北海道の四季登山と読了記

週末の休みを利用して登山しています。ときどき本も読みます。

(093-1102) 家族じまい

2023年11月10日 | 四季の山登り(2023.1.1~2023.12.31)

「家族じまい」(桜木紫乃著 集英社文庫 2023.6.25 第1刷 308ページ)
「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」。親の終活、2世帯同居、老々介護。妹からの電話で実家の状況を知った姉。かつて母を殴っていた父がいまは認知症らしい母の面倒をみている。
長男、長女、それぞれの連れ合い、母の姉たちの人生が小説になった。
著者の言葉づかいが上手い。
以下、少し紹介したい。
「父は金にまつわる今までの失敗を、智代はその父を避けての二十数年を、それぞれ脇に抱えながら微笑(ほほえ)んでいる
「金品と条件に釣られて嫁に行く先が、五十五の初婚男でも、正妻という名の愛人生活だと考えると凸凹の多いパズルがぴたりとはまる
「けれど人の心は、無意識に放たれた言葉の順番に揺れるものらしい
「徹のように屈託のない善い人になりたかった自分が、家のどこかにうずくまってこちらを見ているような居心地の悪さだ
「何もかも手に入れることは出来ないのだ、という思いが登美子の外側と内側に薄い刷毛(はけ)を滑らした
「面白おかしく生きてきたと思えるのも、風のように流れていく時間と人を相手にしていたお陰なのだった。自分は留(とど)まっていたら濁ってしまう水を胸に抱えて生きているのだと自覚していれば、ひとりの暮らしもなにひとつ不自由はない」
事情と事情が重なるから、世の中厄介になる
と、ざっと書き記したが、読んでいて「うなる」文章がたくさんある。
「じまい」は「終い」と「仕舞い」があるが本書は「仕舞う」イメージが強い。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« (092-1101) 裁判長の泣けち... | トップ | (2023-57)寒い日 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿