~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No.19 中国もアメリカ・ドル帝国に吸い込まれるか?

2005年11月13日 | グローバル経済
11/11日経新聞7面 “米貿易赤字が過去最大”になった。(逆に)中国の10月貿易黒字は今年最大で、05年通年では1000億円を超える可能性が出てきた。19日に北京入りするブッシュ政権は人民元の変動相場制への加速、米企業の中国市場への参入拡大など一層の市場開放を迫る見通しだ。
・・・・・論旨抜粋・・・・

中国の10月貿易黒字は前年比9倍、外貨準備高は前年比51%増となり、日本の外貨準備高に肉薄するほどの勢いです。 政府独裁支配下での資本主義導入が進む中、政府による包括的な管理経済により、もっぱら「グローバル資本主義のイイとこ取り」をしてきた中国ですが、アメリカがこれをずっと許すわけがありません。

米⇔中の国際収支のアンバランス拡大に伴う米による開放圧力政策という図式はこれまでもあったが、ついに米大統領が本気で怒り出しそうです。


今回中国も敵を統計上はっきり刺激してしまった以上、何らかの譲歩は避けられないでしょう。
管理経済をやってきた結果が、今や自ら進んでグローバル化の波へと突き進んでしまっているわけで、この大きなうねりは中国共産党といえども元へは戻せないはずです。

我々日本から見ると、彼らは今どんどんドルを稼いでいるので、帝国アメリカと正面から渡り合うようになるのでは?と一見感じてしまいますが、「国家」の威光をタテにした保護貿易政策は、アメリカ的にいうと「不当貿易国家」です。

このまま行けば明らかに近い将来、ドルを稼ぐ以上は元締め(胴元)に従え、と強い圧力をかけられるはずです。
言うことを聞かないならばそれなりの制裁が待っていて、結果として(日本のときと同じように)新自由主義に基づいた開放政策を認めざるを得なくなると思います。

短期的な押し引き(駆け引き)はあるとしても、どのぐらいの将来かわかりませんが最終的には中国もアメリカ型市場放任主義システムへ次第に移行せざるを得ないのではないでしょうか。

相対的に経済分野に関しては「国家」の果たせる役割が少なくなり、指導者(国)の威光は落ちていくこととなります。・・・まるで日本が小さな政府で自助努力社会になるように。



理想を掲げてスタートした旧ソ連を中心にした「国家優先」の社会主義体制は、官が栄える一方、国民がその分困窮していき、ついにはグローバル資本主義体制へ大転換しました。
そのショックで一時は破産したロシアだが、今はBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)と呼ばれる一員としてヨーロッパ諸国を凌ぐ勢いでドル資本のマーケット主義を押し進めています。

宗教思想の強いアラブ諸国といった独裁指導体制の国々までもがオイルマネーを持ってドルを稼ぐグローバル化の波へと突き進んでいます。


帝国アメリカの狙いは主要な世界の国全体にドルを中心とした自由な企業論理優先社会を構築させることにあり、そういう意味ではまさに世界全体がアメリカの思うツボに染まりつつあります。

余談になってしまいますが、今の小泉およびブレーンによる日本政府当局は、日本国がこれから破滅せず生き残っていくための選択肢が帝国アメリカに追従するところのグローバル資本主義へ突き進む方法しかもはや残されていないという残酷な現実をわかったうえで、中国やアジア諸国を無視してでも帝国に従う道・・米国チルドレン・・が得策と考えて行動しているように思えます。

それは皮肉にも、ある意味国を守るための“愛国的な”政策と言えるかもしれません・・だとすればまさにパラドクスです。

国家や貨幣の対立軸だけで物事を考えていくならば、ドル帝国アメリカにかなうパワーはユーロ世界がわずかに望みがあるとはいえ、それを除けばテロ組織以外どこにも見当たりません。

EU諸国は束になって、ドルに対抗するための紙=ユーロを作った。
EUは成熟した大人の国々だからなんとかお互いの利害を我慢してあえてアメリカに向かっていったわけです。

しかし同じユーロ圏内で、国によって貧富の差が激しいため、富める国は貧しい国をいつも助けなければならない。イギリスが完全に米国チルドレンになってしまっていることも大きなマイナスです。これら大障害の要因が重なってヨーロッパ統一がなかなかできないでいます。

富を奪い合う人間集団の欲求カルマを、国家同士が超越して統一することができるでしょうか?
個人的にはよほどのカリスマが登場して反アメリカニズムのムーブメントを起こさない限り難易度は高いと思いますが、そうでなくとも最も長い民主主義の歴史をもった成熟の民であるヨーロッパ人類だから可能性はゼロではないと思います。

だが仮にユーロ圏が統一国家になったとしても、今のアメリカ・ドル帝国戦略に勝てるかというと、ひいき目に見ても厳しいと言わざるを得ません。
なぜなら多様な価値観の多民族の間で血を争ってきた利害調整型のユーロに対して、アメリカは建国から現在まで同じエコノミックアニマル価値観を持つ人類すべてを世界中から受け入れその全部を国家の戦略的英知として結集させているからです。
さらに軍事力は地球一であり、資源にも恵まれている。
そんな国は世界でただひとつしかありません。

アメリカはイデオロギーのギャップに遠因する戦争では勝ったり負けたりしましたが経済戦争では唯一の勝ち組になりつつある。
もしそうなれば世界統一は人類史上初めての経験、それも“ドルマネー”という紙切れによっての無血統一です(一部軍事力も行使はしたが)。

それでは、
地球の大部分が帝国主導のグローバル・ドル貿易圏として完成するとどうなるか?
SF映画のような笑うに笑えない仮想ストーリーを、次回で。