りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“レナード” ―全13場― 6

2012年09月03日 18時43分38秒 | 未発表脚本


       ――――― 第 11 場 ―――――

        カーテン開く。と、開店前の“nothing”

        従業員、店の用意をしたり其々思い思いに

        過ごしている。

        ロレッタ、リズ、入口から入って来る。

 

  ロレッタ「おはようございまーす!」

  リズ「おはようございまーす!」

  B・J「おはよう!」

  ロイ「おっ、今日は開店前にご出勤だな!」

  ロレッタ「失礼ね。それじゃあ丸で私たちが何時も遅刻して来

       てる、常習犯みたいじゃない。」

  リズ「本当ね!」

  アーチー「あれ、違いましたっけ?」

  リズ「アーチー!」

  アーチー「すみません。(笑う。)」

 

        そこへ2階からフランシス下りて来て、

        カウンターの中のB・Jに近寄る。

        リズ奥へ入る。

 

  フランシス「今日は何をすればいいでしょうか?」

  B・J「ああ、別に何もしなくていいんだよ。まだ開店前なんだし

     ゆっくりしときなよ。」

  ロイ「そうそう!今来たばかりの奴らだっているんだから。」

  ロレッタ「2人共、フランシスには優しいのねぇ。」

  B・J「(恍けるように。)そうかなぁ。気にし過ぎじゃない?」

  フランシス「でも・・・」

  B・J「君は働いてるったって、給料はいらないって言うんだし

     ・・・」

  フランシス「ただで置いてもらってるんですから、それくらいは

        当たり前ですわ・・・。それにお店にいて、皆さんを

        見てるとなんだか私まで楽しくなって・・・」

  B・J「(微笑んで。)じゃあその辺に座ってろよ。」

 

        リズ、奥から顔を覗かせる。

 

  リズ「誰かこっち手伝ってくんない?」

  ロレッタ「OK!着替えてくるから待ってて!」

  フランシス「私が!私にお手伝いさせて下さい!」

 

        リズ、ロレッタ、B・J其々顔を見合わせる。

        B・J、リズに頷く。

 

  リズ「じゃあお願い!」

  フランシス「はい!(嬉しそうに奥に入る。)」

  ロレッタ「助かっちゃった。」

  B・J「おいおい、他にも一杯仕事はあるぜ。さっさと着替えて

     来いよ!」

  ロレッタ「はーい!(奥へ入る。)」

 

        その時、入口よりレオーネ、スタン、ふてぶてしく

        入って来る。2人に続いて回りを見回すように、

        ウィリアムス、ヘンリー、ウィルソンゆっくり入る。

 

  B・J「(5人に気付いて。)すみません、お客さん!まだ開いて

     ないんですよ。」

 

        5人、B・Jの言葉は耳に入っていないように。

 

  ウィリアムス「ここか?」

  レオーネ「はい。」

  ヘンリー「こんな所に本当にいるのか?」

  レオーネ「間違いありません。」

 

        B・J、5人の異様な雰囲気に何か用心した

        ように、カウンターの外へ出て来る。

        ロイ、アーチーもB・Jの側へ近寄る。

 

  B・J「(レオーネ達に近付いて。)お客さん、開店はまだです。

     出て行ってもらえませんか!?」

  スタン「(レオーネの後ろから前へ出て、B・Jの肩を強く押す。)

      おまえに用はないんだよ!!引っ込んでな!!」

 

        B・J、思わずよろめいて膝を着く。

 

  ロイ「B・J!!(B・Jに駆け寄る。)」

  アーチー「B・Jさん!!(スタンに食って掛かるように。)何しや

       がるんだ!!」

  スタン「(ニヤリとして。)へぇ・・・俺とやろうってぇの?」

  B・J「(立ち上がって、アーチーを止めるように。)アーチー!!」

  ウィリアムス「この店にいる、フランシス・タナーを呼んで来ても

         らえませんか・・・?」

 

              B・J、ウィリアムスを見据える。

        ロイ、アーチー、思わず顔を見合わせる。

        5人、B・J達の様子に確信を持ったように。

 

  B・J「・・・誰ですか・・・それ・・・?」

  レオーネ「恍けるな・・・」

  B・J「・・・そんな女性はいません・・・。」

  スタン「知らばっくれんなよ!!(B・Jの胸元を掴んで怒鳴る。

      )」

  レオーネ「馬鹿、落ち着け!!」

  ウィリアムス「そんな筈はないでしょう?」

 

        奥からロレッタ、出て来る。全員、一斉に

        その方を見る。

 

  ロレッタ「(驚いたように立ち竦む。)・・・何やってるの・・・?」

  B・J「ロレッタ、ここはいいから奥の用意を頼む。」

  ロレッタ「・・・分かったわ・・・(奥へ入ろうとする。)」

  B・J「(慌てて付け加えるように。)それから!!」

  ロレッタ「(振り向く。)・・・何?」

  B・J「この間、レナードさんが拾って来た子猫・・・」

  ロレッタ「・・・子猫・・・?」

  B・J「腹、空かしてると思うんだ・・・。店の中汚すとレナードさん

     煩いから、外で餌やってくれ・・・」

  ロレッタ「(B・Jの言う子猫がフランシスのことだと気付いて。)

       ・・・分かった・・・(奥へ入る。)」

  スタン「余計なこと、ごちゃごちゃ喋ってんじゃねぇよ!!早く女

      を出しな!!」

  B・J「・・・いないと言った筈だ・・・!!」

  ヘンリー「(大声を張り上げる。)フランシス!!この中にいるこ

       とは分かってるんだ!!出て来い!!でないと、この

       店がどうなっても知らないぞ!!(椅子を掴んで、投げ

       るように倒す。)」

  ロイ「止めろ!!(ヘンリーに飛び掛かる。)」

  ヘンリー「(ロイを投げ飛ばし、椅子やテーブルを倒す。)」

  アーチー「ロイさん!!(ロイに駆け寄る。)」

  B・J「出て行け!!(声を張り上げる。)」

 

        そこへフランシス奥より飛び出す。

        ロレッタ、フランシスを引き止めるように。

 

  フランシス「止めて!!」

  ロレッタ「出てったら駄目よ!!」

  B・J「フランシス!!」

  ヘンリー「(ニヤリと笑って。)やっと出て来ましたか。(回りを見

       回して。)あああ・・・もっと早く出て来れば、椅子やテー

       ブルも無事だったのに・・・」

  B・J「何で出て来るんだ!!」

  フランシス「(B・J達の方を向いて、優しく微笑む。)・・・これ以

        上・・・ご迷惑は掛けられません・・・。(ヘンリー達の

        方を向いて。)・・・一緒に帰れば、お店に手は出さ

        ないでくれますね・・・?」

  ヘンリー「そりゃそうですよ。僕はあなたの帰りをずっと待って

       いたのですから・・・」

  B・J「(フランシスの腕を掴んで。)行くんじゃない!!」

  ヘンリー「(思わずB・Jに駆け寄り、フランシスを自分の方へ

       引き寄せる。)気安く彼女に触れるんじゃない!!」

  B・J「フランシス!!」

  ロイ「B・J!!(駆け寄る。)」

 

        その時、入口よりレナード、腕を押さえながら

        入って来る。

 

  レナード「気安く触れてるのはおまえだ!!」

 

        店の中の者、一斉にレナードに注目する。

        従業員、ホッとした表情を浮かべて口々に

        レナードの名を呼ぶ。

 

  フランシス「レナード・・・」

  ヘンリー「・・・誰だ、おまえ・・・」

 

        フランシス、レナードの腕の傷に気付いて、

        思わずヘンリーの腕を振り解いて、レナード

        に駆け寄る。

 

  フランシス「(レナードの腕を見て。)如何したの!?怪我して

        るわ!!」

  レナード「(微笑んで。)大丈夫さ・・・心配するな。(入口の方を

       見て。)入って下さい!!」

 

        入口よりトーマス入る。

        再び一斉に店の中の者、トーマスに注目する。

 

  フランシス「トーマス!!」

  ウィリアムス「・・・トーマス!?」

  トーマス「お嬢様!!(フランシスを認めて駆け寄る。)ご無事

       で!!(涙ぐんだように。)」

  フランシス「あなたも!!」

  トーマス「はい!レナードさんに助けて頂きました!(レナード

       の腕を見て。)この傷は、その時に見張りの男達に

       撃たれたものです。」

  フランシス「(レナードを見詰めて。)・・・ありがとう・・・(涙が

        溢れる。)ありがとう・・・」

  レナード「・・・言ったろ?おまえの力になるって・・・」

  フランシス「レナード!!(思わずレナードに抱き付く。)」

  ヘンリー「止めろ!!」

 

        フランシス、レナードから離れてヘンリーの

        方を向く。

 

  ヘンリー「どうやら・・・あなたはもう、どんな手を使っても僕の

       ものにはならなくなったようですね・・・。」

  レナード「そんなことは最初から分かりきっていた筈だ・・・。

       それにおまえ達の悪事が警察に知れるのも時間の

       問題だ・・・。直ぐに逮捕状を持った警察官がやって

       来るだろう・・・。」

  ウィリアムス「何を言って・・・我々が一体何をしたと・・・?」

  レナード「・・・誘拐罪・・・横領罪・・・あっ、そうそう・・・(腕をチラッ

       と見て。)殺人未遂も付けなけりゃね・・・」

  ウィルソン「・・・あ・・・専務・・・もう終わりですよ・・・何もかも・・・

        !!我々は皆、捕まるんだ・・・」

  ウィリアムス「・・・煩い!!(レナードを見詰めて。)・・・仕方あり

         ませんね・・・。殺人未遂なんてケチな罪は、我々に

         は似合わない・・・」

  ヘンリー「その通りですよ、お父さん・・・」

  ウィルソン「・・・専務・・・?」

 

        ウィリアムス、ヘンリー、背広の中に隠し

        持っていたピストルを出し、レナード達に

        向ける。

 

  ウィルソン「専務・・・専務、それはやばいですよ・・・。殺人未遂

        なら未だしも、殺人となると・・・!!」

  ヘンリー「さっきから煩い奴ですねぇ・・・お父さん・・・。ウィルソン

       は、高飛びする我々の足手まといになりますよ、屹度

       ・・・」

  ウィリアムス「そのようだな・・・(ピストルをウィルソンに向ける。

         )」

  ウィルソン「・・・まさか・・・」

 

        レオーネ、スタン慌ててそっと入口から

        出ようと、その方へ足音を潜めて近付く。

 

  ヘンリー「(レオーネ達に気付いていたように、入口に向かって

       ピストルを一発撃つ。)」

  レオーネ、スタン「わあっ!!」

  ロレッタ、リズ「キャアッ!!(2人、耳を塞いでしゃがみ込む。)

          」

 

        B・J、ロイ、アーチーも驚いた素振りをする。

        レナード、驚いて小さく悲鳴を上げたフランシス

        を抱き寄せる。

 

  ヘンリー「あなた達も逃がす訳には行きませんよ!」

  レオーネ「ヘンリーさん!!俺達は何も言いやしませんよ!!

       本当ですよ!!」

  スタン「神様に誓います!!俺、今までのこと何も覚えてません

      !!見てません!!ね!?レオーネさん!!」

  レオーネ「あ・・・ああ・・・命賭けます!!」

  ヘンリー「・・・駄目ですね・・・」

  ウィリアムス「・・・皆まとめて死んで頂きましょう・・・」

  ヘンリー「(ピストルをレナードに向けて。)先ずはあなたからで

       す・・・」

 

 

 

 

      ――――― “レオーネ”7へつづく ―――――

   

 

 

 

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