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水上勉さんゆかりの古民家が淡水に移築

2010年08月04日 22時28分59秒 | 台日交流

 7月24日、日本の古民家(上の写真)が台湾に移築された事を記念して、移築活動を進めてきた台湾と日本の市民団体や関係者らによる交流会が行われました。

 この古民家は、日本の作家・水上勉さんのお父さんである水上覚治さんが大正四年(1915年)に福井県に建てたものです(水上覚治さんは大工の棟梁でした)。
 今年で95歳になるこの古民家は、台北市にほど近い、台北県淡水鎮の「淡水和平公園」内に、見事なまでに再現されています。
 水上勉さんの信条であった「一滴の水の精神」にちなんで、「一滴水記念館」と名づけられました。


移築された古民家の壁にかけられた額
右奥に見えるのは、台湾の人が作ってくれた神棚


黒光りする板の間のいろり


上棟式の際に、ぞうりの鼻緒を切ってくくりつけている
「もうここから動きません」という意味を持つ儀式

 住む人のいなくなった、100年近い歴史を持つ古い日本家屋を解体し、建材などを痛めないよう保存し、海を越えて移送し、気候条件などの全く異なる場所に再び元通りに組み上げるというのは、非常に困難を要する作業です。
 およそビジネスには結びつかない上に、大変な労力と費用がかかります。

 この「一滴水記念館」が淡水にやってくる事になったきっかけは、阪神淡路大震災の被災復興活動に取り組んでいた神戸市御蔵の市民団体「まち・コミュニケーション」が、1999年に台湾で発生した台湾中部大地震の被災者支援を通して、台湾の市民らと交流を持つようになった事にさかのぼります。
 復興活動での助け合いを通じて市民交流が生まれ、2004年に台湾の地方政府関係者らが視察に訪れた際、まち・コミが別途行っていた古民家移築活動を目にし、「ぜひ台湾にも」という機運が生まれたのだそうです。
 ちょうど、水上勉さんゆかりの古民家の所有者から「役立てて欲しい」との申し出があり、その後様々な苦労を経てようやく、淡水和平公園に落ち着く事となりました。


7月24日に行われた記念交流会の模様
前列左から、
蔡葉偉・淡水鎮長
周錫瑋・台北県長
蔡焜燦さんご夫婦

 蔡焜燦さんは、司馬遼太郎さんの『台湾紀行』で「老台北(ラオタイペイ)」という案内役として登場する、台湾の日本語世代を代表する一人。今回の移築活動を、台湾側から応援してきました。


水上勉さんにゆかりある家だという事で、水上勉文庫が


水上勉さんの作品が収められている


せっかくだから!?という事で、
台北県出身でその後日本籍を取得した作家・陳舜臣さんのコーナーも


「台日市民交流」という事で、それぞれの伝統文化などが披露された
日本側からは、お母さんたちが茶道を実演
中国大陸出身者二世の周・県長に蔡さんが作法を指導!
若い台湾の人たちは興味深々


まち・コミの田中代表(左)に、台湾の潘さん(右)から贈り物

 潘さんから贈られたのは何と、日本の古新聞!実は、中部・南投県にあった潘さんのおばあさんの家は、99年の大地震で倒壊してしまったのですが、その時支援に当たっていた田中さんが、崩れたおばあさんの家の中から昭和14年付けの新聞を発見。
 台湾で思いがけず日本の古新聞を発見した昭和15年生まれという田中さんは、これも何かの縁と思い、その古新聞を譲ってもらえないかと孫の潘さんに頼んだのですが、潘さん一家は「全てを失った私たちにはこんな古新聞でも愛しい」と、手放しませんでした。

 この日、交流会に駆けつけた潘さんは、「私たちの助け合いと交流のしるしに」と、それからも大切にしまっていたこの古新聞を田中さんに渡し、涙を見せました。
 地震という辛い経験を乗り越えて、 台湾と日本の人々が助け合いを続け、交流を広げ友情をはぐくんできた事を感じさせる、感動的な一幕でした。

 交流会の最後には、少し時期はずれでしたが日本のこいのぼりが揚げられました。


左から、
蔡焜燦さん
田中・代表
蔡葉偉・淡水鎮長
大きな声で「こいのぼり」を合唱
(鎮長はちょっと困っていたかもしれませんが・・)


風がなくてちょっと残念

 蒸し暑かったこの日、こいのぼりを揚げている最中に、遠くで雷が鳴り小雨がぱらついたのですが、蔡・鎮長は「台湾では、何かのセレモニーで雷が鳴るというのは縁起がいい事なんですよ」と不安がるみなを安心させてくれました。
 天が「あなたたちの願いを聞き届けましたよ」というしるしに何かしらの反応を返してくれた、という意味なんだそうです。 


記念館周辺の公園はまだ整備中
9月までには日本式庭園が完成しオープンの予定


淡水和平公園は見晴らしのいい高台

 まちづくりにとても熱心だという蔡・鎮長は、「移築先の候補は台湾中に色々あったが、きっとこの家が自分で淡水を選んでくれたのでしょう」と話しています。
 台湾にやってきたこの純日本式の古民家が、周辺の緑にあまりに自然に溶け込んでいて、 思わず納得してしまいました。
 日本の大工さんたちの手によって見事に再現された一滴水記念館は、昔よく遊びに行った祖母の家に似ていてとても懐かしい感じがしましたが、蔡焜燦さんの奥さんが「私が子供の頃は、台湾にもこんな家がたくさんありましたよ」と懐かしんでいた様子がとても印象に残っています。

 台湾では、日本家屋を目にする事は決して珍しくはありませんが、日本からそのまま移築されたというのはおそらく他にはないのではないでしょうか。
 この一滴水記念館には、「水上勉さんゆかりの日本家屋」というだけではない、台湾と日本の草の根の心の交流が詰まっていると思います。
 機会があったらぜひ、訪れてみて欲しい場所です。(華)

淡水和平公園は、台北新交通システム・MRTの淡水駅からタクシーなどで10~15分

8/4の「ようこそTroom」では、交流会の模様を音声付で紹介しています。
ラオタイペイ・蔡焜燦さんが、古民家移築活動の全体像などを解説してくれています。
↓8/4の日付からどうぞ!

(番組音声の一部は片倉佳史さんからご提供いただきました)



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ブログありがとうございます。 (神戸まち・コミ)
2010-08-05 09:59:03
 記事にしていただきありがとうございます。
 古民家移築まで、10年間の交流で、台湾から日本を知ることが多くあり、共に勉強しました。

質問です。
ラジオで、ラオタイペイ・蔡焜燦さんの音声はどの時間で聞けますか?

暑い日が続きます。
お体ご自愛下さいませ。

また台湾を訪れます。
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Unknown (◆G9FlhTJB1k)
2010-08-06 12:36:03
>>神戸まち・コミさんへ
>ラジオで、ラオタイペイ・蔡焜燦さんの音声はどの時間で聞けますか?
平成22年(2010年)8月4日水曜日分のオンデマンド放送ですが、「ようこそT.room→台湾ミニ百科」となるはずが、なぜか「台湾ミニ百科→台湾ミニ百科」となっており、統一發票の話題が繰り返されます。
広く大きな心で受け止めつつ、しばらく待ちましょう。
私も、の~んびりと待っています。
つ【 神戸まち・コミさんへ質問 】
「特定非営利活動法人」「任意団体」「権利なき社団」のうち、どれに該当されるのでしょうか?
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