捜査線上の夕映え(有栖川有栖/文芸春秋)
推理沼には深入りしたくない、といいながら、この作者の作品は、かなり読んでいる。
この作品は長編ではあるが、おなじみの「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」なので一気に読み進めることができた。
マンションの一室で男が鈍器で殴られて殺される。死体はスーツケースに詰められた状態で発見される。容疑者が何人か浮かび上がるが、決め手がない。もどかしい、地味な事件を題材に、作者は、美しい夕映えのような構図を描いて見せる。
作者があとがきで書いている、ネタバレのおそれがあることを、もう少し薄めて書くことを許していただきたい。この本には、一軒のうどん屋が出てくる。(それがこの本を取り上げた大きな理由でもあるのだが、香川県人から見れば、このうどん屋は特定できる。)
いくつかの感想。コロナ禍に苦しみながらの捜査の描写をはじめ、さまざまな細部は、同時代を描いた作品であることを強く意識させる。火村がいかにも肩身が狭そうに煙草を吸うシーンもその一つ。
また、謎が解明されるのに伴って、犯行の実態や動機、事件の背景など、すべてが鮮明になる。その読後感がよかった。『鍵のかかった男』と同じくらい、いいものを読ませてもらった、と思った。
推理沼には深入りしたくない、といいながら、この作者の作品は、かなり読んでいる。
この作品は長編ではあるが、おなじみの「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」なので一気に読み進めることができた。
マンションの一室で男が鈍器で殴られて殺される。死体はスーツケースに詰められた状態で発見される。容疑者が何人か浮かび上がるが、決め手がない。もどかしい、地味な事件を題材に、作者は、美しい夕映えのような構図を描いて見せる。
作者があとがきで書いている、ネタバレのおそれがあることを、もう少し薄めて書くことを許していただきたい。この本には、一軒のうどん屋が出てくる。(それがこの本を取り上げた大きな理由でもあるのだが、香川県人から見れば、このうどん屋は特定できる。)
いくつかの感想。コロナ禍に苦しみながらの捜査の描写をはじめ、さまざまな細部は、同時代を描いた作品であることを強く意識させる。火村がいかにも肩身が狭そうに煙草を吸うシーンもその一つ。
また、謎が解明されるのに伴って、犯行の実態や動機、事件の背景など、すべてが鮮明になる。その読後感がよかった。『鍵のかかった男』と同じくらい、いいものを読ませてもらった、と思った。