場所と人にまつわる物語

時間と空間のはざまに浮き沈みする場所の記憶をたどる旅

みちのくの小京都・角館

2019-06-17 10:56:21 | 場所の記憶

 枝垂れ桜が爛漫と咲き誇る姿を思い描きながら、角館駅に到着する。やはり花のシーズンである。たくさんの人が駅に溢れていた。駅近くにある観光案内所で散策地図を手に入れ、さっそく町歩きを開始する。
 まずは駅通りと呼ばれる広い通りを西に歩く。しばらく行くと、町を南北に貫く通りに突き当たる。その通りが武家屋敷通りだ。その通りの北側に位置するのが武家町(内町)で、深い木立に覆われた閑静な地域になっている。一方、南側は町人町(外町)で、たてつ家や西宮家などの幾つかの商家が今も残り、家並みが櫛比する地区になっている。
 この地に城下町がつくられたのは、元和6年(1620)と古い。この地を所領した芦名氏が現在見るような城下町をつくり、その後、秋田藩の所領となり佐竹家が入部した。以来400年近く城下町として栄えたのである。
 今は桜の名所として、観光宣伝されている場所であるが、この町が貴重なのは、当時の武家屋敷のただずまいが現在も残されていると言うことにある。
 武家屋敷通りをそぞろ歩くと、道の左右に今も武家屋敷が散見される。中級武士の屋敷である小野田家、藩政時代の建築様式を伝える譜代級の河原田家、同じく中級武士の典型的な間取りを残す岩橋家、さらに北上すると、現在角館歴史村として一般開放されている青柳家(有料)が見えてくる。そして、その先にあるのが角館最古とされている石黒家(有料)などがある。
 それら武家屋敷の残る通りを歩くほどに、満開の枝垂れ桜が、黒塀越しに、あるいは庭に眺められるのだ。樹齢300年を越す400本あまりの枝垂れ桜が華麗に咲き誇るさまは確かにここならではの景観である。この地が伝統的建造物保存地区に指定されているのも故ないことであると合点する。
 外国からの観光客もまじるなか、どの人の顔にもたおやかな面差しが見られ、そこには穏やかな時が流れていた。世界の人々が平和な世界に生きるとは、こうした雰囲気に浸ることができると言うことではないか、とつくづく感じたのである。
 武家屋敷通りを北に進み、その通りの尽きたところで左し、桧木内川添いの土手の桜を見物した。が、あいにくまだ三分咲きといった状態で、あの写真に見るような2キロにわたる花のトンネルは見られなかったのが残念だった。
 

 

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