SAKURA ふるきよきうつくしきもの 

包む 結ぶ 遊ぶ いにしえに学ぶ

定家筥

2020-05-09 22:16:00 | 
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ゴールデンウイークが終わり自粛モードが緩んだような町の様子が心配です。

 SAKURA パート2では手作りでなくても「ふるきよきうつくしきもの」を載せる事にしたので、ずっと拘ってきた🌸定家筥🌸を載せましょう。

定家筥は四つの角だけで尖った襞を取るのが特徴で、両角の襞が富士山の稜線のようななだらかな美しいシルエットになります。この姿に憧れて無謀にも何度かこの襞に挑戦していました。
 私のところに来てくれたこの筥の房はとても繊細な糸でそのしなやかな手触りはなんとも愛おしいく思います。

 定家筥は定家文庫より小さく、桐箱ではなくて筥と言うより嚢物のようです。 
『銀花』でも定家文庫となっていますが嚢物の扱いです。
私はこの紐の付いた物を定家文庫と区別して定家袋と呼んでいました。

 この筥が八代の博物館にあることが分かり『彩さい発見 よみがえる江戸の装い』の図録を送って頂いてからもう19年も経ちました。
この博物館は松井文庫の所蔵品を収めていて、松井家は熊本藩の家老を務めた家です。

「彩」の説明にはこの包紙の墨書には『手いか箱』と書かれているとありました。
大きさは大で11.5× 7.5 ×5 ㎝ 小が8.1 ×5.7 ×5 ㎝ の二点が載っています。
画像は10.5 ×9 ×5~7㎝ で高さに幅があるのは箱の高さから襞山までを図りました。つまり襞山が高いのです。

 この襞に魅了されいろいろな図録を見るたびに探しますが見つかりません。百楽庵コレクションの分厚い『嚢物の世界』にも載っていません。
昨夜ネットで画像のチェックをしましたが『銀花』で見た二つが出てきただけでした。 
 以前徳川美術館に問い合わせたところ蔵品には無いとの事で、お姫様の持ち物なのに何故無いのか不思議でした。

 定家筥は定家文庫と同じようにお化粧道具を入れますがずいぶん小さいです。
琴爪入れの小型定家文庫もありますが八代の図録の説明には、小さいサイズの方に銀製の白粉箱、紅筆、白粉刷毛が入っていて、箱の底に鏡が仕込まれているとあります。
小さな箱の中に化粧道具が残されていたのは素晴らしい事でした。

 この襞を真似したくて作ったのが2006年1月の「長緒の結び」で「桃」や「蝶」を結んだ仕覆です。インスタにあげた香道具の仕覆でも触れた襞なのですが第一作とは言え遠く及ばず恥ずかしい限りです。ずっとこの襞に拘っていたのですが実物がなく伝わらなかったと思います。
皆さんにもこの美しい襞を見ていただきたくてアップしましたが肝心の襞が上手く撮れていませんでした🤭

 20年前は定家文庫は検索しても出ない物でした。
今は筥迫工房のRom筥さんがしっかり継承され広まりました。
苦心された教本によって沢山の方々が筥迫や定家文庫をはじめ懐中道具を作れるようになりました。
希少な存在のRom 筥さんですがその第一号の筥迫の試作品を作らせて頂きSAKURA に載せたのも良い思い出です。
小ぶりでしたのでお陰で姪の子供達の七五三であちこち回り役立ました。手作りにはこうした温もりが残ります。
Rom筥さんのように ふるきよきうつくしきもの を残す技術が継がれるのを願っています。