雀荘迎賓館最後の夜(大慈多聞/新潮社)
麻雀の牌活字を使った本を読むのは阿佐田哲也の『麻雀放浪記』以来。
「迎賓館」は、7卓の小規模な雀荘で、うち2つがフリー卓。そのフリー卓には、毎週金曜日に強豪メンバーが集まる。
法律事務所代表。飲食チェーン取締役。広告会社局長代理。画像記憶能力を持つ高校教師。それぞれに麻雀に対して独自のスタンスを保っており、それが各人にとっての「この冷たい、馬鹿げた世界」のしのぎ方に直結している。
そこに、途中からセット卓を利用する学生の中で最強の男が参加する。物語は、その5人と女性店主の人生模様を描きつつ、最後の夜を迎える。
感想を少し。
麻雀を題材にこれほどの物語を紡ぎ出したことに驚いた。作者は広告業界に長くいた、という以外は非公表で、この本以外の著作も確認できないが、新たな作品が出れば読みたい、と思わせる魅力がある。
闘牌シーンも描かれるが、勝負の行方より、各人の勝負哲学を描くことが主眼のようにみえる。
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