少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

御宿かわせみ(平岩弓枝/文春文庫)

2019-06-30 18:50:18 | 読書ブログ
池波正太郎の作品と並んで、しばらくたつと、読み返したくなるシリーズ。

明治維新後の新シリーズも巻を重ねているが、やはり、シリーズ開始直後の、東吾とるいの関係がまだ安定せず、月のうち数えるほどしか泊まらない頃の作品が、作者の筆がよく走って、存分に遊んでいる気がする。傑作選も出版されているが、やはり圧巻は、七重が東吾への想いを断ち切る場面か。

シリーズが長くなると、いろいろな設定で制約が多くなるので、リセットしたくなる気持ちはわかる。一読者としては、いつか東吾が再登場、あいるは後日談を聞きたい気持ちはある。が、一方で、それはないほうがいい気もする。

いずれにしても、このシリーズの作品を、一作でも多く書いてくれることを祈るばかりだ。

一瞬と永遠と

2019-06-09 21:51:32 | 読書ブログ
一瞬と永遠と(萩尾望都/朝日文庫)

少女漫画はほとんど読んだことはないが、この人のことは知っている。代表作とされる中で明確に読んだ記憶があるのは「11人いる!」くらいだが、強く印象に残っているのは、少年ジャンプに連載された「百億の昼と千億の夜」の漫画化。漫画のほうが明らかに面白い、という例を他に知らない。

各所に掲載されたエッセーなどを集めた本だが、概ね1980年代と90年代に書かれている。内容は、作品から推し量られる作者像を決して裏切らない。独特の感性と才能を持った、不思議な人。そして、エッセーを多作しない人のエッセーは、面白いことが多い。

数学ガール

2019-06-02 18:02:43 | 読書ブログ
数学ガール(結城浩/SBクリエイティブ)

高校生の『僕』と数学好きの少女たちが、放課後に語り合う数学論議。中高生を対象としたジュブナイルというよりは、本格的な数学解説書の方に傾いているが、切り口が斬新で結構読ませる。数学書にしては異例の売れ行きでシリーズを重ねているらしく、以前から本屋で気になっていた。

扱う数学は、最後には高校生レベルを超える。だから、どの巻も最後のほうはついていけないのだが、それは数学関連本ではいつものこと。数式を避けることなくストレートに難問を扱っているにもかかわらず、出来のいい高校生なら何とかついていけそうな工夫をしている。高校時代にこの本があれば、もう少し数学が得意になったかも、と思わせるところがある。取り上げる問題も、雑学レベルでなく、数学の本質をとらえた本格的なものばかり。

余談だが、昔、『ハードナッツ』というドラマがあったのを思いだした。