC入賞と同時に、盤面センター下の電チューDに
内蔵されたデジタルD(1ケタ)が変動。即ち、電チューCは
デジタルDの始動チャッカーになっている。電チューCの保留が
満タン(4個全灯)なら、デジタルDが5回変動する事は明白だ。
(3)デジタルDは、変動開始から65秒で停止。即ち、電チューCの
入賞からデジタルD停止までには、大きなタイムラグが存在。この間、
全ての電チューが閉じており、打ち続けると丸損となる。100発以上
打ち出す事になるので、止め打ちは必須。65秒も数えるのは大変だが、
実は、時間が近づくと効果音が変わって、打ち出しタイミングを告知。
(4)デジタルDが停止して、「-」が表示されなければ、電チューDが
5.9秒開放。5個以上入賞させる(それ以下は出玉減)。コチラも保留が
4つあるので、5個以上入れて全灯させる。なお、「-」はハズレの表示。
これが出ると、電チューは空振りとなって、保留ランプ1個分の損となる。
デジタルDの出目は19通りあって、「-」は1つ。即ち、ハズレ出現率は
1/19。逆に言えば、電チュー当選率は18/19(約94.7%)となる。
(5)電チューDへの入賞と同時に、盤面右上の電チューEに内蔵された
デジタルE(1ケタ)が変動。即ち、電チューDはデジタルEのスタート
チャッカーの役割を果たしている。Dの保留が満タン(4個全灯)なら、
デジタルEが5回変動する事は明白。
(6)デジタルEは、変動開始から6.5秒で停止。これは、デジタルDの
変動時間(65秒)のちょうど「1/10」にあたる。
(7)デジタルEが停止した時、「-」が表示されなければ、電チューEが
5.9秒開放。但し、電チューC、Dとは違って、保留ランプは存在しない。
こちらも「-」はハズレで、出現率は1/19。デジタル当選率は18/19だ。
(8)電チューEが閉じると、電チューDの保留ランプが1つ消え、再び
デジタルEが変動⇒6.5秒後に止まる。「-」が出ない限り、5.9秒開放。
(9)以下、電チューDのメモリーが全て無くなるまで、(7)と(8)の
動きを繰り返す。即ち、電チューEは、毎回6.5秒のタイムラグを挟んで、
5.9秒の開放動作を計5回行う。
(10)一方、電チューD、Eの連動開始に伴い、電チューCの保留が1つ
消えて、デジタルDは再び変動。やはり、変動開始から65秒で止まるが、
最初の65秒と違って、電チューDとEは連動に入っている。しかも、
電チューEが計5回の開放を終えた辺りで、約62秒が経過(5.9秒の
開放と6.5秒の閉鎖を、計5回繰り返すから※)。よって、電チューD、
Eの最後の連動が終った頃にちょうど65秒となり、直後にデジタルDが
止まるから、最初のような止め打ちは不要。但し、連動中の電チューEに
着目すると、電チュー閉鎖から次の開放までに必ず6.5秒のラグがある為、
こまめな止め打ちが出玉増加に有効となった。具体的には、電チューDの
保留が1個以上点灯している間は、電チューEが閉じると同時に打ち出しを
停止。心の中で約5秒数えたら打ち出しを再開、という手順を繰り返す。
※大当り開始直後の不可解な「65秒ウェイト」は、或いは電チューD、Eの
連動時間を優先した設計によるものかもしれない。D、Eの連動が終わる前に
再度デジタルDが停止すると、その分、出玉が減ってしまうからだ。まぁ、
最初のC→Dのタイムラグを短く、電チューE、D連動中のC→Dのラグを
長くすれば問題ない訳だが、一律「65秒」に固定したのが原因であろう。
(あまり早く大当りが終ってしまうと規定に反するので、あえて最初だけ
長引かせた可能性もあるが…)
(11)以後も、デジタルEが6.5秒変動→当選で電チューEが5.9秒開放→
閉鎖→電チューDの保留消化→デジタルEが6.5秒変動→当選で電チューE
開放→閉鎖を繰り返す。また、D、Eの連動開始に伴い、電チューCの保留も
消化→デジタルD変動→65秒後デジタルD停止→当選で電チューD開放(Dの
保留満タン)→となって、再び電チューD、Eの連動へと移る。これを計5回
繰り返すと、電チューCの保留ランプは全消化、その後連動も止まって大当り
終了となる。
(12)一連の挙動を上記の如く文章化すると、かなり分かりづらい(失礼)。
要するに、大当り中は電チューEが5回の開放動作(電チューDへの入賞数と
同じ)を計5回(電チューCへの入賞数と同じ)繰り返すから、電チューEは
最大「5×5=25回」開く(むろん、「-」が1回出るたびに、電チュー開放
1回分のロスとなる)。一方、電チューDの開放回数は、電チューCへの入賞
個数が反映するので、最大5回(やはり「-」が出る毎に、電チューDの開放
1回分、即ち電チューEの開放5回分がロスとなる。Eの空振りよりも被害大)。
さらに、最初にデジタルCが揃った時、電チューCが1回開く。どの電チューも
「5.9秒開放」で共通なので、大当り中の「電チュー総開放回数」を単純計算
すれば、最大「25+5+1=31」回。
(13)但し、電チューが1回開放した時の平均入賞個数は、各電チューの
周辺の釘調整によって大きく異なる。また、同じ台でも、電チューの開放
タイミングや玉の跳ね具合などで、入賞個数にはバラつきが出る。よって、
正確な出玉の算出は難しいが、実戦時の獲得出玉を思い返すと、2200発~
3000発オーバーと、かなり大きな「幅」があった事は確かだ。
(14)次に、本機の「大当り消化時間」についてみると、デジタルCの当選を
大当りの起点とすれば、「65(秒)×6(回)※」=390秒(6分30秒)と
常に一定である(但し、「-」が一度も出ないと仮定)。390秒で打ち出す
玉数は、390×1.6(毎秒の打ち出し玉数)=624個。仮に、止め打ちを一切
行わないとすれば、平均出玉に624を加えた玉数を、電チュー総開放回数の
「31」で割った数字が、電チュー開放1回あたりの平均入賞個数になる。
※大当り中、デジタルDが65秒の変動を5回繰り返し、最後に
電チューD→Eの連動が約65秒あるので、大当り消化時間は
65×6=390(秒)となる。
(15)以下、平均出玉別に、電チュー開放1回の平均入賞個数を逆算。
(a)平均出玉2200発の台
(2200+624)÷31≒91.1(電チュー開放1回あたりの平均出玉)
91.1÷15(賞球)≒6.07個(電チュー開放1回あたりの平均入賞個数)
(b)平均出玉2600発の台
(2600+624)÷31=104(開放1回あたりの平均出玉)
104÷15=6.93個(開放1回あたりの平均入賞個数)
(c)平均出玉3000発の台
(3000+624)÷31≒116.9(開放1回の平均出玉)
116.9÷15=7.79個(開放1回の平均個数)
(16)平均2200発以下の台は、電チュー1回開放あたりの平均入賞個数が、
6.07個を割っている事になる。同様に、平均3000発以上出る台は、7.79個
以上の平均入賞個数となる。但し、5.9秒で打ち出せるのは、最大9~10発。
当然、平均入賞個数にも限りがある。
(17)但し、上記(14)~(16)は、止め打ちの出玉節約を加味していない。
デジタルCが最初に揃ってから、デジタルDが止まるまでの65秒のタイムラグを
止め打ちすれば、65×1.6=104個の上乗せ。仕組みさえ判っていれば、誰でも
実践可能である。一方、電チューE閉鎖中(6.5秒)の止め打ちは少々面倒だが、
1回につき6.5秒→6.5×1.6=9.75個の節約。仮に、大当り中に20回止め打ち
すれば、200個近く出玉が上乗せされた。塵も積もれば…であろう。逆に、毎回
1/19で抽選される「-」、即ちハズレのヒキ(というか引かないヒキ)も重要。
1回の電チュー開放ロスで済む電チューEのハズレならまだしも、電チューEの
5回開放に等しい電チューDが空振れば、一気の出玉減となるのは上述の通り。
…とまぁ、平成初期のマイナー台の出玉システムについて、こうも突っ込んだ
考察をしたところで、一銭の得にもならないのは明らかだ。だが、あえて行う
ところに、当ブログの存在意義があると自負している。レトロファンの中には、
こういう妙ちくりんなデータを好む物好きな方が、全国推定25人程度はいると
思うので…。
(「西陣「メタルドーム」出玉獲得システムなど」の項、了)