りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ジェフリー” ―全11場― 2

2012年04月22日 21時06分29秒 | 未発表脚本


         モーリス、ジョナサン話しながら上手方へ。
         そこへ上手よりアイリーン登場。其々お互い
         に気付いたように。

  アイリーン「こんにちは。」
  モーリス「やあ、アイリーン。買い物かい?」
  アイリーン「(肩を窄めて。)ただブラブラしてただけ。」
  ジョナサン「君が一人でいるなんて珍しいね。」
  アイリーン「え?」
  ジョナサン「ほら、何時も側にいる・・・」
  モーリス「リンなら、今さっきロマンスグレー風の紳士と一緒に
       何処かへ行ったよ。(少し探るような面持ちで、アイリー
       ンを覗き込むように。)」
  アイリーン「(しどろもどろに。)え・・・あの・・・多分・・・あれは・・・
         お兄様・・・そう、彼女のお兄様なんです!!」
  モーリス「・・・兄さん・・・?」
  アイリーン「ええ!!2人兄妹で、とても仲がいいの!!」
  モーリス「へぇ・・・。えらく歳の離れた兄妹なんだね・・・。」
  アイリーン「・・・ええ・・・。そうなんです・・・。」
  ジョナサン「(腕時計にチラッと目を遣り、モーリスを突く。)モー
         リスさん!そろそろ行かなけりゃ!」
  モーリス「ああ。そうだ!(アイリーンに。)これから何処かへ行く
       用事でも?」
  アイリーン「・・・いいえ・・・。(不思議そうに。)」
  モーリス「よかったら、これからジェフリーの家で、ダイアナの誕
       生日パーティをやるんだ。一緒に如何だい?」
  アイリーン「ジェフリーさんの家で・・・?」
  ジョナサン「ジェフリーさんの家は、団員達の溜り場みたいなも
         のなんだ。ね、モーリスさん!」
  アイリーン「でも私・・・プレゼントも何も・・・」
  モーリス「そんなこと気にしなくていいんだよ。仲のいい奴らが
       集まって、ワイワイやるだけだから。さ、行こう!」

         モーリス、アイリーンの背中を軽く押して、
         エスコートするように上手へ去る。
         ジョナサン、2人に続く。
         暗転。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕開く。と、舞台はジェフリーの家。
         下手よりに、一つのソファーとテーブルが
         置かれている。
         ソファーにダイアナ、腰を下ろして雑誌を
         膝の上へ置きパラパラと捲っている。
         側へハドソン、ポップコーンの入ったバケツ
         を片手に抱かえ、ポップコーンを口へ放り
         込みながら。

  ハドソン「皆、遅いなぁ・・・。」
  ダイアナ「でもまさか、皆で私の誕生日パーティを開いてもらえ
        るなんて。」
  ハドソン「俺、お腹空いたなぁ・・・。」
  ダイアナ「私には、あなたがさっきからずっと、何か食べてたよ
        うに思えたけど・・・。(クスクス笑う。)」
  ハドソン「そんなことないっすよ。嫌だなぁ、ダイアナさん。(相変
       わらず口は動いている。)」

         そこへジェフリー、片手にカクテルグラスを
         数個乗せた盆、もう片手に酒瓶を持って、
         下手奥より登場。

  ジェフリー「おい、ハドソン、好い加減にしとけよ。(テーブルへ盆
        と酒瓶を置く。)」
  ダイアナ「(本をテーブルの上へ置き、立ち上がる。)何か手伝い
        ましょうか?」
  ジェフリー「今日はダイアナが主役なんだから、ゆっくり座っとけ
        ばいいんだよ。(グラスに飲み物を注いで、ダイアナに
        差し出す。)」
  ダイアナ「ありがとう。(グラスに口を付ける。)」

         その時、入口の呼び鈴の音が響く。
         3人、一斉に下手方を向く。

  ジェフリー「やっと御出座しだ。」
  ハドソン「俺、出て来ますよ!」

         ハドソン、走って下手へ去る。

  ダイアナ「ジェフリー・・・今日はありがとう・・・。まさかここで私の
        誕生日パーティをしてもらえるなんて・・・。あなたが声
        を掛けてくれた時、私・・・」
  ジェフリー「モーリスの奴が、如何してもダイアナの為にパーティ
        を開こうって言いだしてね。(笑う。)」
  ダイアナ「・・・そう・・・モーリスが・・・」
  ジェフリー「あいつは何時も、君のことになると熱心だよな。余程
        ダイアナのことが・・・」
  ダイアナ「(ジェフリーの言葉を遮るように。)ジェフリー、私は・・・
        !!」
  ジェフリー「・・・え?」

         そこへ下手よりハドソン、モーリス、ジョナサン、
         アイリーン登場。

  モーリス「遅くなって悪かったね。ジョナサンの奴がモタモタして
       てさ。」
  ジョナサン「すんません。(頭を掻く。)」
  ジェフリー「(アイリーンに気付いて。)・・・彼女は・・・?」
  モーリス「飛び入りだ!構わないだろ?来る途中、偶然出会っ
       たんだ。」
  アイリーン「お邪魔します。(頭を下げる。)」
  ダイアナ「・・・嬉しいわ、こんな沢山の人に祝ってもらえるなん
       て!さ、アイリーン!こっちへ来て座って!」

         アイリーン、頷いてダイアナの側へ。
         ジョナサン、袋から箱を取り出し、テーブル
         の上へ。箱を開けるとケーキが入っている。

  モーリス「おめでとう、ダイアナ!(電気のスイッチを押すように。
        部屋が薄暗くなる。)」

         音楽流れ、皆歌い出す。
         ジョナサン、ローソクの火を点ける。

         “おめでとう!ダイアナ!
         今日だけは
         君の為に歌おう
         皆で声揃え    
         おめでとう!ダイアナ!
         願い事を
         心に決めて共に祈ろう      
         今日は
         君の為だけにある!!”

  モーリス「さぁ、ダイアナ!」
  
         ダイアナ、嬉しそうに頷いて、ローソクの
         火を消す。
         皆、口笛を吹いたり拍手したり歓声を上げる。

  ダイアナ「ありがとう!」

         曲が大きく流れる。
         
  モーリス「(ダイアナの前へ立ち、手を差し出す。)今日の女王様
       に、一曲お相手願えますか?」
  ダイアナ「(一瞬、戸惑ったような面持ちで、チラッとジェフリーを
        見るが、微笑んでモーリスに向く。)喜んで・・・。(手を
        差し出す。)」

         モーリス、ダイアナ、前方へ行って、曲の流れ
         に乗り、ワルツを踊る。

  ジョナサン「ちぇっ!上手いことやってら!(咳払いをして、服を
         整え、アイリーンの前へ立ち、手を差し出す。)お嬢
         さん、僕と一曲、お相手願えませんか?」
  アイリーン「私でよければ・・・(微笑んで、手を差し出す。)」

         ジョナサン、アイリーンの手を取って前方へ。
         ワルツを踊る。と、アイリーン、優雅にワンピ
         ースの裾を翻しながら、たじろぐジョナサンを
         リードするように踊る。

  ハドソン「(踊っているカップルの方を見ながら。)もしかして、ア
       イリーンって・・・リンが言ってた通り、ワルツは凄く上手
       いのかも・・・。(笑って。)ジョナサンの奴、アイリーンに
       リードされてら・・・。」

         ソファーに座って、グラスを傾けていた
         ジェフリー、その声に踊っているカップルの
         方へ視線を遣り、アイリーンを見詰める。
         踊っていたモーリス、ダイアナ、踊りを止めて
         半ば呆然とアイリーンを見詰める。

  モーリス「・・・へぇ・・・ワルツを踊っている時のアイリーンって、
       稽古場とは全くの別人なんだ・・・。」
  ダイアナ「・・・そうね・・・」

         2人、再び踊り出す。
         アイリーンの身のこなしに付いていけない
         ジョナサン、突っ掛かったりする。

  ジョナサン「(踊りを止めて、アイリーンを離す。)ごめん、付いて
         いけないや・・・。ワルツ、本当に上手いんだね。」

         その時、ソファーから立ち上がって、2人の
         側へ来たジェフリー、ジョナサンの肩を掴む。

  ジェフリー「彼女相手に、おまえの踊りじゃ無理だ。」
  ジョナサン「(振り返って。)ジェフリーさん・・・」
  ジェフリー「(アイリーンの前へ立ち、正式にダンスを申し込むよ
        うに、胸に手を当て頭を下げる。)一曲お相手願えます
        か?」
  アイリーン「(嬉しそうにジェフリーを見詰め、お辞儀をする。)喜
         んで・・・」
  
         ジェフリー、アイリーンの手を取って踊り出す。
         音楽豪華に。2人の踊りは丸で舞踏会の紳士    
         淑女のように、流れるように綴られていく。
         ジョナサン、ハドソン、憧れの眼差しで2人に
         見入る。踊っていたダイアナ、2人に気付き、
         踊りを止めて呆然と2人を見詰める。

  モーリス「ダイアナ・・・?(ダイアナの視線に気付き、ジェフリー
       とアイリーンを見る。)ジェフリー・・・アイリーン・・・」

         暫くの踊りの後、曲の終わりと共にジェフリー、
         アイリーン、礼を交わし離れる。ジョナサン、
         ハドソン、拍手を贈る。

  ダイアナ「(モーリスに。)疲れたわ・・・。休んでいい?」
  モーリス「大丈夫かい?」
  ダイアナ「ええ・・・。」

         ダイアナ、ソファーへ腰を下ろす。

  ジョナサン「お疲れ。それにしてもアイリーン、素晴らしかったよ
         !ワルツなんか、何処で習ったんだい?昨日今日、
         行き成り踊った訳じゃないだろ?」
  ジェフリー「・・・あんなに稽古場じゃ、手の付けようがない程の、
        落第者のおまえがね・・・。ワルツだけは褒めてやるよ
        ・・・。」
  モーリス「また、そんなつっけんどんに・・・。本当は驚いて、心臓
       なんかバクバク言ってるんじゃないのか?」
  ジェフリー「・・・確かに、驚いているのは事実だがね・・・。」
  モーリス「(意外そうにジェフリーを見て)へぇ・・・。今日はまたや
       けに素直じゃないか・・・。」

         アイリーン、恥ずかしそうに下を向く。
         ダイアナ立ち上がる。
         
  モーリス「ダイアナ・・・?」
  ダイアナ「(微笑んで。)少し外の空気、吸ってくるわ・・・。」
  ジェフリー「如何した?」
  ダイアナ「あ・・・、来週のオーディションのことを考えると、最近
        余り眠れなくて・・・。さっき飲んだシャンパンが利いて
        きたみたい・・・。」
  モーリス「オーディションなんて、そんな堅苦しく考えることない
       んだよ。ダイアナには実力があるんだから大丈夫!!
       もっと自信を持ってごらん!!」
  ダイアナ「ありがとう・・・。直ぐに戻るから心配しないで・・・。」
  モーリス「一緒に行こうか?」
  ダイアナ「大丈夫よ。」

         ダイアナ、下手へ去る。

  アイリーン「大丈夫かしら・・・?私見て来ましょうか?」
  モーリス「・・・いや・・・。大丈夫だろう。風に当たれば、直ぐに酔
       いも醒めるさ・・・。」
  ジェフリー「・・・優しさだけが、男の勲章じゃあないぜ・・・。」 ※
  
         モーリス、ジェフリーを見る。

  ジェフリー「・・・全く、相変わらず甘い奴だな・・・。」
  モーリス「(鼻で笑って。)甘い奴・・・?じゃあ、おまえみたいに
       冷たく突き放すことが、本当の優しさだと思っているの
       か?(笑う。)」
  ジェフリー「そう言う場合も無きにしも非ず・・・ってことさ・・・。」
  モーリス「じゃあ、おまえは彼女に実は“ダンサー”のオーディシ
       ョンは単なる体裁に過ぎない!!主役はもう、某劇団
       のプリマドンナに決まってるんだってことを、馬鹿正直
       に教えろと言うのか!?」
  アイリーン「・・・え・・・?」
  ジョナサン「もう・・・決まってる!?」
  ハドソン「えーっ!!」
  ジェフリー「安易に“大丈夫”なんて言葉で、その場凌ぎをするん
        じゃない・・・って言ってるんだよ・・・。本当のことを教え
        てやって、次のチャンスに賭けた方がいい・・・と、助言
        してやる方が、よっぽど親切だと俺は思うね・・・。」
  モーリス「そんなこと・・・!!“ダンサー”は、彼女の夢だったっ
       て言うのに!!」
  ジョナサン「どう言うことですか!?“ダンサー”の主役が、もう
         決まってるって!!」
  ハドソン「じゃあ、ダイアナさんは如何なるんですか!?」
  ジェフリー「こう言う世界では、よくある話しさ・・・。K・ハーマン・
        ブライスカンパニーをスポンサーに持つ劇団、S・Y・K
        の差し金で、皆買収されてるのさ!!」
  アイリーン「・・・カスト・ハーマン・・・ブライスカンパニー・・・」
  ジェフリー「上演場所が、K・ハーマン所有の劇場じゃ、仕方ない
        さ・・・。」
  モーリス「仕方ない!?仕方ないだと!?よくもそんな・・・!!
       (思わずジェフリーの襟元を掴む。)」
  ジェフリー「・・・おまえがダイアナのことで、むきになるのはよく
        分かる・・・。だが、今までも日常茶飯事で行われてき
        てたことだ・・・。」
  モーリス「(手を離す。)・・・分かってるんだ・・・。だけど・・・!!」
  ジョナサン「(呆然と。)金のある奴が、夢を手に入れることが出
         来るなんて・・・」
  モーリス「ダイアナの様子を見てくるよ・・・。(下手へ行きかけて
       止まる。)ジェフリー・・・ついカッとなって、悪かったな・・・
       。」
  ジェフリー「・・・いや・・・。」

         モーリス、下手へ去る。

  ハドソン「・・・俺達が頑張ってることが、無意味に思えてくるよ
       ・・・。」
  ジェフリー「ハドソン!!・・・無意味なことなんて、何もないんだ
        ・・・!!(静かに、だが口調は激しく。)」

         ジェフリー、遣り切れなさに堪える思いを、
         呟くように歌う。
         ジェフリーとアイリーン残して、紗幕閉まる。
         アイリーン物悲しそうにジェフリーを見詰める。

         “夢見たことが現実に・・・
         夢を夢で終わらせない為に・・・
         誰もが自分の人生を・・・
         無意味なままに済ませぬ為に・・・
         成功と言う名の山頂に・・・
         登り詰めるその時までは
         努力と言う名の階段を・・・
         一段一段踏み締める・・・”

         ジェフリー、空しそうに上手方へ行こうとする。

  アイリーン「・・・あの・・・!!」

         ジェフリー、ゆっくり振り返る。
         アイリーン、躊躇ったように口籠る。

  ジェフリー「・・・なんだ。」
  アイリーン「・・・本当に・・・そうなんですか・・・?さっきの話し・・・
         。本当に・・・そんな風に・・・夢をお金で買うなんて・・・
         。」
  ジェフリー「(両手をポケットに突っ込んで。)言っただろ・・・?甘
        い夢にも、必ず見えない裏側があるんだってことを・・・
        。」
  アイリーン「・・・そんな・・・」
  ジェフリー「・・・だが、俺達はそんなことに屈することは出来ない
         んだ・・・!!いいか!?夢を叶えるとはそう言うこと
         だ!!どんな試練を目の前に突き付けられようと、
         それを乗り越えて突き進んで行く!!夢を叶える為
         には・・・。(アイリーンを見て。)・・・夢を・・・叶える為
         に来たんだろ・・・?それとも、見たくない部分を目の
         当たりにして、今まで“夢”だなんて甘い響きに酔って
         いただけの自分の本心が分かったか・・・?」










          ――――― “ジェフリー”3へつづく ―――――
 










        ※ 何と古めかしい台詞でしょうか・・・^^;



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    (どら余談^^;)

   今日からグーグル版“ワールド”Only作品の投稿を始めまし
   た(^^)v
   まだ趣味的に書いていた頃の作品なので、とっても未熟感一
   杯の作品ではありますが、またよければ、そちらもご覧下さい
   ね(^.^)

   さて、子どもの入院生活も早40日・・・(>_<)
   結構一杯一杯の毎日を過ごしております(-"-)
   ブログの更新も、眠い目を擦りながら・・・の状態の為、皆さん
   には不満足な作品をご覧頂いているかも・・・と、申し訳なく思
   っていますが、それでも毎日来て頂いている皆さんには、ホン
   ト、見えない応援をして頂いているようで、感謝の気持ち一杯
   です<(_ _)>

   春公演も目前に迫って来て、準備などにも追われる日々では
   ありますが、頑張って皆さんの気持ちに応えることが出来るよ
   う、少しでも努力して行く所存ですので、これからもヨロシクお
   願い致します<(_ _)>



                






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