りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アレックス” ―全15場― 2

2013年01月09日 19時52分34秒 | 未発表脚本



  マリア「ジョー・・・心配してくれてありがとう・・・。でも来る前にハ
      ッキリ言った筈よ・・・たとえ未来が変わっても、私は構わ
      ない・・・。ママが幸せになるなら・・・パパのせいで、未来
      のママはいつも泣いてばかりよ・・・。パパと結婚したって
      ママは絶対に幸せになれないのよ・・・。」
  ジョー「マリア・・・」
  マリア「だからその話はもうナシ・・・!」
  ジョー「・・・うん・・・」
  マリア「ところで・・・まだパパに会ってないわ。折角来たんだか
      ら、一目くらい、若かりし頃のパパを見ておきたいわ!」
  ジョー「うん、そうだね。この学校で体育教師をしてるんだったね
      、ピーター・・・」
  マリア「そうよ!行きましょう!」

         2人、走り去る・

    ――――― 第 5 場 ―――――

         カーテン開く。と、舞台は校庭。(夕暮れ時。)
         中央後方に置かれたネットの前でキャシー、
         佇んでいる。
         グラウンドでは部活中の生徒たち。
         キャシー、呆っとグラウンドを見ていると、
         ピーター入って来る。

  ピーター「やぁ、キャシー!僕の勇姿でも見に来てくれたのかい
        ?(笑う。)どうしたんだい?暗い顔して・・・」
  キャシー「暗い顔に見える・・・?」
  ピーター「そこら辺の連中100人に聞いたら、100人共がそう
        言うだろうね。(ベンチに腰を下ろす。)どうしたの?カ
        ールのこと?」
  キャシー「(首を振り、ピーターの横に腰を下ろす。)」
  ピーター「アレックス・・・?」
  キャシー「・・・どうして直ぐに喧嘩してしまうのかしら・・・本当は
        素直になりたのに・・・なんだか自分自身が分からなく
        て・・・」
  ピーター「そうか・・・いっそのこと・・・やめてしまえよ・・・。」
  キャシー「・・・え・・・・」
  ピーター「もう、さよならするんだ。」
  キャシー「ピーター・・・」
  ピーター「僕なら君に、そんな悲しそうな顔はさせないよ。絶対
        だ・・・約束する・・・。」

         その時、グラウンドの方から生徒のピーター
         を呼ぶ声が聞こえる。

  ピーター「(立ち上がってグラウンドの方に手を上げる。)おう!!
       今、行く!!(再びキャシーに向き直り。)僕は本気だよ
       ・・・。君を愛している。結婚して欲しい!!」
  キャシー「(思わず立ち上がる。)ピーター先生・・・」
  ピーター「返事はいつでもいいよ。じゃあ!(手を上げて、グラウ
        ンドの方へ走って行く。)」
  
         キャシー、呆然と立ち尽くす。
         そこへジュディ、鞄を提げてゆっくり登場。

  ジュディ「キャシー先生・・・少しいいですか?」
  キャシー「(振り返ってジュディを認める。)あ・・・ええ、ジュディ
        ・・・」

         2人、ベンチへ腰を下ろす。

  キャシー「どうしたの?そんな暗い顔して・・・(一人でクスッと思
        い出し笑いする。)」
  ジュディ「先生?」
  キャシー「ごめんなさい。今、私もピーター先生から同じようなこ
        とを言われたから・・・」
  ジュディ「先生も何か悩み事?」
  キャシー「(首を振る。)私のはたいしたことじゃないの・・・。それ
        よりあなたは何か悩み事があるの?」
  ジュディ「私・・・自分の気持ちが分からないんです・・・一体、誰
       とパーティに行きたいのか・・・」
  キャシー「ロットと・・・カール・・・?」
  ジュディ「(頷く。)最初はロットと付き合ってるんだから、彼と行く
       のが当たり前のように思っていたけれど・・・カールにも
       誘われて・・・でもカールは私のことが好きだから、私を
       誘っているんじゃなくて、ただロットを負かす為にそうし
       たんだってことも分かっているんです・・・。でも悪い気は
       しないわ!彼、格好良いもの・・・」
  キャシー「(溜め息を吐いて。)ねぇジュディ、ロットのことが好き
        ?」
  ジュディ「(頷く。)」
  キャシー「じゃあカールのことは?」
  ジュディ「・・・分からない・・・」
  キャシー「じゃあ話しは簡単よ。一番好きな人とパーティへ行く
        の!でないと後で必ず後悔することになるわ・・・。もし
        あなたに断られたロットが、誰か他の女の子を連れて
        パーティに来たって、あなたは文句は言えないのよ。」
  ジュディ「そんなの嫌・・・」
  キャシー「ねぇ、ジュディ・・・(ジュディの手を取る。)」

         キャシー、ジュディに語り掛けるように
         歌う。

         “自分の心に素直に・・・
         いつも真に向き合えば
         自ずと見える真実の思い・・・
         誰に決めてもらうでもなく
         自分が一番望む通りに・・・
         自分が一番したいように・・・
         一歩を踏み出し
         決めたことなら
         何も迷うことはない・・・”

         2人、立ち上がる。

  ジュディ「ありがとう、先生!!私、ロットと行くことにするわ!!
       」
  キャシー「そうね。いい考えだわ。(微笑む。)」
  ジュディ「ね、先生?先生が暗い顔をしてたのは、アレックス先
       生と喧嘩したから?」
  キャシー「・・・どうして・・・?」
  ジュディ「だって、今朝からの2人の先生の態度を見てたら、誰
       だって分かるわ。先生も自分の気持ちに素直になって
       !(笑って走り去る。)」
  キャシー「ジュディったら・・・。素直に・・・」

         キャシー、静かに歌う。

         “自分の心に素直に・・・
         いつも真に向き合えば・・・
         自ずと見える真実の思い・・・”

         その時、ミリー入って来る。

  ミリー「キャシー?どうしたの、こんなところで。」
  キャシー「(ミリーを認めて。)ミリー・・・」
  ミリー「仲直りしたの?アレックスとは。」
  キャシー「(首を振る。)」
  ミリー「どうして?いつもなら朝、顔を合わせた途端、仲直りして
      るじゃない。珍しいこともあるのね。(笑う。)」
  キャシー「(困ったように。)ミリー・・・」
  ミリー「冗談よ。そんな暗い顔をしないで!(キャシーの後ろを見
      て。)ほら、アレックスよ!」

         その時、アレックス出て、キャシーを認め
         立ち止まる。

  アレックス「キャシー・・・」
  キャシー「(アレックスを認めるが、知らん顔するように。)ミリー
        、私、行くわね・・・(出て行こうとする。)」
  ミリー「キャシー?」
  アレックス「キャシー!!待ってくれ!!」

         キャシー、その声に一度は歩を止めるが
         出て行く。

  アレックス「キャシー!!」
  ミリー「あらら・・・今回はかなり派手に遣り合ってるみたいね?
      靴を踏まれたくらいで、普通あそこまで怒るかしら?」
  アレックス「(溜め息を吐いて。)・・・今朝・・・俺は彼女に一番言
         ってはならないことを言って、一段と彼女を怒らせて
         しまったんだ・・・。軽率だったよ・・・。あれから謝ろう
         としても・・・俺と目すら合わせてくれないんだ・・・」

         アレックス、暗い面持ちで出て行く。
         そこへロバート、入って来る。

  ロバート「(アレックスが出て行った方を見ながら。)今のアレッ
       クス・・・?」
  ミリー「(ロバートを認める。)ロバート・・・ええ。」
  ロバート「あいつ、えらく沈んでなかった?」
  ミリー「なんだか昨日のこと以外に、喧嘩の火種勃発らしいわよ
      。」
  ロバート「本当に?」
  ミリー「尤も、アレックスは謝ろうとしてるみたいなんだけど、どう
      もキャシーが頑なな態度を取ってるみたいよ。アレックス
      ったら、一体何を言ってキャシーをあんなに怒らせたのか
      しら・・・」
  ロバート「あいつも結構、思ったことを何でも口に出す奴だから
       な・・・」
  ミリー「もう何だかこっちまで憂鬱な気分だわ・・・」
  ロバート「俺達が口出しするようなことじゃないんだ。黙って見守
        るしか出来ないんだから、おまえも余計な首を突っ込
        むのは止めておけよ。」
  ミリー「分かってるわよ・・・」
  
         ロバート、ミリー出て行く。
         そこへ、見ていたようにマリアとジョー
         出て来る。

  マリア「なんだか余計に話しがややこしくなってきたみたい・・・
      どうしよう・・・私のせいだわ・・・」
  ジョー「マリア・・・」
  マリア「今朝の喧嘩が原因で、2人の仲が益々拗れたりしたら
      私・・・」
  ジョー「まだ屹度、2人が仲直りするチャンスはいくらかある筈だ
      よ。ゆっくり考えてみよう・・・」
  マリア「そうね・・・」

         2人、出て行く。カーテン閉まる。

    ――――― 第 6 場 ―――――

         カーテン前。
         キャシーの両親(カーター、シルヴィア)
         ゆっくり出る。

  シルヴィア「あなた・・・今度の休みにキャシーが私達に会わせ
         たい人がいるんだって、電話がありましたの・・・」
  カーター「それはどう言うことだね?アレックスならもう知ってい
       るだろう?」
  シルヴィア「さぁ・・・それが何だかアレックス以外の人のようで
         すの・・・。」
  カーター「本当かね・・・?」
  シルヴィア「ええ・・・。でも電話でその話しをした時のキャシー
         の声が・・・」
  カーター「気になるのかね・・・?」
  シルヴィア「ええ・・・。アレックスとはどうなっているんでしょう・・・
         。もうお付き合いを初めて、大分経つと言うのに・・・。
         」
  カーター「うむ・・・我々もキャシーの結婚については、キャシー
        の意思を尊重しようと決めて今まできたが・・・。もし何
        か自分で決断しかねているとしたら、今、我々が傍観
        しているのは、ベストな選択ではないかも知れないな
        ・・・。もし、そのことによって、意にそぐわない相手と結
        婚することにでもなったら、それこそ大変だ・・・。」
  シルヴィア「ええ・・・。」
  カーター「まぁ、キャシーはキャシーなりにちゃんと考えているだ
        ろうが・・・」
  シルヴィア「そうならいいんですけれど・・・あの子は昔から、思
         い込みの激しいところのある子でしたから、今回も何
         だか私・・・ほら、あなた・・・昔こんなこともあったでは
         ないですか・・・キャシーが卒業パーティのダンスパ
         ートナーのことで、とんでもない思い違いをして・・・結
         局、意中の相手とはパーティに行けなくなったこと・・・
         。あの時も、単なる噂話を信じ込んだあの子が、誰の
         助言も聞き入れることをしなかったから・・・。」
  カーター「そのことは私も覚えているよ・・・。」
  シルヴィア「また今回も同じようなことにならなければいいので
         すけれど・・・」
  カーター「深く考えるのはよそう・・・。きっとあの子なら大丈夫だ
        から・・・。」

         2人、ゆっくり出て行く。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         カーテン開く。校長室。
         フランキー、机の前に座っている。
         少し離れてマックス立つ。

  フランキー「教頭先生、あれからキャシー先生のクラスはどうで
         すかな?」
  マックス「はい、まだ相変わらずのようで・・・一度は例のカール
       とロットの2人は、殴り合いの喧嘩をしてアレックス先生
       に注意を受けたようです。」
  フランキー「そうですか・・・駄目ですねぇ・・・。しかしカールの母
         親が、また転校すると言ってきたので、それまでの辛
         抱ですかね。」
  マックス「はぁ・・・クリスマスパーティの前に転校してくれて、ホッ
       と一安心と言ったところです。」
  フランキー「まさにタイフーンのような生徒でしたねぇ・・・。ところ
         で・・・ピーター先生には、ここへ来るように伝えても
         らえましたかね?」
  マックス「はい。・・・ピーター先生がどうかされたのですか?」
  フランキー「いえ何・・・ちょっとした噂を耳にしたものですから、
         本人に直接確認を・・・と思いましてね・・・。」
  マックス「噂・・・?」

         その時、ノックの音。

  フランキー「はい、どうぞ。」
  
         ピーター入る。
         フランキー、立ち上がってピーターに近寄る。

  ピーター「何かお話しでしょうか?」
  フランキー「実は今朝、生徒達が話しているのを聞いたのです
         が・・・」
  ピーター「はい・・・」
  フランキー「あのですねぇ・・・キャシー先生と結婚なさると言うの
         は本当ですか?」
  マックス「(驚いて。)えっ!?」
  ピーター「もう校長のお耳に入りましたか・・・(笑う。)本当です。
        」
  フランキー「しかし、キャシー先生は確かアレックス先生と・・・」
  ピーター「過去の話しです。今は僕が・・・結婚を前提にお付き合
        いさせてもらっています。それが何か・・・?」
  フランキー「いえ、そうですか・・・。本当の話しであればいいので
         す。ありがとうございました。」
  ピーター「では僕はこれで・・・」
  フランキー「あ、もう一つだけ・・・キャシー先生は学校をどうされ
         るおつもりでしょうか・・・?」
  ピーター「辞めてもらいます。」
  フランキー「そうですか・・・」
  マックス「式はいつのご予定ですか?」
  ピーター「はい、冬休みに入って直ぐに・・・」
  マックス「えらく急なお話しですね・・・」
  フランキー「・・・何か急ぐ理由でも・・・?」
  ピーター「別に・・・。校長、もうよろしいですか?生徒達を待たせ
        ているので・・・。」
  フランキー「あ・・・どうぞ。すみませんね、ご足労をおかけました。
         」
  ピーター「では失礼します。」

         ピーター出て行く。

  マックス「まさか、こう言うことになっているとは・・・。驚きました
        ね。」
  フランキー「私も最初、生徒達の冗談かと思っていたのですが
         ・・・本当の話しでしたか・・・」

         カーテン閉まる。  
                










     ――――― “アレックス”3へつづく ―――――












 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪








 
 http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
 
         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta









最新の画像もっと見る

コメントを投稿