オババがポーラのクリニックに初診となったのは2011/12月のことである。
訪問診療の時、いつもセンターの階段あたりでハイライトを吸ってるのを見かけては、「おー、肺がんになったらみとってやっからよお-!」と声かけしてたら、本当に肺がんできちゃったのが初診である。
こんのくんはナースとしてではなく、ひとりの若者としてオババに興味を持ち始めた。
ナースではなくKMVPの一員としてオババ詣でを始めることになる。以下その記録である。(山中 修)
オババ 2
いつもの場所にいないので、「死んだのかな?」と思いながらいくつかの季節をまたいだある日、突然オババがクリニックに受診しにきた。
診断名 肺がん。
白内障まじりのその瞳はもう既に死を受容しているようにも見えた。
2012/3/14(水)
この日、午前中で仕事が終わりなので午後はKMVPに参加。
ボランティア元締めの川崎さんと一緒に初回見舞い。
玄関をノックして開ける「こんにちは~」と声をかけると家の奥からから「誰だ~~!!」
と大きな声が聞こえる。
おうおう今日も元気だな。
スリッパ代わりのサンダルに履き替えておじゃまする。
「元気??遊びに来たよ」
と声をかけると嬉しそうな顔。今回ゆっくり話そうと思ったので折りたたみ椅子も持参。
ゴキブリ多いな。
一緒に行った川崎さんはすりっぱ無し、椅子も無し。
俺だけがゴキブリ対策完全な感じだ。
椅子に腰を下ろして、差し入れのウーロン茶を渡す。「あ~あ~、ありがとよ」オババは奪い取るようにお茶を手元に置く。
見た感じ、とても元気な感じだ。
オババの部屋は市営住宅の一角にある。あがるのは今日で2回目だ。部屋の大きさは6畳位か。古ぼけたたんすに布団を何枚も積み重ねた寝床に横になっている。サイドテーブルの上にはおやおやタバコ。そして灰皿。飲み終わった薬の空。
カセットコンロの上でヤカンが蒸気を出している、、、、加湿のようだ。
ふたを開けてみるとあれあれ殆ど水が無くなっている。やばいぜこれは。このまま放置してたらヤカンがバーンって爆発したりして(・∀・)ノ
今日の今野は医療人ではなく知り合いの見舞いな感じで訪問。
もちろん仕事用具は一切持たずに手ぶらで。
オババが前に言ったこと。
「あたいはよ!!先生に任せているからいいんだよ!!」
「住み慣れた家でバカみたいな話して死にたい」
「天井ばかり見てたら死にたくなる」
「誰かはなしに来てくれるやつ来てくれよ~」
「自分の体のことは自分がよくわかっている」
「話していると病気が和らぐ感じがするんだ」 などなど。
勝手な解釈かもしれないけど、いろいろ話を聞いていると「自分の死に際は自分で決める」って人なのだろう。
だから、ぶれてない。今の所。ハッキリしている。すごいと思う。
病気のことはある程度承知。誰かと話して病気のことを忘れたい。ってのがオババの希望なのだ。定期的に訪問診療もしているし。
寿にきて思ったこと。病気だから、必ずしも医療の手が必要だとは限らない。
要はその患者のニーズ、満足が満たされていけばいいのだ。
ケースバイケース。基本的に必要な治療はする。あとは個人個人に必要なことを模索していって混ぜる。今野はそれを「そいつの気に入るカクテルを作るように」と表現している(そのまんま)
やるべきこと、必要なこと(癌に伴う除痛など)は当然やるけれど、後はその人が満足できればそれでいいんじゃないかな。話したいなら話す。一人でいたいときなら一人にしてやる。
だから今日はボランティアのお手伝い。
そんなオババ、誰かが来るとうれしいみたい。
たまに笑うとタバコすって皺くちゃの顔が皺だらけになる。お茶目なオババだ。
今までも時々町を歩いているときに道端でタバコ吸ってる姿をたまに見かけて、たまに話すくらいだったから、これと言って話す内容なんてない。とりあえず話を聞くか。って思った。
「どう?調子は?」大分前、開口一番オババはものすごい勢いで訪問看護師について話し出した。
いろんないきさつがあったようで割愛するが結果を言うと訪問看護師に対し、ティッシュボックスを振り回して、「帰れ!!!」と怒鳴り追い出したそうだ。
「また月曜日に来るとか言いやがった。鍵閉めといて入れないでやる」といきまいてた(-_-;)
オババ、ヒーットアップしてむせ込んだ。顔を真っ赤にしながらも話続ける。
このまま、死ぬんじゃねえか?と思った。
落ち着いた後 床、サイドテーブルをうごめくゴキブリを見てオババがこんな話をした。
「もう、こんな体だから掃除も出来ない。だからゴキブリは諦めているんだ。こいつらにもお菓子をあげて「ほれほれゴキブリさん、これがあなたのご飯ですよ。だから私のおまんまには入らないでね」って話しているんだ」
そう言うと、オババは傍らにあったゴキブリの死骸を掴み後ろにポーンっと投げ捨てた。
オババの家には5匹の猫がいる。短いしっぽのトラ猫がおり、我々を警戒していた。そのことをオババに話すと「あ~あいつはうちの猫たちのオールボスでな。あいつがアタイの頭にションベンしやがるんだ!!そうそうこないだあんたのところ(ポーラのクリニック)に行ったときにそうだったんだ」と。
どうりで猫臭かったわけだ。今は週に1~2回デイサービスの風呂を借りて入浴している様だ。外にも出れるし、これが楽しみなんだろうね。
そんなこんなで、あっという間に1時間弱時間が過ぎて帰ることにした。
「じゃあ、また時間があるとき話に来るよ~またね。お邪魔しました」と部屋を後にすると後ろから「よう~!!」っとオババが呼ぶ。
「なんだい?」と声をかけると「アタイのことで先生やポーラに心配かけたくないから、今日の事をきかれても口うるさいババアだったよ、と伝えてくれ」って言ってた。
声がでかくて、気が短く、行動にも出すオババだけど、他者を思いやる心があるオババだ。
きっと威勢がいいのは照れ隠しなんだろうね。
さて、おばばが最期を迎えるまで何回遊びに行けるかな???
つづく
と思う。
訪問診療の時、いつもセンターの階段あたりでハイライトを吸ってるのを見かけては、「おー、肺がんになったらみとってやっからよお-!」と声かけしてたら、本当に肺がんできちゃったのが初診である。
こんのくんはナースとしてではなく、ひとりの若者としてオババに興味を持ち始めた。
ナースではなくKMVPの一員としてオババ詣でを始めることになる。以下その記録である。(山中 修)
オババ 2
いつもの場所にいないので、「死んだのかな?」と思いながらいくつかの季節をまたいだある日、突然オババがクリニックに受診しにきた。
診断名 肺がん。
白内障まじりのその瞳はもう既に死を受容しているようにも見えた。
2012/3/14(水)
この日、午前中で仕事が終わりなので午後はKMVPに参加。
ボランティア元締めの川崎さんと一緒に初回見舞い。
玄関をノックして開ける「こんにちは~」と声をかけると家の奥からから「誰だ~~!!」
と大きな声が聞こえる。
おうおう今日も元気だな。
スリッパ代わりのサンダルに履き替えておじゃまする。
「元気??遊びに来たよ」
と声をかけると嬉しそうな顔。今回ゆっくり話そうと思ったので折りたたみ椅子も持参。
ゴキブリ多いな。
一緒に行った川崎さんはすりっぱ無し、椅子も無し。
俺だけがゴキブリ対策完全な感じだ。
椅子に腰を下ろして、差し入れのウーロン茶を渡す。「あ~あ~、ありがとよ」オババは奪い取るようにお茶を手元に置く。
見た感じ、とても元気な感じだ。
オババの部屋は市営住宅の一角にある。あがるのは今日で2回目だ。部屋の大きさは6畳位か。古ぼけたたんすに布団を何枚も積み重ねた寝床に横になっている。サイドテーブルの上にはおやおやタバコ。そして灰皿。飲み終わった薬の空。
カセットコンロの上でヤカンが蒸気を出している、、、、加湿のようだ。
ふたを開けてみるとあれあれ殆ど水が無くなっている。やばいぜこれは。このまま放置してたらヤカンがバーンって爆発したりして(・∀・)ノ
今日の今野は医療人ではなく知り合いの見舞いな感じで訪問。
もちろん仕事用具は一切持たずに手ぶらで。
オババが前に言ったこと。
「あたいはよ!!先生に任せているからいいんだよ!!」
「住み慣れた家でバカみたいな話して死にたい」
「天井ばかり見てたら死にたくなる」
「誰かはなしに来てくれるやつ来てくれよ~」
「自分の体のことは自分がよくわかっている」
「話していると病気が和らぐ感じがするんだ」 などなど。
勝手な解釈かもしれないけど、いろいろ話を聞いていると「自分の死に際は自分で決める」って人なのだろう。
だから、ぶれてない。今の所。ハッキリしている。すごいと思う。
病気のことはある程度承知。誰かと話して病気のことを忘れたい。ってのがオババの希望なのだ。定期的に訪問診療もしているし。
寿にきて思ったこと。病気だから、必ずしも医療の手が必要だとは限らない。
要はその患者のニーズ、満足が満たされていけばいいのだ。
ケースバイケース。基本的に必要な治療はする。あとは個人個人に必要なことを模索していって混ぜる。今野はそれを「そいつの気に入るカクテルを作るように」と表現している(そのまんま)
やるべきこと、必要なこと(癌に伴う除痛など)は当然やるけれど、後はその人が満足できればそれでいいんじゃないかな。話したいなら話す。一人でいたいときなら一人にしてやる。
だから今日はボランティアのお手伝い。
そんなオババ、誰かが来るとうれしいみたい。
たまに笑うとタバコすって皺くちゃの顔が皺だらけになる。お茶目なオババだ。
今までも時々町を歩いているときに道端でタバコ吸ってる姿をたまに見かけて、たまに話すくらいだったから、これと言って話す内容なんてない。とりあえず話を聞くか。って思った。
「どう?調子は?」大分前、開口一番オババはものすごい勢いで訪問看護師について話し出した。
いろんないきさつがあったようで割愛するが結果を言うと訪問看護師に対し、ティッシュボックスを振り回して、「帰れ!!!」と怒鳴り追い出したそうだ。
「また月曜日に来るとか言いやがった。鍵閉めといて入れないでやる」といきまいてた(-_-;)
オババ、ヒーットアップしてむせ込んだ。顔を真っ赤にしながらも話続ける。
このまま、死ぬんじゃねえか?と思った。
落ち着いた後 床、サイドテーブルをうごめくゴキブリを見てオババがこんな話をした。
「もう、こんな体だから掃除も出来ない。だからゴキブリは諦めているんだ。こいつらにもお菓子をあげて「ほれほれゴキブリさん、これがあなたのご飯ですよ。だから私のおまんまには入らないでね」って話しているんだ」
そう言うと、オババは傍らにあったゴキブリの死骸を掴み後ろにポーンっと投げ捨てた。
オババの家には5匹の猫がいる。短いしっぽのトラ猫がおり、我々を警戒していた。そのことをオババに話すと「あ~あいつはうちの猫たちのオールボスでな。あいつがアタイの頭にションベンしやがるんだ!!そうそうこないだあんたのところ(ポーラのクリニック)に行ったときにそうだったんだ」と。
どうりで猫臭かったわけだ。今は週に1~2回デイサービスの風呂を借りて入浴している様だ。外にも出れるし、これが楽しみなんだろうね。
そんなこんなで、あっという間に1時間弱時間が過ぎて帰ることにした。
「じゃあ、また時間があるとき話に来るよ~またね。お邪魔しました」と部屋を後にすると後ろから「よう~!!」っとオババが呼ぶ。
「なんだい?」と声をかけると「アタイのことで先生やポーラに心配かけたくないから、今日の事をきかれても口うるさいババアだったよ、と伝えてくれ」って言ってた。
声がでかくて、気が短く、行動にも出すオババだけど、他者を思いやる心があるオババだ。
きっと威勢がいいのは照れ隠しなんだろうね。
さて、おばばが最期を迎えるまで何回遊びに行けるかな???
つづく
と思う。