業務&ITコンサルタントのひとり言

コンサルティング活動を通じて感じることを勝手気ままに記載

ユニクロの販売員の正社員化の記事を読んで思う事

2014年04月18日 15時37分03秒 | 日記
先週の日経新聞に、ユニクロの記事が載っていた。販売員1万6千人を正社員に登用するとの記事。柳井氏曰く、「店長を中心に会社を作ってきたが、間違いだった。店長を主役にすると上位下達の組織になり、自律性や自分で間違いを解決する能力が損なわれる。働き方を変えないといけないことに気がついた。…(以下省略)」と...。

また今朝(4月17日)の新聞には、”外食。小売業界の人員確保”の記事が載っていた。”安価な労働力の確保”の考え方は本末転倒だ。元来、社会への責任において適切な賃金をはらうべきなのである。銀行の窓口業務とコンビニ店員との仕事の難しさの差は、賃金差ほどあるだろうか?

私にとって柳井氏はもっとも軽蔑すべき経営者の一人である。1.6万人を正社員に登用する事は評価できるが、上記のご本人のコメントを見る限り、まだまだ未熟な経営者だ。勿論、企業を大きくし、安くてそれなりの品質のモノを提供してきたその経営手腕には脱帽である。絶対に太刀打ちできない。しかし、経営者として守るべき”従業員満足”に関して、彼は大変疎かにしてきた。

小売や外食産業は全般的にそうなのだが、兎に角従業員の待遇が悪すぎる。仮に正社員として採用しても、5年後または10年後に残っている社員は何パーセントいるんだろうか。これらの企業での”キャリアパス”は、一体どうなっているんだろうか。

もし、社員を新卒で雇用した場合、その社員のユニクロでのキャリアは何年と柳井氏は考えているのだろうか?5年だろうかそれとも10年だろうか?もし10年だとしたら、10年後にその社員は転職しなければならない。その場合、その社員はどの方向に向かえば良いのだろうか。別の表現では、どんな企業に就職すべきなのだろうか?それとも定年まだ勤めて欲しいと柳井氏は考えているのだろうか?

定年まで勤めるとしたら、その人は多分就職時点では独身であろう。やがて結婚し子供を持つ。家族との時間も大事である。そんな中、常に柳井氏の様に仕事を心中とする様な働き方を続ける事はできない。しかし柳井氏はそれを店長に求めていた。それでやがて多くの店長は疲弊していたのではないだろうか。

私が考える、経営者として考慮すべき哲学の一つが、経営者は従業員の私生活での幸せも考慮すべきと云う事である。柳井氏はそれが欠落している様に思える。

上記の柳井氏のコメントを見て感じることは、”働き方を変えないといけない”と云う事に気がついたのは良いのだが、”従業員の幸せ”について、経営者として考える必要がある事にまだ気が付いていないと思われる。従業員が私生活でも幸せである事で、仕事にも継続的に頑張ってもらえるのであると、私は信じる。

本題からすこし外ずれるが、もう一つ経営者としての柳井氏を尊敬できないな点は、地域社会への貢献の欠如である。”地域社会への貢献”とは、雇用の創出であり、その地域への税金の納入などを通した地域社会の発展であり、日本のGDP向上への貢献だろう。

ではユニクロは雇用を創造しただろうか?勿論、企業単独では増やしている。しかし、”衣料業界”全体としてはどうなんだろうか?ユニクロの店舗が増えた分、既存の衣料品店が閉鎖しているのではないだろうか。最近は海外に展開し始めているので、その面では雇用をふやしているのだろうか?そして海外からの収入も増えてきているだろう。しかし...。

衣料業界では、単純に云うと衣料品を作る人とそれを売る人が必要である。衣料品を売る人は、衣料品を購入する人に比例するのであり、日本の人口はそれほど変らない現状からは、”売る人”の雇用者数はそれどほ変わっていないと想像できる。ユニクロが増えた部分、他の企業では減っている。では衣料品を作る人はどうだろうか?ユニクロは海外で生産した製品を国内にもってきているので、この面に関しては全く貢献していない。この点ではGAPやH&Mと殆ど変わりがない。クロの躍進で、沢山の国内の衣料メーカが倒産したのではないだろうか。

この”地域社会への貢献”を考慮している企業も沢山ある。例えば、鎌倉シャツであり、大阪で子供服を製造販売しているメーカなどがある。また、福島にも女性向けカジュアル衣料を製造しているメーカもある。これらの企業は尊敬に値する。

”製造を行う企業”が持つべき企業哲学として大事な事に以下がある。多分、多くの人が異論を唱えるだろうが、それはサラリーマン的考えだ。真の経営者の考えは違う。
・安価な労働を求めて海外に製造拠点を持つべきではない。
・海外に販売する場合、その市場(国)に敬意を払う必要がある。これは自己の利益の追求だけをおこなってはダメで、なんらかの地域社会への貢献も考慮すべきである。
・海外に工場を作る場合は、その地域の発展の為に進出すべきである。それはその地域の雇用と市場を大事にする事であり、賃金が上がってもその市場の重要性がある限りでは、製造拠点を変えない。わが国の自動車産業は、USとの自動車の貿易摩擦を経て、これを実践している。幾つか例外はあるが...(日産がマーチをタイから輸入している事。これは”国”と云う概念を持たないゴーン氏だからできる事。また中小型のバイクは殆ど海外生産。)


ユニクロは企業としては健全経営をしており、重要な企業である。なので少しでも早く、柳井氏は、この”社会への貢献”の重要性に気がついて欲しい。

外食産業や小売業での低賃金労働が、日本のデフレを今までまねいてきた。アベノミクスを機会に、改善していって欲しいと願う。そして、夜間も営業している小売や外食産業においては、従業員の生活とのバランスをどうすれば良いのかを、真摯に考えて欲しい。
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