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(オールスター戦は7月25日に台北の天母球場で開催される。5月24日には出場選手人気投票のスタートを宣言する記者会見が。各チームから出席した選手は若手が多かった)
台湾のプロ野球は1990年に始まり、今年で21年目。プロ野球元年の始球式はあの王貞治さんが務めた。今も中華民国国籍だけを持ち続ける王さんは台湾でも英雄だ。台湾はその後、日本、韓国と野球のレベルでしのぎを削ってきたが、ここ数年は日韓にはおいていかれ、逆に中国大陸に追い上げられるしまつ。その原因は一言ではとても説明できないが、待遇の差イコール実力の差という見方もある。では、台湾のプロ野球選手の年俸(収入)は一体どのくらいなのだろうか。
昨年のシーズンオフに発覚した、野球賭博に伴う八百長事件で台湾プロ野球の各球団は大きな痛手を負った。チームによっては主力選手を解雇せざるを得なかった。プロ野球発足当時からの老舗チーム、兄弟エレファンツは影響が大きかったチームの一つだ。ファンに広く知られていた選手はほぼ抜けてしまい、今年出場しているのはほとんど新人選手といった印象だ。開幕当初こそ、その他3チームと互角に戦っていたものの、すぐにメッキがはがれてしまい、4日現在、トップの興農ブルズから10ゲーム差の「ダントツ最下位」だ。
エレファンツにおいて今年17試合でマスクをかぶっているのは林家緯・捕手。4日で29歳になった。林・選手は野球選手になるまでに携帯電話の販売やテレビのスタッフなど様々な仕事を経験した。そして4年前にエレファンツの練習生となり、昨シーズン初めて一軍の試合16試合に出場した。25打数7安打で打率.280とまずまずだった。
エレファンツでは八百長事件で昨年までのレギュラー捕手が抜け、チームは興農ブルズから戦力外として解雇されたベテランの葉君璋・捕手を獲得、林・捕手は控え捕手として4日までに消化した47試合のうち17試合に出ているわけだ。
(エレファンツの遊撃手、王勝偉・選手は地味なベテラン。若手中心のチームのいいお手本だ)
(5月15日、馬英九・総統の夫人、周美青・女史がごひいきのエレファンツの応援に天母球場に現れた。昨年の八百長事件発覚以来、今年は初めてだ)
台湾では野球選手の収入を年俸ではなく月給で報じる。林家緯・捕手の月給は台湾元7万元。日本円で20万円程度だ。友人と会って給料の話になると、収入が少ないことで驚かれるという。林さんの昨年の月給は3万3000元でプロ球界最低だった。今年はプロ野球の最低保障給与制度が導入されたことで「112%アップ!」の7万元になったが、やはり球界最低だ。それでも林さんは「大好きな野球ができて、こんなに楽しいことは無い。(八百長にかかわって野球界から追放された選手たちについて)どうしてあんなことをするのか理解できない」。
(本塁打を打ってホームインするベアーズの林智勝・選手。4日までに本塁打9本で二年連続の本塁打王にまっしぐら)
台湾プロ野球の四チームの平均給与は次のとおり。統一セブンイレブンライオンズが14万3500元、ラニュー・ベアーズが13万6500元、興農ブルズが12万300元、兄弟エレファンツが11万2900元。球界平均では12万9300元。日本円でおよそ38万円といったところか。12倍して年俸にすると450万円。
各チームの稼ぎ頭は、元大リーガー(ロサンゼルス・ドジャース)の陳金鋒・選手(ベアーズ)が83万4200元、潘威倫・投手(ライオンズ)が51万元、「安打製造機」の彭政閔・選手(エレファンツ)が50万元、強打者の張泰山・選手(ブルズ)が23万3000元となっている。台湾は昨年、一人当たりGDPが1万6500ドル。日本は2008年で3万8000ドルというから単純比較は当然出来ないが、台湾のプロ野球選手の収入はやはり、かなり少ないという印象だ。それでも1試合平均の観客数が3742人(2009年:1997年以降で最多)ではどの球団も赤字経営、待遇の改善は望めない。
(給料が安かろうが試合になったら全力プレイ。ブルズの遊撃手、陳柏丞・選手は駆け込んでくるエレファンツの張正偉・選手とぶつかりながら一塁に送球、併殺を成功させる)
そんな逆境にもめげず、林家緯・捕手は、「7万元もらえる仕事がどこにあるの?サラリーマンでも課長や部長にならないとありえないよ!」と嬉しそうに話す。今年の大卒者の初任給は平均2万2000元あまりで、林さんの話には説得力がある。エレファンツで中堅選手として活躍した陳瑞昌・コーチも、「入団して15年。中堅選手だったけれど、それでも合計3000万元以上稼いだ」とし、ケガをせずに高いレベルのプレイを長く続けることで、八百長に手を出して追放される選手より絶対収入は多くなると話している。
王貞治さんは昨年、台湾にやってきたとき、「子供たちの憧れの対象なのだから逆境に歯を食いしばって耐えることも必要だ。変なことをして、一番好きな野球を出来なくなってもいいのか」と問いかけた。選手たちは今、王さんの話したとおり、野球が出来る喜びをもう一度確認しているのかもしれない。(U)
●前期終盤、現在の成績は以下のとおり。(6月4日現在)
興農ブルズ 28勝19敗1分 (下はトップからのゲーム差)
ラニュー・ベアーズ 25勝21敗2分 2.5
統一セブンイレブンライオンズ 23勝25敗1分 5.5
兄弟エレファンツ 17勝28敗2分 10.0
※ 各チーム前期60試合
●日本人選手の成績は以下のとおり。(6月4日現在)
高津臣吾投手(興農ブルズ) 17試合 1勝1敗10セーブ 防御率3.065
※ セーブは林岳平・投手(ライオンズ)の13に次ぐ2位
正田樹投手(興農ブルズ) 12試合 5勝3敗 防御率3.301
※ 最多勝争いで2位タイ(トップは6勝) 奪三振45で3位タイ