ダイキンは空調メンテナンスに新サービス「レトロフィットシステム」を投入している。
変わるマーケティング/ダイキン工業-空調メンテに新サービス(2017/02/10 日刊工業新聞)
ダイキン工業は他社にない独自の製品やサービスの創出で顧客からの支持獲得を狙う。製造業に求められる役割がモノづくりだけではない“コトづくり”へと変遷する中、時代のニーズに沿ったマーケティングと販売戦略を打ち出し、成長基盤を盤石にする構えだ。
【コトづくり】
ダイキンは世界中に販売網を展開するグローバル企業。国内では業務用エアコンでリードする。中でもビル用マルチエアコンでは、国内で稼働中の約180万台のうち半数近くをダイキン製が占める。機器の単体売りのビジネススタイルからの脱却を目指し、“コトづくり”としてアフターサービスの充実や新たな価値創出を推し進めている。
【独自の保守対応】
ビル用マルチエアコンの使用年数は15年から20年程度とされる。長く使われる商品ではメンテナンスサービスの充実が他社との差別化のカギを握る。ダイキンは2015年11月に独自のメンテナンスサービス「レトロフィットシステム」を市場投入した。サービス本部で事業戦略を担当する施鋒(しほう)課長は「多くのお客さまにダイキンファンになってもらえるよう、他社が追随できないサービスを提供する」と意気込む。レトロフィットシステムの特徴は、部品交換と同時に省エネ性能を高められる点だ。独自技術を盛り込んだ制御基板と圧縮機を開発し、メンテナンスが必要な既設機種の古い部品と取り換えられるようにした。空調メンテナンスを施課長は「人間でいう(心臓の)バイパス手術のようなもの。これが非常に難しく、高い技術を要する」と説明する。制御基板が脳で、圧縮機が心臓に該当する。古い部品を最新の高性能部品に置き換えることで、メンテナンス前より年間約15%の省エネを実現できるという。
【顧客志向】
レトロフィットシステムの開発の背景には省エネに対する市場意識の高まりがある。オフィスや店舗の使用電力の約半分をエアコンが占めると言われており、空調機の性能向上が省エネ改善に欠かせない。国内で多く稼働するダイキン製のビル用マルチエアコンの中で、メンテナンス時期に差しかかっている既設機種は85%を占める。メンテナンスで故障のリスクが減れば機器の寿命も延びる。レトロフィットシステムの施工は、機種を丸ごと取り換える更新工事に比べてコストを5分の1に低減できるほか、数日かかるとされる施工時間も数時間程度に短縮できる。これらの点と省エネ性を訴求し、メンテナンス件数とダイキン製品のさらなる普及拡大につなげる考えだ。業界全体で機器の性能が高度化している現状を踏まえ、施課長は「製品がコモディティー(市況商品)化しており、それを打破する付加価値が求められている」と指摘する。製品を売って終わりではなく、他社との差別化を重視して顧客のニーズにあった製品・サービス開発を追求する姿勢を崩さない。将来的には、レトロフィットシステムの国内施工で1万台を目指す。世界展開も視野に入れており、17年内には欧州と中東でこのサービスを始める予定だ。
変わるマーケティング/ダイキン工業-空調メンテに新サービス(2017/02/10 日刊工業新聞)
ダイキン工業は他社にない独自の製品やサービスの創出で顧客からの支持獲得を狙う。製造業に求められる役割がモノづくりだけではない“コトづくり”へと変遷する中、時代のニーズに沿ったマーケティングと販売戦略を打ち出し、成長基盤を盤石にする構えだ。
【コトづくり】
ダイキンは世界中に販売網を展開するグローバル企業。国内では業務用エアコンでリードする。中でもビル用マルチエアコンでは、国内で稼働中の約180万台のうち半数近くをダイキン製が占める。機器の単体売りのビジネススタイルからの脱却を目指し、“コトづくり”としてアフターサービスの充実や新たな価値創出を推し進めている。
【独自の保守対応】
ビル用マルチエアコンの使用年数は15年から20年程度とされる。長く使われる商品ではメンテナンスサービスの充実が他社との差別化のカギを握る。ダイキンは2015年11月に独自のメンテナンスサービス「レトロフィットシステム」を市場投入した。サービス本部で事業戦略を担当する施鋒(しほう)課長は「多くのお客さまにダイキンファンになってもらえるよう、他社が追随できないサービスを提供する」と意気込む。レトロフィットシステムの特徴は、部品交換と同時に省エネ性能を高められる点だ。独自技術を盛り込んだ制御基板と圧縮機を開発し、メンテナンスが必要な既設機種の古い部品と取り換えられるようにした。空調メンテナンスを施課長は「人間でいう(心臓の)バイパス手術のようなもの。これが非常に難しく、高い技術を要する」と説明する。制御基板が脳で、圧縮機が心臓に該当する。古い部品を最新の高性能部品に置き換えることで、メンテナンス前より年間約15%の省エネを実現できるという。
【顧客志向】
レトロフィットシステムの開発の背景には省エネに対する市場意識の高まりがある。オフィスや店舗の使用電力の約半分をエアコンが占めると言われており、空調機の性能向上が省エネ改善に欠かせない。国内で多く稼働するダイキン製のビル用マルチエアコンの中で、メンテナンス時期に差しかかっている既設機種は85%を占める。メンテナンスで故障のリスクが減れば機器の寿命も延びる。レトロフィットシステムの施工は、機種を丸ごと取り換える更新工事に比べてコストを5分の1に低減できるほか、数日かかるとされる施工時間も数時間程度に短縮できる。これらの点と省エネ性を訴求し、メンテナンス件数とダイキン製品のさらなる普及拡大につなげる考えだ。業界全体で機器の性能が高度化している現状を踏まえ、施課長は「製品がコモディティー(市況商品)化しており、それを打破する付加価値が求められている」と指摘する。製品を売って終わりではなく、他社との差別化を重視して顧客のニーズにあった製品・サービス開発を追求する姿勢を崩さない。将来的には、レトロフィットシステムの国内施工で1万台を目指す。世界展開も視野に入れており、17年内には欧州と中東でこのサービスを始める予定だ。