とはずがたり

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AIによる新たな抗菌薬の同定

2020-03-14 20:01:38 | 感染症
米国MITからの報告。
抗菌薬の開発は耐性菌とのいたちごっこになってしまい、どの製薬会社も現在ではあまり積極的に行っていないのが現状です。この研究はAIを用いた極めて洗練されたアプローチによって新たな抗菌薬の同定を行ったというものです。
公開されているデータベースなどを用いて大腸菌に対する増殖抑制効果を有する薬剤の構造や機能をdeep learningで学習させたAIによってDrug Repurposing Hub(様々な開発ステージにある分子を集めたBroad Instituteのデータベース; Corsello et al., Nat Med. 2017 Apr 7;23(4):405-408)をスクリーニングし、新たな抗菌活性を持つc-Jun N-terminal kinase inhibitor SU3327(halicin)を同定しました。Halicinは大腸菌のみならず、結核菌やカルバペネム耐性Enterobacteriaceaeなど広範な病原体に対する成長阻害特性を有することが明らかになり、マウスモデルではClostridioides difficileやpan-resistant Acinetobacter baumanniiに対しても有効性が示されました。またこのツールを用いて1億以上の分子をスクリーニングし、既知の抗生物質から構造的に遠い8つの抗菌化合物を特定することができたそうです。 
Cell. 2020 Feb 20;180(4):688-702.e13. doi: 10.1016/j.cell.2020.01.021.
A Deep Learning Approach to Antibiotic Discovery.

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