シーティングシステム研究会

良いシーティングを普及させる目的で年に5回の研究会を開催、また基礎コースを開いています。

85回要旨

2007-12-06 | Weblog
今回のゲストは整形外科医として長年の臨床経験から柳迫先生のお話をメインに股関節に関連して展開の予定です。事例は東京小児療育病院の角田PTです。

重度痙直型脳性麻痺児へのアプローチ         
(GMFCS:gross motor function classification system レベル5または4)
                                       心身障害児総合医療療育センター 柳迫康夫
 
運動機能障害の自然経過の知見から脳中枢の麻痺の程度はGMFCSで5つのレベルに分類され予後予測が可能であり早期からレベル毎の対応が必要とされる。
[病態]
痙性のため四肢や体幹に種々の変形や拘縮を生じる。変形や拘縮では立位や坐位といった基本姿勢のアラインメントが失われる。ヒトの進化の過程で獲得された抗重力のための基本戦略ともいえるこのアライメントの崩れに成長に伴う体重増加が加わることにより運動機能障害の悪循環に拍車がかかり、体幹や頭部の保持能力の獲得や維持はますます困難となる。
[治療戦略]
目標:感覚(視聴覚、味覚や嗅覚)や栄養摂取や呼吸に関わる頭部の保持能力の改善・獲得
アプローチは対症療法であり末梢器官の機能の維持・強化または外部支持(坐位保持)の付与である。直接の対象は運動器であり、変形予防を基礎とした抗重力姿勢づくりとなる。このために踵接地・坐骨支持による体幹保持能力の向上、特に大殿筋や傍脊柱筋など狭義の抗重力筋のストレッチと筋力の強化をはかる(スクワットやチェアーを利用した運動)。これらの姿勢保持や運動は自力では不可能なので、適切な装具(短下肢装具・股関節装具・座位保持装置や立位保持装置)と介助を必要とする。毎日続けることが大事であり、家族と一緒に楽しみながら行えるような工夫をする。
変形のため解剖学的な破綻をきたすと感覚入力と運動出力のフィードバックが失われ静的・動的運動学習が困難となるため手術療法の適応となる