
午前零時の評議室(衣刀信吾/光文社)
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作とのこと。作者は新人ながら、日弁連副会長も務めるベテラン弁護士さん。
主人公は弁護士事務所でアルバイトする女子大生。裁判員選任の案内状が届き、事前オリエンテーションに参加してみると・・・
呼び出された裁判員たちは、本番前の特殊な状況下で、有罪か無罪かを決める評議を求められる・・・
感想を少し。
検事や弁護士だけでなく、裁判官を主人公とするものもあり、リーガルミステリもずいぶん書かれているなあと思う。そうした中で、独自性を出すためか、非現実的な特殊設定の作品も見かける。(それが効果的な作品もあるが、ちょっと面倒だなとも思う。)本書では、裁判官が事前に裁判員を招集するのはありえないが、騙されてもしょうがないように描かれており、現実の枠を踏み越えてはいない。
調書に基づいて評議を進めていくが、わずかな違和感から真相にたどり着く過程に迫力がある。しかしその真相には、さらに隠された奥行きが・・・
いずれにしても、この1年で読んだリーガルミステリの中で、一番読みごたえがあった。
ネットで見つけた選評では、前年の応募作は短編連作だったとの情報もある。今後の作品に注目したい。
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