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漫画家第三弾?『YOUNG GUNS』完結篇登場!

2010年08月05日 17時10分45秒 | 文化

(ついに完結!『YOUNG GUNS』最後の二冊だ)

台湾の漫画ファンで、『YOUNG GUNS』を知らないのはもぐり!正確に言えば20代前半までの若い人だろう。林政徳さんが描いたこの漫画、これまで10巻で100万冊以上売ったという。日本の漫画が中国語に訳されて広く読まれている台湾、地元の漫画家も作品も育ちにくい環境の中、100万冊の販売実績で、かつては当時の超人気漫画、『スラムダンク』に唯一対抗できる「メイド・イン・タイワン」の漫画だった。また、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)やゲームも製作され、登場人物はオートバイの広告にも使われた。これらすべて、台湾生まれの作品として後にも先にも『YOUNG GUNS』しかないと言っていい。

 

(上が11巻、下が12巻。二冊とも主人公の中の主人公、袁建平が表紙。野球を熱愛するも、進学を希望する父母は怪我をした袁建平の肩はもはやボールを投げられないとだます)

『YOUNG GUNS』は1990年、「星期」という月刊漫画雑誌で連載がスタート、高校生たちに学園生活を面白おかしく、オーバーに描いて人気を呼んだ。特に当時実際に流行していた学生言葉を大量に導入し、読者との距離を限りなく近づけた他、校内での恋愛、受験のプレッシャー、けんかや麻薬問題、父子もしくは母子家庭の問題なども盛り込んだ。
しかし、広く支持されてきた1999年、単行本第10巻が出たところで突然ストップ。続きを待ち望むファンたちを尻目に、作者の林政徳さんは中国大陸にわたってしまい、『YOUNG GUNS』は未完の大作となってしまっていた。その林さんが、このほど台北で開かれた漫画博覧会(7月28日から8月2日まで)で、一気に11巻と12巻を出して、この名作を完結させると発表したのだ。

(1990年代に製作されたOVAのビデオCD。アニメーションは日本の製作会社が担当した。作画監督は鈴木信一氏。また、主題歌は台湾のR&Bの若きゴッドファーザーと呼ばれたデビッド・タオが作曲、当時人気絶頂だった男性三人組、L.A.BOYZが歌った。1996年に総統選挙に立候補した政治家、林洋港・元司法院長は、中国語で「ヤンガン」となる自分の名前「洋港」と「YOUNG GUNS」をかけて若者からの支持を訴えたほど)

それからというもの、当時、この作品を読んでいた漫画ファンは期待と不安の入り混じった気持ちで発売を待った。なにしろ、第10巻の最後は、主人公の一人が一生懸命アルバイトして金を稼いで帰ってくると父親の麻薬グセが再発(?)しており、怒りと情けなさから思わず父に向かって包丁を振り上げるという息を呑む場面だったのだ。振り上げた包丁は11年間、ストップモーションとしてファンたちの脳裏に焼きついていたのであり、結局どうなったのかがついに明らかになるのだから期待するのも当然だ。
一方で、不安と感じるのは、あまりにも空白期間が長く、台湾自体が変化していることが原因だ。11年前に描かれた台湾鉄道の淡水駅や竹囲駅(すでに当時はなくなっていたが)は今ではMRT台北新交通システムの駅に変わっている。また、この漫画に盛り込まれている野球についても、11年前と今では台湾のプロ野球を取り巻く環境は大きく変化している。

(第11回漫画博覧会。今年の入場者数は延べ54万人で過去最高に。主催者の予想を8%も上回った。会場は漫画ファンでごったがえす)



(漫画博覧会では『YOUNG GUNS』を搭載した電子ブックも販売された)

そして7月28日、『YOUNG GUNS』の最後の二冊が発売された。台北市にある世界貿易センターで開かれていた漫画博覧会は今年、入場者数で過去最高を記録したが、『YOUNG GUNS』を楽しみにしていた人も少なくなく、初日で合計1000冊が売れたという。(漫画博覧会ではその場で書籍やグッズが販売される)書店で聞いてみても売れ行きはいいとのことで、昔のファンは忘れておらず、また新たなファンも引き付けたようだ。

すでに中国大陸に長年住んでいる林政徳さんは、11年も待たせたことを「すべて自分のせい」とコメントするだけで多くは語っていない。しかし、『YOUNG GUNS』の連載を始めたのが25歳のとき。45歳となった今、ずっと心残りだった作品を完結させた自称「アマチュア漫画家」の林さんはどんな気持ちだろうか。林さんは、時代背景が大きく変わっていることについて、「生活環境は確かに変わったが高校生は変わらない。友情と愛情、夢。青春と熱血は今も同じようなものだ」と話し、完結篇から読者が高校時代の熱血ぶりを思い出してくれることを期待している。
『YOUNG GUNS』の11巻と12巻を読んでみると、まず人物の体がうまく描かれており、デッサン力の高さが伺える。また、時代背景は一気に現在に合わせたようでポケベルは携帯電話に変わった。何より台湾の廟や映画館が背景に出てくること、中国語のテキストには出てこない言い回しや言葉、さらには台湾最大の方言の閩南語(台湾語)と標準中国語(北京語)が混ざり合った台詞、台湾の野球用語に残る日本語などが面白い。
林さんは中国大陸で漫画やアニメ、関連商品の開発や販売にかかわる仕事をしているという。今の台湾にうとくなっていることから新作の予定はないというのが何ともさびしい。台湾の漫画界の発展のため、まだまだその力を発揮してほしい。(U)

※ 台湾の漫画家シリーズ①
  http://blog.goo.ne.jp/rtijapaneseblog/e/5a7bdf475cdb82a4f0cc7e40ba2446a3
※ 台湾の漫画家シリーズ②
  http://blog.goo.ne.jp/rtijapaneseblog/e/ef1cdba5eb67177e98811560fafa5923

(漫画博覧会でお目当ての「抱き枕」を手に入れご満悦な男の子)

(精巧なフィギュアには女の子も群がる。ここぞとデジカメで撮影) 

 



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